このところ痛車、抱き枕、RTA……とオタクのなかでもとくに濃い題材を扱ってきた本連載。今回も負けず劣らず違うベクトルで濃い。ハードルの高さで言えば過去最高かもしれない。というわけで今回の題材は昆虫食。東京・阿佐ヶ谷のカフェバー「よるのひるね」で定期的に開催されている昆虫食イベント「昆虫食のゆうべ」にお邪魔させていただいた。
おそるおそる参加してみたこのイベント。しかし食材の見た目のグロテスクさに反し、会場の雰囲気は非常に和やか。「珍しい食材が手に入ったから、みんなで楽しく食べましょう」という創作料理の会そのものだ。参加者は20代が中心で、しかも女性が半数近い。
全員が昆虫食研究家の内山さんによる「きょうの食材」の解説を食い入るように見つめている。なにしろ誰もが昆虫料理を作る気満々、食べる気満々なのだ。少なくともテレビ番組でよく見る、お笑い芸人のゲテモノ体験とはまったく趣が異なると言っていいだろう(ちなみにこの間も某コンビがロケに来たらしい)。
※下記に昆虫の画像を掲載しています。苦手な方はご注意ください。
こちらが会場の「よるのひるね」。「昆虫食のゆうべ」以外にも様々なイベントを開催。阿佐ヶ谷駅北口からは徒歩1分 |
昆虫料理研究家の内山さん。この日は雨の日とあって、集まったのは約10人。狭い店内にこの倍ほど集まることもあるのだとか |
主宰の内山さんによる「これはおいしいですよ!」という楽しそうな解説を聞いていると、最初は警戒ムードだったこちらもだんだん「あれ? 虫って食べるのが普通だっけ? 普通だよね?」と思えるようになってくるから不思議だ。私は隣の席から回ってきたカイコのさなぎとスズメバチをポリポリかじりながら、日本を代表する映画監督の名言を思い出した。赤信号、みんなで渡れば怖くない。
さて、この日のメニューは虫入りタコス、カイコの腐乳漬け、ジャイアントミールワームとコオロギの素揚げという3品。前半で調理される虫入りタコスには、カイコの粉末、サクサンの粉末、タガメチリペースト、タガメ、アリの子、ジャイアントミールワーム、コオロギと7種類の昆虫食材が入る予定となっている。それでは調理の様子をご覧いただこう。
それでは調理開始。まずはトルティーヤを作り、虫パウダーをまぜます。カイコ粉、サクサン粉、タガメ(メンダー)チリペーストの3種類 |
平たく伸ばしてフライパンで焼き上げる。見た目は普通のトルティーヤです |
サルサソース用のアリの子。これだけ食べるとイクラのような、タピオカのようなプチプチした食感 |
サルサソース用のタガメを茹でます。気持ち悪いというよりシュールな絵面 |
タイ食材のお店で買えるタガメ。見た目はグロいが、匂いは洋梨。本当にラ・フランスのようなフルーティーな香りが漂う。内山さんご満悦 |
というわけでご馳走のタガメも解体。ほとんどカニミソの要領だが、香りはやはり洋梨。いや、本当なんですって! |
実際に食べた感想としては、見た目はちょっと特殊だが、味はそれほど特殊でもない。甲殻類が苦手な人でなければ美味しく食べることができる。虫入りタコスの反応は会場でも上々で、とくにジャイアントミールワームの素揚げが人気。何人かはビール片手にカリカリの食感をおつまみとして味わっていた。そんなわけで残りはあと2品。来週はメインディッシュとなる「G」が登場します。乞うご期待。
<ご注意>
昆虫料理イベントについては下記のサイトにお問い合わせください。また、個人で試す場合は昆虫料理研究のサイトを参考の上、生食せずに必ず加熱して食べるようにしてください。