電王! 東急線スタンプラリーに俺、鉄ちゃんと参上の巻(後編)

(前編のあらすじ)
7月21日から東急線でスタートした『仮面ライダー電王』のスタンプラリーに参加したライター野口。鉄ちゃん編集者の日高氏を呼び出し、全18駅コンプリートを目指して張り切るが、スタート地点の渋谷駅で『電王』出演陣による記念セレモニーに遭遇。肝心のスタンプラリーを忘れて、出発前から舞い上がってしまうのだった……。

野口「……というわけで大変出発が遅くなってしまった我々ですが、とりあえず駅数を稼ごうかと」
日高「賢明ですな」

さて、今回のスタンプラリーの地図を見ていただきたい。我々がいるのは右上の渋谷駅。ここから緑のラインで示された田園都市線で、左上の中央林間駅までスタンプを押しつつ移動する。

さらに中央林間駅からは小田急江ノ島線と相鉄本線を乗り継いで、地図左下の横浜駅へ。そこから赤いラインの東横線を使って右上の渋谷駅まで戻ってこようというルートである。地図の下のほうにある蒲田・大井町・五反田・目黒は乗り継ぎが面倒なので、ひとまず後回しにした。鉄ちゃんのサポートが付いているわりには大雑把な計画と言える。11時40分、東急東横線の渋谷駅で1個目のスタンプ(ソードフォーム)を押し、ようやくスタート。それでは田園都市線に乗っての前半戦を一気にご覧ください。

ここまではまったく順調。目的の駅に着くとすかさず私はスタンプを押しに改札に走り、ホームに残った日高さんは(プライベートで)電車を撮影する、という特撮オタクと鉄道オタクの絶妙のコンビネーションで次々と駅数を稼いだのだった。途中の宮崎台駅には「電車とバスの博物館」があったので、私は日高さんに「博物館にも寄りますか?」と声をかけたが、日高さんは「いえ、結構です」と言葉少なに辞退した。「鉄道趣味を我慢してくれるとはなんて献身的な人だろう」と思わず感動したが、あとから確かめたところ「中途半端に寄るのは蛇の生殺しになるからやめてくれ」というのが真意だったらしい。鉄ちゃん、恐るべしである。さて中央林間駅で小田急線に乗り換え、さらに相鉄本線で横浜へ。横浜からは東急東横線で渋谷を目指す。それでは中盤戦も一気にご覧ください。

渋谷に戻って、残るは4駅。スタンプラリーの終了時刻は17時だ。中央林間→横浜間で昼食を取ったり、菊名→日吉間で乗り継ぎを間違ったりしたせいで、じわじわと追い詰められてきた。無論、一番の原因は、出発する時間が遅かったことなのは言うまでもない。しかも残りは、乗り継ぎが面倒で後回しにした駅ばかり。残り1時間少々で回るのはかなり厳しい。険しい顔で私が地図とにらめっこしていると、日高さんがけろりとした口調でこう言った。

日高「これ……JR走ってますよ」
野口「え?」

ここで再び地図をご覧いただきたい。我々が戻ってきたのが地図右上の渋谷。残る駅が右下に固まっている目黒、五反田、大井町、それと地図の下にポツンと離れている蒲田だ。地図には東急線しかないので、一見この4駅はバラバラに見える。しかし渋谷→目黒→五反田はJR山手線が走っており、五反田から大井町まではJR山手線とJR京浜東北線で3駅。さらに大井町から蒲田に至っては、JR京浜東北線でわずか2駅である。首都圏の路線に馴染みのない方にはわかりづらいが、とにかくJRを使えば4駅回るのに1時間あれば十分だ。逆に言えば東急線にこだわっている限り、目的の達成はおそらく不可能になる。

日高「どうしますか?」
野口「東急さんには大変申し訳ないですが、どうやら選択の余地はありませんな……」

かくして残り16分という制限時間ギリギリでめでたく終了! ピンチで名案を思いついた鉄ちゃん、日高さんのおかげである。しかし、こちらがほっとしたのも束の間、なんと日高さんはこう言うではないか。

日高「待ってください。コンプリートじゃありませんよ」
野口「え?」
日高「確かにスタンプはすべて集めたかもしれません。しかし、1駅目の渋谷駅のスタンプ台の写真がありません。取材としてはやはり全駅分の写真を揃えていただきたい」
野口「細かいなあもう。最初に撮るのを忘れてただけじゃないですか」

確かに渋谷駅ではスタンプ台を撮影していなかった。しかし、いまから渋谷駅に再び向かっても制限時間には間に合わないだろう。仮面ライダー電王のような、時を越えられるヒーローがいない限りは。

野口「仕方ない。じゃあちょっと待っててください。ヒーローを呼んできますから」
日高「意味がよくわかりませんけど」
野口「いいからいいから」

(数分後)

??「……俺、参上!!」

日高「野口さん、お面かぶって何やってるんですか?」
??「野口さんじゃないぜ! 仮面ライター電庶民だぜ!」
日高「電庶民……」
電庶民「オラオラ昼の渋谷駅に行くぜ!」

電庶民「これで文句ねえな! あばよ!」
日高「……」

(数分後)

野口「いやあ、エスカレーターが渋滞してて遅くなりました。どうでした電庶民は?」
日高「……野口さんでしょ?」
野口「僕は電庶民じゃありません!」
日高「……野口さんなんでしょ?」
野口「僕は電庶民なんかじゃないです! 赤の他人です!」
日高「服が同じでしたよ」
野口「電庶民は庶民だから、服も僕と同じユニクロで揃えてるだけです!」
日高「……」
野口「では本日撤収!!」

こうして電庶民の時系列を越えた活躍のおかげで、スタンプラリーのコンプリートは果たされ、地球の平和は守られた(?)のだった。電王スタンプラリーは2007年8月31日まで東急線で好評開催中。記念品の数には限りがあるので、参加する方はお早めに。くどいようだが、電庶民の正体は私も知らない。