日曜朝4時、有明。
編集部と「夏らしいイベントを取材しましょう」と相談したその翌週、私はなぜか夜明けの東京ビッグサイトにいた。某同人誌即売会の行列を取材するわけでは……もちろんない。この日ここで行われるイベントとは、ずばりラジオ体操。それもただのラジオ体操ではない。数千人が全国から集う、10年に一度の巨大ラジオ体操大会である。本番の模様はNHK総合、NHK 2(BS2)、NHKラジオ第1放送で生放送。しかも国際放送を通じて海外にも放送されるというから破格の規模だ。そんなわけで今回は、去る7月27日に行われた「ラジオ体操80周年記念 第47回1000万人ラジオ体操・みんなの体操祭」の模様をお伝えしてみたい。
前日の終電でお台場入りした私は、4時半すぎに東京ビッグサイトに入場。土曜深夜にアニメを見たり、日曜朝に特撮番組を見たりする人間にとっては「日曜4時半」というより「土曜28時半」と言ったほうがしっくりくるが、準備が完了した会場内にはすでに照明が煌々と焚かれており、もはや明るいどころの騒ぎではない。早朝だろうが屋内だろうが容赦なしのカンカン照りである。はっきり言って真昼間の東京ビッグサイトのイベントでもこれほど明るい場内は見たことがない。ドラキュラがいたらおそらく即死するだろう。「おはようございます!」の声も高らかに続々と入場してくる全国のラジオ体操愛好者のみなさんのハイテンションぶりと、土曜の夜から徹夜で準備しているスタッフのヤケクソな感じがミックスされ、爽やかなのかカオスなのかわからなくなってくる。日本国内にいるはずなのに時差ボケになりそうだ。本当にいま朝5時なのだろうか?
独特の雰囲気にあてられてしまった私は、まだ涼しい朝の駐車場へと退避した。しかしそこで見たものは、全国各地から会場に駆けつける観光バスのラッシュだった! さすがに関東圏からのバスが多いが、なかには関西や東北のナンバーも何台か見受けられる。たかがラジオ体操、されどラジオ体操。やはり「10年に一度の記念大会」「NHKで生放送」という言葉には抗いがたい魅力があるようだ。コンサートの熱気にも通じるものがあるが、大きく違うのはラジオ体操では参加者全員がパフォーマーということだ。体操服に身を包んだご年配の方々も「ワシが体操(や)らねば誰が体操(や)る!」という年季入りの気概を漂わせている。なんとなくマンモス学校の運動会に近いのかもしれない。
本番開始までそろそろ残り30分。あっちを見ればどーもくんが入場、こっちを見ればギリギリ間に合った参加者が駆け込んできたりと、お祭り感が高まってきた。ステージ上で始まった開会式ではお歴々が挨拶に立ったり、アナウンサーが進行を説明したりとこちらも忙しい。本番前にリハーサルをするというので、おもむろに「では広がってください」と言われたが、周囲はいつの間にかかなり混雑してきており、どう動いても「小さく前ならえ」ぐらいの間隔しか空けられない。仕方がないので隣の人にぶつからないよう、おそるおそるリハーサルを試みる。
数分間の準備運動でリハーサルは終了。てっきりラジオ体操の第1と第2を通しでやるのかと思ったら、時間がないためか、参加者を飽きさせないためか、意外なほどお手軽に終わってしまった。もっとも人口密度のせいで周囲はかなり暑いので、こちらとしても軽めのリハーサルはありがたい。さて、6時半まであと数分。白熱の本番の模様は次回に続く!