本当のことを知りたいのである。恋愛のことももちろんだけど、女性のことをもっと知りたいのだ――。この連載では、松居大悟が、恋愛猛者の女性たちと熱き激論をかわしていきます。今回は演劇ユニット「ブス会*」主宰で『たたかえ! ブス魂』著者、そしてAV監督でもあるペヤンヌマキさんと対談してきました(第1回の模様はこちら、第2回はこちら)。
ペヤンヌマキ
AV監督/劇団「ブス会*」主宰/脚本・演出家。 フリーのAV監督として活動する傍ら、2010年に劇団「ブス会*」を立ち上げ、以降全ての作品の脚本・演出を担当。女の実態をじわじわと炙り出す作風が特徴。著書にエロの現場で働く自らの経験をもとにコンプレックス活用法を探る半自伝的エッセイ『たたかえ! ブス魂~コンプレックスとかエロとか三十路とか』(KKベストセラーズ)。週刊SPA!にてコラム「ぺヤンヌマキの悶々うぉっちんぐ」(隔週)連載中。
ブス会* http://busukai.com/
身勝手キャラは女を選ぶ
---今、おつき合いされている方は?
ペヤンヌマキさん(以下敬称略)「ここ数年いないんですよ。いいなあと思う人がいても、家まで行って何も起こらず、みたいなことを繰り返していて」
松居大悟さん(以下敬称略)「でも家までは行っているんですよね?」
ペヤンヌ「そう。家に行って、彼が面白いと言っていた本を見せてもらいながら、朝まで横に並んでしゃべっていただけで」
松居「それは同じベッドで?」
ペヤンヌ「いや、布団には入っていないです」
松居「布団にまず一緒に入っちゃえばいいんじゃないですか?」
ペヤンヌ「どうやって入るんですか!?」
松居「たとえばペヤンヌさんが先に入って、もう寝なよみたいなことを言うのか、あるいは相手を先に寝かせておいて、自分はトイレから戻ってくる流れでそのまま同じ布団に入っちゃうとか」
ペヤンヌ「えぇぇぇ!? それこそ怖がりそうじゃないですか!」
松居「誘うためじゃなくて、完全に自分のためとして入るんです。あくまでも自分が布団で寝たいがためにそうしているんだという体裁で」
ペヤンヌ「ああ、眠くなったから寝ていい? ゴローンみたいな……私はそういう身勝手なことができる女のキャラじゃないんですよね。でも家に入れたってことは、嫌われてはいないですよねえ?」
松居「嫌われていないし、むしろ反対ですよ。僕の場合は好きな人にマンガを貸すと言って家に呼んで、でも何もできなくて、でも家に来てくれたってことがいいよなあと思いつつ、そのままお開きになって」
ペヤンヌ「その後に自分から誘ったりしないんですか?」
松居「その後も誘って、また来てくれたんですけど、いざ告白したら、彼氏がいるからってフラれました」
ペヤンヌ「松居さんはダマされやすそうですね。わりとしたたかな女性に引っかかりそう」
松居「そうですね、ちゃんと手玉に取られて」
ペヤンヌ「そういう意味では素直というか、こんなに警戒してバリアを張っているわりには……そこまで考えていたら普通は引っかからないだろうと思うんですけど」
松居「目の前にいたら何も考えられなくなるんですよね」
誠実さは後から見せればいい
---仮にもし好きな相手じゃなくても、一回成功すればそれがきっかけとなって、その後も肉体関係がうまくいくようになるということはあるんでしょうか。
ペヤンヌ「荒療治じゃないですけど、そういう方法もあるのかなと思ったんですよね。私の知り合いに、どんなに好きな子でも知れば知るほど性欲に結びつかなくて、見ず知らずの相手のほうが何も考えずに自分を解放できるという男の人がいて」
松居「一度お酒の勢いでそうなりかけたことがあって……その場で、今までつき合った人ともうまくできなかったからダメかもしれない、って話をしたんです。そうしたら、わりと冷たい感じで"いいじゃんべつに"みたいに突き放されて。それに対してすごく悔しさみたいなものが沸き上がって、そのときは一つハードルは越えましたね」
ペヤンヌ「そうなんですね。何の感情もない相手に……そういうタイプだと難しいんですよね、その後がね」
松居「その後の関係のことを考えなければ、その場だけ成功すればいいんですけど……って【恋愛・結婚】のページでこんな話、悲しすぎるな」
ペヤンヌ「女性はやっぱり性行為がなくなると、不安になっちゃうところがあると思うんですよね。どんなに思ってくれているのがわかっていても、本当に愛されているのか不安になっちゃって。そうすると体目的で近づいてくる男にも揺らいじゃうみたいなこともあるから、寝取られやすくもなる」
松居「さっきの女の人は、それまでよく知らなかったんですけど、その日からちょっと好きになったんです。でも連絡先がわからなかった」
ペヤンヌ「とりあえずしてみて……というのもアリかもしれない(笑)。体の関係が先だと続かないという説もありますけど、関係を持った後にこそ誠実さを見せればいいと思うんですよね。する前に誠実さを見せてもなかなか仲が発展しないけど、一度関係してみてからだったら、意外と私のことちゃんと見てくれているのねと思わせられれば株が上がるというか。そこが誠実さの見せどころじゃないかなと」
松居「あー、そうか!」
モテる男は魅力的なのか?
