「前回のはやりすぎです」

編集Cさんはスタンプラリーの記事を読んで、さすがに呆れたらしい。電話口でそう言われてしまった。ああ、穴があったら入りたい。というわけで穴に入ってきた。それもとびきりの穴に。

その穴とは、現在地下工事が行われている首都高速中央環状新宿線! 2005年には東京トンネリックスという大規模な見学会が行われたので、ご存知の方も多いはず。今回はバンダイビジュアル主催による、「映画『新SOS大東京探検隊』公開記念~首都高地下探検ツアー」に同行させていただいた。

5月に公開されたアニメ映画『新SOS大東京探検隊』とのコラボレーションイベントとなる今回の地下探検ツアー。少年たちが東京の地下を探検するという作品のストーリーにちなんで、実際に最新のトンネルの建設現場を見学してみようという粋な計らいだ。社会科見学ファン御用達のサイト「社会科見学に行こう!」主催の小島健一さんも企画協力として参加し、ツアーには公開記念キャンペーンの当選者や関係者など40人ほどが集まった。

地図中央の神山町換気所がスタート地点。今回は左下に進み、神泉駅付近まで行って戻るという往復ルート

地図の上が北になるよう回転させたもの。右端が渋谷駅。山手トンネルは現在の山手通りの真下に掘られています

渋谷駅近辺に集合し、貸切バスに乗り込んでほんの数分揺られると、オベリスクのようにそびえる巨大な煙突が見えてきた。これが中央環状新宿線の換気塔。中央環状新宿線は、ほぼ全線が山手通りの地下を走るトンネルなので、各所にこのような換気塔が建てられている。そして、今日これから潜るトンネルが先ごろ命名された「山手トンネル」。山手通りの地下を走るから山手トンネル……こういうのは、やはりシンプルでわかりやすい名前でなくては。「そのまんまやん」とか無粋なことを言ってはいけない。

渋谷駅からバスに乗り込んでトンネルの入り口がある神山町換気所へ

これが換気塔。覚えていると山手通りを通ったときにうんちくが言えます

バスから降りると早速ヘルメットが支給

私もあなたもカリメロ状態

ついに地下へ。思わず血圧が上がります

バスを降りてヘルメットを受け取り、早速地下へ。少し階段を降りただけでもひんやりしてきた。だんだん周りの土の温度に近づいているのだとか。この日は真夏日だったので、探検ツアーが涼しいだけでもずいぶんありがたい。ビバ! 地下。全員集まって今回のルートの説明と注意を一通り受けた後、さらに地下へとガンガン下りていく。

作業員のみなさんの詰め所でブリーフィング

こちらが中央環状新宿線。2007年末には池袋~新宿間が開通。我々がこれから見学するのは、2009年開通予定の新宿~渋谷間

今回のルートを横から見たもの。山手トンネルは、内回り本線(新宿→渋谷行き)の真下に外回り本線(渋谷→新宿行き)が通っている。今回、主に見学するのは外回り本線

建設資材や工具が置かれていたりと、随所に工事現場っぽい雰囲気はあるが、周囲のひんやりした空気のせいなのか、それとも生活感のない風景のせいなのか、そこはかとなく古代遺跡のようなおごそかな雰囲気も漂っている。地上にオベリスク似の換気塔も建っていたことだし、完成前のピラミッドは案外こんな様子だったのかもしれない。

普段見慣れないものばかりなので、張り紙を見るだけでも結構面白い。大半はメモや図表、安全標語などだが、なかには指名手配犯の張り紙までしてあった。まさか怪しい人物が地下に潜伏しているわけではないが、「それでも一応」ということで警察が貼っていったのだという。

蛍光灯を外して別の場所に持っていかれたことがあるようです

階段をひたすら降りてついに地下7階へ

工事現場っぽくなってきましたよ

興味のあまりキョロキョロと挙動不審になりながら、最下層を進むといきなりトンネルに出た。でも、想像していたのと比べてずいぶん小さい気がする。

野口「これ、首都高ですか?」
スタッフ「これはただの送気用のトンネルです」

山手トンネルの下には、きれいな空気を送り出すための別のトンネルが通っていたのだった! しかし、ただ空気を通すためだけとは言え、平気でそこらの地下道ぐらいはある。アクション映画で換気用ダクトと言えば、ほふく前進で潜入したり、脱出したりというのが相場だが、これぐらい広ければブルース・ウィリスだろうがトム・クルーズだろうが徒歩や自転車で逃げ放題だろう。

こちらがきれいな空気を通す送気用トンネル。排気用は本線の頭上に通されている

反対側はこんな感じ

……と余計な妄想をふくらませていても仕方がないので、おもむろに階段を上る。そこが山手トンネルの本線だった!

「でっかー!!」

(つづく)