本当のことを知りたいのである。恋愛のことももちろんだけど、女性のことをもっと知りたいのだ――。この連載では、松居大悟が、恋愛猛者の女性たちと熱き激論をかわしていきます。今回は『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』著者のジェーン・スーさんと対談してきました。対談1回目の模様はこちら、2回目はこちら。
<著者プロフィール>
ジェーン・スー
1973年、東京生まれ東京育ちの日本人。作詞家/ラジオパーソナリティー/コラムニスト。音楽クリエイター集団agehaspringsでの作詞家としての活動に加え、TBSラジオ「ザ・トップ5」を始めとしたラジオ番組でパーソナリティーやコメンテーターを務める。『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)が発売中。ブログ『ジェーン・スーは日本人です。』
年上の女性がいいのでは
ジェーン・スーさん(以下敬称略)「私が言うとパワハラ及びセクハラになっちゃうんですけど、30代中盤くらいの年上の女と付き合ったほうがいいと思いますよ」
松居大悟さん(以下敬称略)「んー……(恋愛の)偏差値が高いじゃないですかそこは。私が教えてあげるよ感が……。そういう時はこうするんだよとか言われるのがだんだん腹立ってきて、なんで言われなきゃいけないんだみたいな。俺的には同じスピードでこう、歩んで、恋愛の階段をね」
ジェーン「また出たよ、同じペースでっていう名の俺のペース」
松居「だってそれは完全に向こうのペースだったんですよ」
ジェーン「それ言いました? 相手に」
松居「僕が不機嫌になるんですそう言われたとき。そういうので伝えている」
ジェーン「伝わんないですよ! 動物じゃないんですよ。小動物じゃないですよね? 人間ですよね? 松居さん」
松居「そうです……」
本当のことを言える相手と付き合ったほうがいい
ジェーン「それはやっぱり、今言ったことをそのままおっしゃったらよかったじゃないですか。年上なのは分かってるし、そっちの経験値のほうが多いのは分かってるけど、でもそれをいちいち言われるとへこむからって」
松居「いや、それ、かっこわるくないですか」
ジェーン「言わないほうがかっこわるいですよ。男の人が思ってる男の格好良さは女が思う男の格好良さとは必ずしも一致してなくて、それ言ったらかっこわるいっしょっていうのはあんまりかっこわるくなくて、これやったらかっこいいっしょっていうのが全くかっこよくないっていうのがあります」
松居「でもなんか、向こうも教えてる感じじゃないんですよ。無意識に言ってるんですよ。だからそれを言うのってなんか責めてるみたいで」
ジェーン「だからちゃんと話し合いの場をもてばいいじゃん。教えてる気がないのは分かるけど、年下だし男だからそういうのちょっとへこむんだよね、どうしたらいいのかな? とか」
松居「確かに、これ言ったらかっこわるいなと思って言わないことはすごい多い」
ジェーン「それはほんとに。男友達とかそういうカルチャーないのかもしれないけど、女友達もそんなにないけど、でもそのバーバルコミュニケーション(言語コミュニケーション)っていうところですよ。言葉で伝えるっていうのは、すごい大事だと思いますね」
松居「ふうーん、そうか、言っていけばいいのか。そうか相手は35歳くらいがいいのか……」
ジェーン「35歳くらいじゃなくても20代でもいいんですけど、言ってくしかないんじゃないですかね。向こうは向こうで自分から言って今度気づいたら向こうがやってくれるから。それのくり返しじゃないですか。
いい例がありました。昔の話。20代後半くらいのときに3つくらい年下の彼氏がいて、いつも年下だと思われたくなくてリードしようとてくれるタイプの彼氏でした。ある日、その彼氏の前に付き合ってた男が結婚したと風の噂が入ってきて、それがけっこう想像以上にショックで。別にもう好きだったわけでもなんでもないんだけど別れる原因になった女と結婚したんですよ」
松居「えーっ」
ジェーン「それって、私は絶対選ばれなかったってことを再確認するみたいなもんじゃないですか。それでけっこうへこんじゃって、でも今の彼氏には前の男とのゴタゴタは関係ないし、言えないことだと思ってた。だから女友達にずっと愚痴っていたら『それ今の彼氏に言いなよ、元カレが結婚したのがすごいつらいって、泣いてるんだって言え』って言われて、いやさすがにそれは言えんだろと。関係ないしおまえまだ向こうのこと好きなのかってなるから言えないよって言ったら『大丈夫だって。素直に思ってることをちゃんと言えば大丈夫だよ』って言われて。
ええーっと思ったんですけど、最近元気ないねっていうことを言われたときに、おっかなびっくり『いや実は前の彼氏が結婚しちゃって、べつにまだ好きなわけでもないんだけど自分でもよくわからないんだけど、すごいつらい』みたいなことを言いながらばーっと泣き出して。そしたら向こうが『よしよし、つらいね』みたいな感じになってくれて。たぶん後から考えると、そう言いながら今頼れるのは俺だなっていうのが分かったんだと思うんだけど。たまたまラッキーだったのかもしれないけど」
松居「たぶんそれが演技じゃなかったのがよかったんでしょうね。見てて普通に落ち込んで泣いてるっていうのが分かったから」
