フィギュア原型師・東海村原八さんの主催で毎週土曜日に開かれている「模型塾」。前回紹介した1コマ目の「フィギュア原型工作入門」に続いて、後編となる今回は2コマ目「はじめてのレジンキット」を紹介していく。
本題に入る前に模型塾を知ったきっかけを生徒のみなさんに聞いてみた。結果は「ネットを見て」という人が約半分、原八さんも出展している「ワンフェスで」という人が約4分の1、残りの約4分の1が「知り合いに教えられて」といった内訳。予想はしていたが、やはりネット経由の人が多いようだ。
休憩をはさんで2コマ目に入ると、男性比率がややアップ。1コマ目から引き続き参加の人も含め、8人ほどでのスタートとなった。2コマ目の「はじめてのレジンキット」は、現在ガレージキットの主流となっているレジンキャストキット(レジンキット)を組み立て、完成させるという全8回の授業。
受講生も入れ替わって後半戦の2コマ目がスタート。まずはガイダンスと全8回の説明から。講師は引き続き、東海村原八さんです |
こちらがシリコーンゴム製の型です。側面のレンガ模様はおもちゃのブロックで枠を作っているため |
市販のプラモデルは、熱したプラスチックを金型に流し込んで成型するので、大掛かりな設備が必要だが、常温で固まるレジンキャストを使えば個人でも原型が複製ができる。そこでレジンキャストの原料の普及とともに個人製作のガレージキットが広まった……というのが現在に至る流れとなっている。初回のこの日は「注型」、すなわちゴム型にレジンを流し込み、自分でフィギュアを複製するところまでが行われた。作業工程を細かく書き出してみるとこんな感じ。
- ゴム型に離型剤をスプレー
- ゴム型にベビーパウダーをまぶす
- ゴム型を輪ゴムで固定する
- レジンのA液とB液を混ぜる
- 混合したレジン液をゴム型に流し込む
- レジン液が固まるのを待つ
- 固まったレジンをゴム型から取り出す
「文面で説明されてもよくわからん」という人も多いと思うので、以下、原八さんの作業をお手本に、写真で工程を追っていきたい。
それでは工程スタート。まずはあとでレジンを外すための離型剤をゴム型にスプレーします。風通しのよいところで |
次に気泡の発生を防ぐため、細かい部分を中心に筆でゴム型にベビーパウダーをまぶしていきます。もともとは鋳物業界のノウハウだとか |
工程の説明でも触れているが、レジンキャストでの複製で一番厄介なのは気泡。液体を型に入れて固体になるまで固める、という段取りなので、気泡が混じっているとその泡の形まで成型してしまうのだ。
2コマ目には自分も参加させてもらったが、いつの間にか一番手でやることになってしまった。意気込みこそ「わかりました。では人柱になりましょう!」というカラ元気な感じだが、実際にはお手本のときには写真を撮るのに精一杯で、ろくに工程を聞いていないので緊張のひと言。当然後ろは詰まっているので、ゆっくりやるわけにもいかない。アタフタしながら見様見真似でレジンを流し込み、数分経っておそるおそる開けてみると、なんと一発で成功。目立った気泡もなく、ゴム型どおりの形でしっかり固まっている。複製とは言え、狙いどおりのものが完成するとやはり感動する。ゴム型にぴったり詰まったアイボリーの固まりに、思わずまじまじと見入ってしまった。
自分の作業が無事終わってひと安心。あとは取材用にバシャバシャ撮影するだけ……のはずだったが、だんだんそういう感じでもなくなってきた。というのも結構みなさん気泡に苦戦しているからだ。「やっぱり気泡が出ちゃいましたね……」「いや、気泡の修正も勉強なので気にせず進めましょう」という生徒の方と原八さんのやり取りを横目で見ていると、「成功したのは個人的にはうれしいが、人柱としてはどうなんだ?」という葛藤が胸中で渦を巻いてくる。
――なんか私、クイズ番組でいきなり正解しちゃった人みたいな……。
原八「空気読めない若手芸人みたいですね」
――原八さんもそれを言いますか!?
全員の成型が終わって2コマ目の授業も終了。ズブの素人の私がやってもここまでできてしまうので、フィギュア制作に興味を持った人はぜひ模型塾のサイトをのぞいてみてほしい。
そんなわけで取材を終えた私の机の上には、見事(空気を読まずに)複製に成功したガレージキットが、パーツのまま袋に入って置かれている。完成までにはあと7回は模型塾に通うことになりそうだ。