本当のことを知りたいのである。恋愛のことももちろんだけど、女性のことをもっと知りたいのだ――。この連載では、松居大悟が、恋愛猛者の女性たちと熱き激論をかわしていきます。今回はマイナビニュース連載でもおなじみ『ずっと独身でいるつもり?』著者の雨宮まみさんと対談してきました。対談1回目の模様はこちら、2回目はこちら。
雨宮まみ
ライター。いわゆる男性向けエロ本の編集を経て、フリーのライターに。その「ちょっと普通じゃない曲がりくねった女道」を書いた自伝エッセイ『女子をこじらせて』（ポット出版）を昨年上梓。恋愛や女であることと素直に向き合えない「女子の自意識」をテーマに『音楽と人』『SPRiNG』『宝島』などで連載中。
こじらせ系の弱点とは?
――これだけ恋愛について考えて、アドバイスも受けて、それなりに正解らしきものも見えてきました。あとは実行するだけなんですけど、じゃあ今後それを積極的にしたいかというと……?
雨宮まみさん(以下敬称略)「やっぱり"偽りのオレ"問題に戻りますよね。駆け引きで振り回してついてきた相手は、本当の自分じゃなくて、テクニックに騙されているだけじゃないかと」
松居大悟さん(以下敬称略)「パフォーマンスにね」
雨宮「思い通りにいかない、手に入りにくいもののほうが高く見えるという現象があるんですよね。そういうマーケティングみたいな法則があることはよくわかるんですけど、それを利用して恋愛をしようとは、考えられないですよね?」
松居「駆け引きで釣れたとしても、その駆け引きは長くは続かないですよ」
雨宮「でも松居さん、駆け引きに振り回されそう……!」
松居「そうですねえ、振り回されてますねえ。"久しぶりに会おうよ"なんて言われたらドキドキしちゃうじゃないですか」
雨宮「恋愛はどんなに純粋な形であっても力関係が絡んでくるから、まったく駆け引きのない状態なんて、ないのかもしれないですね。どちらか一方が優位に立って、もう一方が敗北感を感じている状態だと、居心地の悪い関係になっちゃいますよね」
松居「それは優位に立っている側にとっても同じですよね、相手が卑屈になってしまうと居心地がよくない。だからやっぱり"すごいよね"と近寄ってこられて恋愛が始まることなんかなくて」
雨宮「面白いですよね(笑)。普通は褒めるところから始まるのに、褒められたら心を閉じるんでしょう?」
松居「そうそう」
雨宮「あ、じゃあ松居さんにアプローチしたい人は、"松居君て見た目はイケメンだけど、なんかザンネンな人って感じだよね"なんて言ったら……」
松居「"ちょっとそれどういうこと?"って食いつきますね!」
雨宮「そっかあー(笑)」
松居「反論しつつも、そういう相手のほうがどこか安心できますね」
雨宮「一般的には、面倒くさい人だと思われちゃうでしょうね……褒めているのにどうして素直に受け取ってくれないんだろうって」
松居「うん。でもやっぱり"バカじゃないの?"とか言われたい」
雨宮「うわー、なんか悪い女に引っかかりそうだなあ! まあ、私もよく面倒くさい女だと言われますけど」
松居「そうでしょう? "バカじゃないの?"とか言われたくないですか?」
雨宮「……あの、ちょっと身に覚えがあるから何とも言えないんですけど(笑)。バカにされるとうれしいっていう、この考え方はダメですよね?」
松居「もしかしたらそこがこじらせ系の弱点なのかもしれないです。とはいえ"マジけなされ"じゃないんですよ。愛のあるけなされじゃないと」
雨宮「"ちゃんとしているふうに見せているけど、本当はそうじゃないことも分かってるよ?"ってことですよね。
松居「そうです、そうです!」
モテないキャラは武器になるか?
雨宮「恋愛相手に仕事への理解はどう求めますか? たとえば自分の舞台は毎回観に来てほしい?」
松居「観てもいいけど、勝手に観てくれればといった感じです」
雨宮「あれはあんまりよくなかったね、とか言われるのは?」
松居「えやぁぁぁぁ、モノによるかな? でも反論するかな……。言われたら言われたで悔しいです」
雨宮「じゃあ、彼女が同業者だったら?」
松居「やや離れているぐらいがいいですかね。これはよくないことだと思うんですけど、僕は仕事や執筆を始めてしまうと、生活の中でそれが一番になってしまうんですよ。相手のことは、たとえばメール一通返すのでも、ちょっとおろそかになってしまう。相手もクリエイティブな職業で、お互いに同じようなスタンスだったら、いい気がするんですけど」
雨宮「私たち、つき合いましょうか(笑)?」
松居「わー! わー!(困)」
雨宮「ただ、モテないキャラを売りにするのはやめたほうがいい、というのはその通りだと思います。独身女性の連載なんかしていると、世間からは完全に道化扱いですから。仕事的にはそれでもいいですけど、ネタにしていい人だと思われていたら、恋愛はやってこないですよねえ」
松居「プライベートはさて置き、でしょう!」
雨宮「さて置いたら置いたで、また言われますよ、"ビジネス非モテ"だろって」
松居「もうすでに言われてるんですよ」
雨宮「あら。2ちゃんねるとかに書かれてるんですか?」
松居「書かれてるんですよ。慶應卒でパーマをあてている奴がモテてないわけがない、とかって、昔の写真とか貼られて。天然パーマだよ!(笑)」
雨宮「実は恋愛に見た目はそんなに関係ないんですけど、世間的には見た目が一番重要だと思われているから、容姿がよければよかったで、それでモテないはずがないというバッシングもありますよね。見た目がいいのにその財産を生かしていないというところに対して、よく分からない不満をぶつけられる。かといって、容姿的にあまり優れていないとされる人がブイブイ言わせていると、それはそれでまた叩かれるし」
松居「うんうん、そういう次元の話じゃないですからね」
雨宮「真剣に悩んでいるんですけどね」
松居「そうなんです」
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「付き合いましょか?」「……えっ!?」(イラスト:松居大悟) |
自分より相手に目を向ける!
