本当のことを知りたいのである。恋愛のことももちろんだけど、女性のことをもっと知りたいのだ――。この連載では、松居大悟が、恋愛猛者の女性たちと熱き激論をかわしていきます。今回は演劇ユニット「ブス会*」主宰で『たたかえ! ブス魂』著者、そしてAV監督でもあるペヤンヌマキさんと対談してきました。
ペヤンヌマキ
AV監督/劇団「ブス会*」主宰/脚本・演出家。 フリーのAV監督として活動する傍ら、2010年に劇団「ブス会*」を立ち上げ、以降全ての作品の脚本・演出を担当。女の実態をじわじわと炙り出す作風が特徴。著書にエロの現場で働く自らの経験をもとにコンプレックス活用法を探る半自伝的エッセイ『たたかえ! ブス魂~コンプレックスとかエロとか三十路とか』(KKベストセラーズ)。週刊SPA!にてコラム「ぺヤンヌマキの悶々うぉっちんぐ」(隔週)連載中。
ブス会* http://busukai.com/
ペヤンヌマキさん(以下敬称略)「雨宮まみさんとの対談回、読みました。雨宮さんに口説かれていましたね(笑)」
松居大悟さん(以下敬称略)「いや、そのやり取りも、対談中は軽い感じのものだったと思うんですけど(汗)。あの後にお礼のメールで『また今度飲みましょう』って書いたら、速攻で日程調整の返信があったんですよ」
ペヤンヌ「ハハハハハ!」
(※後日、雨宮まみさんよりコメント:「ただでさえ年上女が年下男を誘うの勇気要るのに、軽く『会いましょう』って誘っただけなのにドン引かれてショックでした」)
松居「僕はそんなにすごいスピードで距離を詰められないので、相手が速すぎると、こっちは後ずさるしかなくて。ゆっくり詰めて行きたいんです。だからペースが速すぎる人とは難しい、難しいっていうか怖いというか」
ペヤンヌ「あ、怖いって思っちゃうんだ。その発言はちょっとショックですね。私もそういうタイプの男の人を好きになったことがあるんですけど、こっちが詰めないことには全然話が進まないから、じゃあいつ会おうかと具体的に決めようとすると、やっぱりかわされちゃうんですよねえ。でもこっちが誘わないと向こうからは永遠に誘ってこないし」
松居「いや、日程を決める問題はちょっと難しいですよ。来週とか再来週とか、そんな先のことまでは決められないです。それまでに二人の感じがどうなっているかもわからないし」
---だからといって、直前すぎると都合がつけられなかったり、時間があったとしても"ヒマだと思われているのかな?"と女性は慎重になったりもしそうですよね。
ペヤンヌ「私が好きだった人も、二週間先の予定を前もって決められるのがイヤっぽい雰囲気があったので、直前とか当日に誘ったほうが気軽なのかなーと思ってそれも試してみたんですけど、やっぱり仕事があるとかで……結局ムリじゃん! みたいな(笑)」
松居「仮予約っていう言葉を最近使っているんですけど。来週のこの日を仮おさえで、みたいにしておいて、前日にもう一度確認する」
ペヤンヌ「そっちのほうが気がラクですか?」
松居「ラクです。"仮"だったらまあいいか、みたいな。スケジュール帳に書かなくていい気楽さがある」
ペヤンヌ「私もそういうふうにして、大体の日取りだけ決めて約束したことがあったんですけど、すごく楽しみにして一週間ぐらい待っていたら、前日に電話で断られて、え!? みたいな。直前のドタキャンは絶望感が倍増しますね」
---“仮”という前置きがついた時点で、どうしてもモチベーションは下がっていく気もしますが……。
ペヤンヌ「誘うときはどういう手順になるんですか?」
松居「日程よりもむしろ、何をしたいかという話をしている流れで、じゃあ明日とか明後日はどうかなみたいな感じで」
ペヤンヌ「それだと、前日に突然誘われたりしたら、軽い感じで女を誘う人なのかなと思われそうな気がする」
松居「こっちは一周回ってそうしているのに?」
ペヤンヌ「そう。ちゃんと手順を踏んで、前もって約束しておくほうが、紳士的じゃないですか。そもそも二週間後の予定を決めるのがイヤだというのはどうしてですか?」
松居「緊張するからです。二週間後に会ったときに何をしようかと考えすぎて精神をそこに持っていかれるし、当日のタイムスケジュールまで考え出して、ガチガチになっちゃう。そうなりたくないから直前に決めたいと思っちゃうんです。最高のパフォーマンスをしなきゃいけないっていうプレッシャーが……」
ペヤンヌ「女性はそんなの期待していないから大丈夫ですよ。やっぱりちょっとカッコつけですね。それを隠そうとするとあまりいい印象に見えないから、むしろ出していったほうがいいですよ」
松居「これはカッコつけなのか……」
"最後のパス"は女性に出してほしい
---好きな人ができたら自分から行動するタイプですか?
