「鉄道か特撮に強い人、いませんかね?」
コラムの打ち合わせの電話でそう言ったのは私だった。今回の取材にはどうしても鉄道か特撮に詳しい人が必要なのだ。私の力説に折れて、担当のCさんも了解してくれたようだ。
編集C「わかりました。編集部に号令をかけてみましょう」
休日の東急東横線・渋谷駅改札口。こちらが待っていると編集部が誇る鉄ちゃん(=鉄道ファン)、前・ホビー担当編集の日高さんがやって来た。今日はここでこれから、いつも以上に渋谷駅がごった返す、あるイベントが行われるのだ。
野口「いやー、どうも呼び出してすいません、日高さん」
日高「なんで僕だけ仮名じゃないんですか」
野口「いやほら、宇宙食の取材で同行したHさんとイニシャルが同じだから」
日高「まあ、いいですけど。で、今日の取材は?」
野口「あちらでございます!」
日高「おおっ!」
そう、今回のコラムで取り上げるのは8月31日まで東急線で行われている「仮面ライダー電王 スタンプラリー」! ひとりで淡々とスタンプを集めるのでは、あまりにも盛り上がりに欠けるということで、編集部から助っ人として日高さんに来ていただいた次第だ。ご存知ない方のために説明しておくと『仮面ライダー電王』は、テレビ朝日系で日曜朝8時から大好評放送中の特撮ドラマ。電車をモチーフにした初の仮面ライダーということで、鉄道路線を使ったスタンプラリーにはまさにうってつけのヒーローと言える。
野口「毎週見ている私もついに『電王』の変身ベルトを買ってしまいまして」
日高「そうですか、それはそれは」
野口「腰が細いおかげで、子供用のベルトでも長さがギリギリ届くんです」
日高「なるほどなるほど」
野口「でもせっかくのベルトの変身音が仕事場ではうるさいと不評でしてね……」
日高「……仕事場で付けなきゃいいんじゃないですか?」
では、今回のスタンプラリーの流れを簡単に説明しておこう。
鉄道は好きだが『電王』は見ていないという日高さんは、そそくさとラッピング電車の撮影に行ってしまった。なんという手間いらず。やはり鉄ちゃんを取材に連れてきて、本当によかった。ということで撮影は彼に任せて、こちらはさっそく渋谷駅のスタンプを押すべく、列に並ぶ。周囲の参加者を見ると、もちろん多いのは親子連れだが、女性のグループも負けじとかなり多い。さすがはイケメンライダーと呼ばれるだけのことはある。スタンプを押し終えると、『電王』の出演陣を交えてラッピングトレインの運行式が始まった。子供の歓声と、女性ファンの黄色い声援で揉みくちゃになりながら、我々も取材用の撮影スペースに移動する。
野口「かっこいいですなあ」
日高「僕も来週から『電王』見てみますよ」
野口「そうでしょうそうでしょう。しかしさすがにこれだけ盛り上がると、取材する側としてもひと仕事終えた感じがしますな」
日高「まったくです」
我々はこれから17駅回らなければならないのをすっかり忘れてしまっている。