「前回は編集部の指令でメイドさん取材に行ったんですから、今回は僕のわがままを聞いてもらいますよ!」
……と担当編集の千葉さんに啖呵を切ったかどうかは定かではないが、今回は個人的に大好物の公共建造物の取材である。ネタはずばり勝鬨橋見学ツアー。東京の隅田川に架けられ、1970年まで開閉されていた日本有数の可動橋、勝鬨橋の橋脚内部を見せてもらえるという、探検好きにはたまらない一大探検だ。
この見学ツアー、じつは2008年1月28日まで日本科学未来館にて開催されている企画展「地下展 UNDERGROUND」の関連イベント。マイコミジャーナルで地下展を報じた際に、スタッフの方に教えてもらい、同行させていただける運びとなった。
レクチャーからの受け売りだが、簡単に勝鬨橋についての解説を。橋桁が左右に跳ね上がる跳開橋として、今年2007年に国の重要文化財にも指定された勝鬨橋。もともとは戦前に計画された幻の東京万博のメインゲートとなる予定だったが、日中戦争の激化もあって万博計画は中止され、1940年に勝鬨橋のみ完成。
その後、最盛期の1950年ごろには年間800回以上も開閉が行われていたが、川を通る船の減少と、陸上交通量の増加につれて開閉の回数は徐々に減少。1970年を最後に開閉は行われなくなってしまった。整備の費用や交通面の問題などあり、再び開くことは現実的にはまずないそうだが、構造上はほぼそのままの形で残されているという。では前置きはこの辺にして、勝鬨橋の内部の模様をどうぞ。
ヘルメットを着用していざ出発。混雑を避けるため、10人ずつ2班に分かれて進みます |
橋脚部分に到着。正面奥の建物が機械室。開閉時に車を止めていた信号もそのまま残されています |
さらに進んで橋の中央部分。ここから左右に開いていたというわけ。当然ロックされてますが、車が通るとグラグラ揺れるので結構怖い |
もうちょい寄るとこんな感じ。隅田川の水面も上からのぞけます |
橋脚内部はまさに洞窟探検と工場探検のおいしいとこ取り、といった趣。ストッパーのあるあたりが水面の高さなので、水上に構えられた人口の洞窟といったところか。内部には30年以上前まで実際に使われていた機械類がそのまま残されているので、古いものが好きな人にはたまらないものがある。上を通る車の騒音が結構うるさい、というのも入ってみて初めてわかる発見だ。探検とは言うものの、都心からすぐに行って戻ってこれる立地なので、比較的手軽に見学できるのもありがたい。予約すれば毎週木曜に一般でも見学が可能とのことなので、興味を持った人は資料館の公式サイトで詳細を確認してほしい。
といったところで見学ツアーは無事終了。ところで私にはひとつ確かめたいことがあった。ご存知の方もいるだろうが、ちょうど同じ勝鬨橋を特集したテレビ朝日の『タモリ倶楽部』が先々月に放送されており、今回は奇しくも後追い取材になってしまったのである。番組ロケに立ち会った人がいれば、もしかしてこぼれ話が聞けるかもしれない。ツアーが終わってリラックスした様子の建設局の方にその話を振ってみると案の定、
「いやあ、すごい人数でしたよ!」
との感想が返ってきた。えーと、仮に出演者5人、技術スタッフ5人、ディレクターその他5人として、おおよそ15人といったところだろうか。ところが建設局の方は、
「いやいや、総勢20人以上はいましたねえ」
とあっさり言うではないか。ロケ隊だけで20人以上! 今回10人ずつ2班に分けた我々見学隊の工夫がまったく霞む大人数だ。なんと迷惑、もとい立派なロケであろうか。取材人数だけでも、このコラムは毎度おなじみ流浪の番組に20対1の大差で負けてしまったことになる。経費に至っては100対1でも済まないだろう。
そんなわけで「深夜の流浪の番組とは言え、タモさんをナメたらアカン」というごくごく当たり前の事実を取材の最後に見せ付けられた私は「まずは空耳アワーに対抗できるミニコーナーを作らねば……」という、大幅にピントのズレたコラム改善策を練りつつ、闘志も新たに勝鬨橋を後にしたのだった。