ゲームクリアタイムを実時間で競う「RTA(リアルタイムアタック)」。RTAサークルの雄、東京大学ゲーム研究会が大学祭で行ったRTA大会の模様を、後編の今回も引き続いてお伝えしていきたい。
五月祭2日目。この日も空模様は優れなかったが、東京大学本郷キャンパスはバンド演奏や屋台などなかなかの盛り上がり |
2日目の午前中に行われた『ポケットモンスター バトルレボリューション』の対戦実演。メンバーの分析によれば、おすすめポケモンはフーディン |
大学祭2日目のメイン企画は、2007年発売のWii専用ソフト『スーパーマリオギャラクシー』を使ったRTA。メイン企画ということで、3台のWiiを用意し、おコダさん、クロウさん、怠け者さんの3人が同時にRTAを行う。
この『スーパーマリオギャラクシー』はステージ1-1から8-4を目指す旧来の作品とは異なり、ステージをクリアするごとに獲得できるスターを一定数集めることで最終ボスに挑めるようになっている。ステージは基本的にプレイヤーが自由に選べるので、苦手なステージを避けつつ、いかに効率よくクリアしていくかがポイントとなる。まさにゲーマー版オリエンテーリングと言えるRTAだ。
本作の見せ場はショートカット。例えば崖から大ジャンプすると、落下中に重力が反転してゴール近くに着地できるなど、各ステージには通常のプレイでは発見できない隠しルートが随所に仕込まれている。見た目の派手さとタイム短縮を兼ねた大きな見どころだ。3人のマリオのアクロバティックな活躍には何度も歓声が上がったが、ショートカットを狙うリスクも当然あり、上級プレイヤー3人でも失敗してマリオを失う場面が何度か見られた。
クリアまでの見通しは約3時間半。プレイヤーは当然目の前の画面に集中しているが、お互いに声をかけて牽制し合ったり、ところどころでショートカットの解説を入れたりと、現場の雰囲気は意外にまったりしている。緊張してばかりでは疲れるだけなので、当然と言えば当然なのだが、ハイレベルな戦いを観客側はゆっくり見ていられるのは、球技や格闘技よりモータースポーツを観戦する感覚に近いからかもしれない。
1日目にRTAが行われた『モンスターハンターポータブル 2nd G』。2日目はリアル集会所と題し、一般参加者も交えてまったり進行 |
『スーパーマリオギャラクシー』のRTAがスタート。「落ちろ!」「ざまあみろ!」など、ライバル同士の愛ある罵倒も飛び出す |
もっと長時間のRTAでは、ムービーの時間を見計らってトイレに行くといった様々な工夫が要求されるそうで、経験者からは「事前に睡眠をしっかり取るのはもちろんですが、固形の食べ物も控えますね」といった意見も聞かれた。もはやゲームというよりインドアスポーツの領域と言えるだろう。『スーパーマリオギャラクシー』をまだ遊んでいる人も多いと思うので、クリアまでの詳細は伏せるが、3人ともほぼ予定どおりの時間でクリア。怠け者さん自身が持つ最短記録の壁は打ち破れなかったが、見どころ満載のRTAに客席からは拍手が送られた。
クリア一番乗りは怠け者さん! 「練習より3分ほど遅いんですが、なんとかクリアできました。今日は調子が悪かったです、と言うとあとの2人が怒りそうですけど(笑)」 |
怠け者さんに続き、おコダさん(右)、クロウさん(中央)も3時間半以内に無事クリア。最後は会場からの拍手で締めくくられた |
大学祭もそろそろ終了ということで、会場の教室も撤収ムードに。順番が前後してしまったが、手の空いているメンバーにいろいろと話を聞いてみた。現在のメンバーは15人前後で、理系の学部生が比較的多め。RTAは在籍中のメンバーによって「スーパーマリオ」シリーズ、「ポケットモンスター」シリーズ、「ドラゴンクエスト」シリーズ、「ファイナルファンタジー」シリーズ、「ロマンシング サ・ガ」シリーズのほか、『風来のシレン』『MOTHER3』『オプーナ』といったゲームを題材に行われている。
所有ハードをメンバー12人に聞いてみたところ、ニンテンドーDSが12人、Wiiが8人、プレイステーション 2が8人、プレイステーション・ポータブルが3人という回答で、プレイステーション 3とXbox 360に至ってはなんとゼロ。メンバーによれば「任天堂好きが多いというのもありますけど、気に入ったゲームだけやり込むタイプが多いですね。学生なんでお金もないですし」とのことで、確かにRTAのようなやり込みは「時間はあるけどお金はない」という学生ゲーマーにうってつけのプレイスタイルかもしれない。
ところでゲーム研究会のメンバーと言えば、正真正銘の現役東大生。最後にゲームと受験勉強をどうやって両立させたのかを聞いてみると、「高三になって封印した」「最後の夏休み前からやめた」という手堅い意見は少数派。むしろ「いつもどおり」「ゲームは1日4時間まで」「試験前日もやっていた」「センター試験直後にポケモン図鑑を完成させた」といった豪快な回答が続出した。……どうやらゲームをやめなくても東大には合格できるらしい。
ゲーム脳の恐怖も叫ばれる昨今だが、現役東大生からは「ゲームをやると論理能力が高まります」「ポケモンは大学生以上向けのゲームです」という力強い意見をもらえたので、難関校を目指す受験生は安心して(?)、ゲームと勉強の両方に打ち込んでもらいたい。ただしゲームのやりすぎで受験に失敗しても本記事で責任は持てないので、あくまでも自己責任で。