働き方改革は、法改正にかかわらず企業が自主的に推進するものと、法改正によるものに分かれます。
前者はすでに2年ほど前から首都圏を中心にムーブメントが起きており、たとえば平成28年からスタートした東京都のTOKYO働き方改革宣言企業制度には、毎年1,000社以上の企業が宣言を公表して新規登録を受けており、企業の大小を問わず、企業ごとに多様な働き方改革を推進しています。
一方、後者の働き方改革関連法改正は、今年の4月6日に国会に提出され、6月29日の参議院本会議で可決、成立したばかりです。
働き方改革派いつから
これら狭義の働き方改革は、いつから施行されるのでしょうか。具体的には以下の通りです。
2019年4月施行 | 高度プロフェッショナル制度の導入 |
残業時間の罰則付き上限規制 ※大企業のみ。中小企業は猶予措置あり |
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勤務間インターバル制の促進 | |
年次有給休暇の年5日消化義務 | |
フレックスタイム制の清算期間延長 | |
労働時間の適正把握義務化 | |
産業医・産業保健機能の強化 | |
2020年4月施行 | 同一労働同一賃金の促進(正規・非正規の不合理な待遇差の是正) ※大企業のみ。中小企業は猶予措置あり |
中小企業の働き方改革
一方で、中小企業については、経営体力やマンパワー等の観点から業務体制や労務管理体制の整備に一定の期間が必要であることを考慮して、法律施行の時期が猶予されているものもあります。具体的には以下の通りです。
2020年4月施行 | 残業時間の罰則付き上限規制 ※中小企業のみ。大企業は2019年4月施行 |
2021年4月施行 | 同一労働同一賃金の促進(正規・非正規の不合理な待遇差の是正) ※中小企業のみ。大企業は2020年4月施行 |
2023年4月施行 | 月60時間超の残業代割増率の5割への引き上げ ※中小企業のみ。大企業はすでに施行済み |
ここまで、働き方改革関連法改正の施行時期を見てきました。しかし個々の企業は事前に労務管理体制を十分に整えて、施行日を迎えなくてはなりません。
また、冒頭で述べたように、今回の法改正に限らず、働き方改革にいち早く着手して、採用競争力や定着率、労働生産性を向上させる必要に迫られています。その緊急度が高いのは、むしろ中小企業ではないでしょうか。
その意味で、中小企業の働き方改革は、まさに今、スタートすべき重要な経営テーマなのではないでしょうか。
働き方改革は適切な勤怠管理からはじまる
さて、多くの論点を含む働き方改革ですが、その中心課題は、何といっても、労働時間の適正化です。長時間労働の体質がなかなか改まらないのは、経営側にも社員側にも長年しみついた体質であり、仕事習慣病といえるでしょう。
ここから抜け出して、体質改善に成功するためには、以下のような手順がお薦めです。 難しく感じる方は、個人のシェイプアップをイメージすると理解しやすいでしょう。
「働き方改革」成功のポイント8
1.経営トップのビジョン(目的)、コミットメント(本気)、方針メッセージ(宣言)
2.「あるべき姿」(理想)と現状のギャップの明確化
3.推進リーダー、横断プロジェクトメンバーの選任
4.モニタリング指標とPDCAサイクルの設定
5.目標設定、仕掛け・施策の決定
6.業務BPR、業務コンピテンシーの見える化
7.経過、結果共有の場づくりと継続
8.成功した時のインセンティブ(収穫・ご褒美)
ここでプロジェクトマネジメント上の必須事項は、2と4、つまり、事実の見える化、数値化です。数値で確認できないプロジェクトは成功しません。そういう意味で、働き方改革は適切な勤怠管理からはじまる、と言っても過言ではないでしょう。
中小企業の経営者は、まず、重要なデータがきちんと測れる体重計を手に入れることから始めましょう。そして社員は、まず体重計に乗ることから始めましょう。
著者プロフィール : 米澤 実(よねざわ みのる)
社会保険労務士事務所 米澤人事コンサルティングオフィス代表
千葉県船橋市出身。株式会社リクルート(現リクルート・ホールディングス)でクリエイティブディレクター、ライン組織マネジメント、グループ企業の人事部長を経て、2010年独立。現在は「元気で強い成長企業の実現を支援する人事労務コンサルタント」として活動している。