---逆に、恋愛に対して不誠実な男って何なんでしょうか?
ペヤンヌ「だらしないっていうんですかねえ、恋愛に関して。悪気なく、ちょいちょいいろんな女の人と深い関係になったりして。前に、私とそういう関係になりながら、別の女性とも続いていた人がいたんです。そんなときに、ある飲み会で私とその女性と彼が一堂に会して、すごく微妙な空気になったんですけど、この後どうするんだ、どこに帰るつもりなんだ? と思っていたら、全然知らない別の女の人に、スーッと着いて行こうとしていたんですよ(笑)。それでも"一緒に帰ろうって言われたからさ~"なんて無邪気に言っていて、あれはビックリしましたね。何の悪気もないんですよ」
松居「ペヤンヌさんとその女性は、お互いに同じ男と関係を持っていることは知っていたんですか?」
ペヤンヌ「その女性は知らなかったんじゃないかなあ」
---相手の男の人とはつき合っている状態で、そういうことになっていたんですか?
ペヤンヌ「うーん、うまいんですよね、それが。こっちはつき合っているつもりになっているんだけど、向こうは"つき合ってる"とは言っていないよねって感じで、逃げ道を作っていたと思う。そういうタイプはモテますよね。無邪気なんですよ、責める気にもならなくさせるのがうまいんですよね、のらりくらりと」
松居「でも、たいてい男からは嫌われるタイプですよね」
ペヤンヌ「それがその人は、男からも好かれる感じだったんですよ、同性でも憧れるような。だからタチが悪いんですよ。話だけ聞くと、なんだそのプレイボーイはと思うんですけど、実際に会ってみると全然そうは見えない。人当たりもいいし。人間としてはかなり魅力的なんです」
松居「いや、でも僕は嫌いです!(笑)」
聞かれたら拒否する女性心理
ペヤンヌ「これまでの話を聞いていると、何となく、性行為問題をまず解決しないことには恋愛も難しい気がします。今の時点でそんなにもしていないということが驚きですもん」
松居「していないことがバレたくなさすぎて……その気負いもありますね。恥ずかしくてしょうがないですよ」
ペヤンヌ「でも性的に積極的な女の人はダメなんですよね?」
松居「他の男の前でもそうなのかと思ってしまうと……」
ペヤンヌ「ということは、本当にしたたかな女の人は、特別感を出すのが上手ってことですよね。誰にでもやっているわけではありませんよというふうに見せるのが」
松居「そうそう、この子は自分にだけこんなにエロい部分を見せてくれている、と男に思わせるのが」
ペヤンヌ「だったら逆に、隠さずに全開で来る人のほうが、したたかじゃなくて純な可能性はありますよ」
松居「ああ、そんなこと言ったらもうわかんなくなります。そうなると、自分はこれからどうすべきなのか……恋愛はともかくとして、性的な問題を解決することを考えると」
ペヤンヌ「多分、言葉よりも行動を先にしたほうがいいと思うんですよ。キスしていい? とか許可を求められると、女は大抵拒否するから。そこは何も言わなくていいと思うんですよね」
松居「そうか、聞かれたら拒否するんですね」
ペヤンヌ「もしその気だったとしても、いったんは拒否の体勢を取りますよね。軽い女だと思われたくないという女性心理もありますし。男の人にはそこを乗り越えて来てほしいですよね。それこそホテルの前まで手を引っぱられて、入るか入らないかで押し問答をするぐらいの誘われ方をしたことが、過去にあったんですよ。でも意外にも、そこまで食い下がってくるならしょうがないか、みたいな気にもなってくるんです」
松居「そんな強引なやり方でも成功するんだ!?」
ペヤンヌ「そういうこともあります(笑)。だから恥をかくことを恐れずに、欲望に任せて動ける人は、やっぱり強いですよね。松居さんの場合は、今話しているようなことを、全部相手に打ち明けてしまうのも一つの手だと思いますよ。まずはカッコつけるのをやめるところから始めたらいいんじゃないかな」
(対談おしまい! 次回は反省コラム!)
(c)Nobuhiko Hikiji
<著者プロフィール>
松居大悟
1985年11月2日生、福岡県出身。劇作家、演出家、俳優。劇団"ゴジゲン"主宰、他プロデュース公演に東京グローブ座プロデュース「トラストいかねぇ」(作・演出)、青山円劇カウンシル#5「リリオム」(脚色・演出)がある。演劇のみならず映像作品も手がけ、主な作品としてNHK「ふたつのスピカ」脚本、映画監督作品「アフロ田中」、「男子高校生の日常」、「自分の事ばかりで情けなくなるよ」。近年はクリープハイプ、大森靖子らアーティストのミュージックビデオも手がける。次回監督作は映画「スイートプールサイド」2014年公開予定。
構成: 那須千里
タイトルイラスト: 石原まこちん