ジェーン「結局本当のことしかだめだと思うよ。変なアピールをしたりとか、相手を思ったように動かそうとするために何かをしても、だいたいばれちゃうから男女ともに。それは素直に言ってよかったですね。でもそれ以降かも、付き合ってる人に思ったことを言うっていうのは。本当のことを言える相手と付き合ったほうがいいと思うし、結婚するにしても。私はそう思います。
でも松居さん30代中盤まで結婚しないと思うんで、それ以降でいいと思いますよ。お互い斬りつけ合うみたいな恋愛をしてそれを全部創作におとすっていうのもいいですよ。だって私、独身でいたら本になったんですよ。できないこと101個書いたら本になったんですよ。ほんとにいい時代だなと。転んだら創作に変えるっていうのが絶対今はいいと思うんで。上から目線でえらそうに言いますけど。べつに恋愛なんかうまくやらなくてもいいじゃない」
松居「僕それもまさにそうで。このこじらせたのもまさにそういうふうにしてしまえと思って。企画にしてしまえということで」
経験値の高い女性にぶつかってみては
ジェーン「でもあれですよ、芸の幅を広げるためにも30代中盤の女、経験値が重量級の戦車みたいな女性が相撲を取り組もうとしてきたら、そこは一回ぶつかってみては」
松居「それは別に痛い目見てもいいしってことですか」
ジェーン「そうするとその次に付き合った女の時は、少し余裕が出るわけですから」
松居「なるほど、それはそうですね」
ジェーン「だってたとえば35歳の女がうまい焼き鳥屋とか、ガード下なんだけどちょっとうまい店とかに連れて行ってくれたら、別れた後にはそこに別の女連れて行けばいいわけですよ。そんなの口が裂けても言わなきゃいい。それで、ちょっともの知ってる男になれるわけじゃないですか。私Twitterで確認したことありますよ。前の彼氏が別の女の子に、私が教えた店とかすすめてんの」
松居「Twitter、見ちゃいますね……」
ジェーン「前の彼氏とかね。監視社会……」
松居「この男、このやりとりしてんの誰だ? とか」
――これまではどんな人と付き合いたいと思っていたんですか?
松居「こう言ったらめちゃくちゃ怒られるんですけど……自分よりも不器用な人ですよ」
ジェーン「そうだよね、それは答えが読めてる……。っていうかさ、不器用同士でくっついてどうすんの?」
松居「だからそれでちょっとずつ見つけ合っていくんですよ、何か素敵なものを」
ジェーン「でも自分よりも不器用な人っていうのは、イコール自分のほうが上に立ちたいってことじゃないですか。関係性として」
松居「同じくらいでもいいんですけどね。これはこの対談をする前の僕の話ですよ(笑)」
ジェーン「申し訳ないんですけど、筋トレしないくせに俺より腕力の弱いやつじゃないと勝負したくないってなると、その条件で勝てる相手はすごい少なくなっちゃうじゃん。筋トレしてからなら分かりますけど」
松居「たしかに。戦車と、ガッて恋愛するほうがいいんですかね」
ジェーン「ならわかるけど。弱いくせにもっと弱い相手をって言われると、女の人のほうもちょっと困る。いっしょに、いっしょのペースでって言うけど、話聞いてると明らかに俺がリードする話しか聞いてないですけどね」
松居「そうなんですよね。リードする引き出しもないくせにリードしたいと思ってるからたち悪いですよね」
ジェーン「そうそう、ほんとそれ。わかるよ、気持ちはわかるよ、でもさあ、っていう。一生忘れられない年上の彼女みたいな人ができたらいいですよ。それで別れてぼろぼろになってずたぼろになって、もう、そうするとその後の恋愛は比較的楽しくなる」
"さあ俺の心折れろ"
ジェーン「次行きましょう。行きましょう、行きますか、行きましょうか。連載のタイトル『さあハイヒール折れろ』ってところハイヒールをバツにして『さあ俺の心折れろ』にしたらいいんじゃないですか。折っていきましょうよ」
松居「折っていきましょう。これまで折れないように折れないようにきましたから」
ジェーン「今日大事なのは、松居さんはずるいってことですね、同じ歩調で、とか言ってるけど結局自分より経験値の低い、ゲームでいうところのゲージが自分より小さい女の子と、責任をとらない範囲でえばりたかったっていうのと、演出は完全に自分のためだった相手のことは考えてなかったってこと」
松居「もしかしたらそうじゃないのかなって思ってたけど完全にそうでしたね」
ジェーン「あとは付き合ってる人には正直に話すってことと、一回戦車みたいに馬力もあって経験値の高い女につぶされたほうがいいのではってこと。今後の作品がすごく楽しみになってきました。ありがとうございました!」
(対談おしまい! 次回は反省コラム!)
<著者プロフィール>
松居大悟
1985年11月2日生、福岡県出身。劇作家、演出家、俳優。劇団"ゴジゲン"主宰、他プロデュース公演に東京グローブ座プロデュース「トラストいかねぇ」(作・演出)、青山円劇カウンシル#5「リリオム」(脚色・演出)がある。演劇のみならず映像作品も手がけ、主な作品としてNHK「ふたつのスピカ」脚本、映画監督作品「アフロ田中」、「男子高校生の日常」、「自分の事ばかりで情けなくなるよ」。次回監督作は「スイートプールサイド」2014年公開予定。
タイトルイラスト: 石原まこちん