雨宮「私が思うに、自分の味方になってくれる人を見つけるのが、一番いいのかなと。自分を見下してくる相手が自分を成長させてくれるように見える、という罠があるんですよ。けなしてくる人が自分より上にいる人だと錯覚しちゃうんです。
そうじゃなくて、自分が一生懸命に打ち込んでいることを理解して応援してくれる人、ダメなときにアドバイスはしても、存在そのものは否定しない人が、一緒にいる相手としては大事なんじゃないかなと思うんです。自分といるだけで喜んでくれるなら、ヘンに頑張らなくてもいいし、そういう体験が一回あったら進路が開けるんじゃないかと思うんですけど、どうですか?」
松居「ムリしない関係がいいんだろうなというのは、今日話していて、すごく思いましたね」
雨宮「いいですよねえ。恋愛中ってずっと緊張してませんか?」
松居「しています。たとえばメールが返ってこなければ、返ってこない時間もずっと緊張しているから」
雨宮「それをトキメキと勘違いして盛り上がっていくんだけど、こういうときにはどうすれば、何て言えばいいんだろうって常にテストを受けているような」
松居「そうなると、毎日会いたいとは思わないんですよ。週1～2回ぐらいでいい。疲れちゃうんで。緊張しない恋愛があれば最高ですよね」
――緊張しない異性と、異性の友人とは、どう違うのでしょうか?
雨宮「それは"性欲"じゃないでしょうか。相手を完全に友達として見ていると、肉体関係を持ったりするのは、ちょっと気持ち悪く感じる気がするんですよね」
松居「いや、結構興奮するんじゃないですか?」
雨宮「え、マジですか!? あ、じゃあ松居さんはわりと大丈夫ですよ」
松居「友達みたいな関係から始まったほうが興奮するんじゃないんですか? みんなの前で見せる顔と、自分の前だけで見せる顔とのギャップが……」
雨宮「その路線で行ったらいいんじゃないですか?」
松居「友達ができなくなります(焦)」
雨宮「どちらにせよ、緊張していたらダメですよね、松居さんのよさが出ないだろうし」
松居「本当につまらないですよ、今のこんな感じでは全然ないです。もっと口数が少なくて、カッコつけてる感じです」
雨宮「緊張している状態だと、人はかわいくないんですよね、多分」
松居「あー、そうなんですか?」
雨宮「緊張していると、待ち合わせをしていて相手が見えたときに、テンションが上がって手を振ったりもしないでしょう? 見えていてもあえてじっとしている、みたいな。それは人として全然いきいきしていないし、感情が見えにくいから相手も何を考えているのか読めなくて不安になっちゃうと思う。どうしたら緊張しないでいられるんでしょうね?」
松居「相手を信じることなんですかね、結局は。自分がどう見られているかより」
雨宮「相手のことに意識を集中したらいいのかもしれませんね。今日は女の子がハイヒールの靴を履いているからあんまり歩かせちゃいけないな、とか」
松居「うんうん、そうっすよね。そういうことを考えなきゃいけないんだ!」
(対談おしまい! 次回は反省コラム!)
(c)Nobuhiko Hikiji
<著者プロフィール>
松居大悟
1985年11月2日生、福岡県出身。劇作家、演出家、俳優。劇団"ゴジゲン"主宰、他プロデュース公演に東京グローブ座プロデュース「トラストいかねぇ」(作・演出)、青山円劇カウンシル#5「リリオム」(脚色・演出)がある。演劇のみならず映像作品も手がけ、主な作品としてNHK「ふたつのスピカ」脚本、映画監督作品「アフロ田中」、「男子高校生の日常」、「自分の事ばかりで情けなくなるよ」。近年はクリープハイプ、大森靖子らアーティストのミュージックビデオも手がける。次回監督作は映画「スイートプールサイド」2014年公開予定。
構成: 那須千里
タイトルイラスト: 石原まこちん