ペヤンヌ「二十代の頃は、こっちが興味を示すと向こうから寄ってくるみたいな形が多かったんですけど、三十歳を過ぎてからは、好みのタイプが変わったこともあって、あまり自分から女性を誘わない男の人を好きになるようになったんです。そうするとどうしても自分から動かなきゃならなくなるんですけど、それには慣れていないから、どうすればいいんだろう? みたいな状況が続いていますね」
松居「男にとっては、慣れていない状態のままで来られるのがベストじゃないですか?」
ペヤンヌ「どういうことですか??? そのほうがピュアさが感じられるからってこと?」
松居「ですかね。男のほうも興味がなくて手を出さないわけじゃないんですよ、距離の詰め方の問題で。たとえば自分の家に呼んだとしても、女性のほうからエロい感じで迫られたら、こっちからは行けないんです。でもあくまでも下心はないふうで部屋にいてくれたら――普通に本とか読まれたりしたら、こっちが何かしなきゃいけないと思うじゃないですか。といっても、とりあえず隣に座るぐらいしかできないんですけど」
ペヤンヌ「実はそれと全く同じシチュエイションを経験したことがあるんですけど……!」
松居「そうなんですか? とりあえず隣に座って、普通に会話をして、最後のパスだけ女性が出してくれたら……。草食男子はちょっとずつちょっとずつ距離を詰めていくので」
ペヤンヌ「最後のパスというのは、たとえば?」
松居「たとえば女の子が横になってくれたり……」
ペヤンヌ「"疲れた~"とか言いながら?」
松居「でもいいですし、腰が痛いとか何とか、普通に会話をしている流れで」
ペヤンヌ「ああ。それをね、さりげなくできる人とできない人がいますよね」
草食男子のオトシ方
松居「でもOKすぎるパスが来たら、それは受け取れないんです」
ペヤンヌ「そうでしょう? 怖いと思われるか、OKと取られるか、その境目がこっちとしてもわからないし、女からアプローチするのは相当勇気がいるんですよ。断られたらもう立ち直れないから……」
松居「女の人は本当に何もしなくていいと思うんですよ。ただただのんびりしていてくれれば」
ペヤンヌ「そうしたら何も起こらず朝を迎えることになりますよ」
松居「でも朝を迎える頃には、ちょっとは男の手が近づいていると思うんですよ」
ペヤンヌ「私の場合はかなり近づいたけど、何も起こらないまま、疎遠になりましたけどね(笑)」
松居「近づいたときに男の顔をグッと見ましたか?」
ペヤンヌ「グッと見れば"ヨッシャー!"と思うんですか?」
松居「最後のパス来た! と思いますよ。ゴーサインが出ないとやっぱり、行けないから」
ペヤンヌ「草食男子のスイッチってわかりづらいなぁ」
松居「しかもキスしてから次に行くまで、さらに8ハードルぐらいありますよ」
ペヤンヌ「え、そこからさらに!?」
松居「とりあえず一晩目は、それ以上進めないと思います」
恋愛がうまくいかないとき性欲はどうしてる?
ペヤンヌ「これまでの対談を読んで不思議に思っていたんですけど、なかなか恋愛がうまくいかない間、性欲なんかはどうしているんですか?」
松居「性欲はあるんですよ。それだけは衰えることなくずっとあるんですけど、自分でし続けていると、どんどん周りのことが見えなくなるんですよね。せっかく女性との機会があっても、いざそのときになると使いものにならなかったり。失敗しちゃいけないというプレッシャーで、目の前の相手ではなく、一人で見たAVを思い出してみたり。そうなると見るAVも、本番のシーンより、その前のトーク部分を楽しむようになっちゃって」
ペヤンヌ「素晴らしいユーザーですね(笑)」
松居「いわゆる興奮すべきところではない部分で興奮するようになってきているんですよね」
ペヤンヌ「でも、自分だけで処理できているんですか? 風俗とかは?」
松居「連れて行かれたことはあるんですけど、そこでもうまくできなくて、相手に申し訳なくなって中断して、その場で一人でしました。その時のその人の顔が忘れられなくて……すごい悲しい顔をしていたんですよ。それから行くのが怖くなりました」
ペヤンヌ「マジですか……風俗でさえもこじらせているとは」
松居「リラックスさせようとして女性のほうがあれこれ試みてくれるのも、逆にそれがプレッシャーになって、余計に緊張してしまうんです」
ペヤンヌ「ああー……手の施しようがない」
(つづく!)
(c)Nobuhiko Hikiji
<著者プロフィール>
松居大悟
1985年11月2日生、福岡県出身。劇作家、演出家、俳優。劇団"ゴジゲン"主宰、他プロデュース公演に東京グローブ座プロデュース「トラストいかねぇ」(作・演出)、青山円劇カウンシル#5「リリオム」(脚色・演出)がある。演劇のみならず映像作品も手がけ、主な作品としてNHK「ふたつのスピカ」脚本、映画監督作品「アフロ田中」、「男子高校生の日常」、「自分の事ばかりで情けなくなるよ」。近年はクリープハイプ、大森靖子らアーティストのミュージックビデオも手がける。次回監督作は映画「スイートプールサイド」2014年公開予定。
構成: 那須千里
タイトルイラスト: 石原まこちん