「モラハラ」(モラルハラスメント)は家庭内、恋人同士、職場など様々な環境において起こり得るものですが、その多くは職場の人間関係において発生しているといえるでしょう。
ただし、パワハラやセクハラと比べるとモラハラに対しての認識が低いため、実際に職場で起きていたとしてもなかなか表面化づらいのが現状です。そこで今回は、職場におけるモラハラの特徴や対処法を解説していきましょう。
職場におけるモラハラとは
職場や仕事上の人間関係において、言葉や態度などにより、相手に精神的苦痛を与える行為をモラハラといいます。パワハラとは異なり、職場での立場や優位性問わず、さまざまな関係性において行われるため、誰もが当事者になる可能性があるのです。
職場におけるモラハラには「侮辱する」「否定する」「無視する」といった言動により相手を直接攻撃するものから、「陰口」や「悪いうわさを流す」といった陰湿に行われるものまで多岐にわたります。
モラハラが発生していても周囲が全く気付かず、モラハラ行為が長期間に及んでしまうというケースもあります。その場合、問題が発覚した時には、すでに深刻な事態にまで進行してしまうこともあるのです。
その原因は、周囲に気付かれないよう陰湿に行われるため、モラハラが表面化しづらいことや、相手の受け取り方や状況などによりボーダーラインが変わるため、客観的にモラハラだと見極めるのが難しいことが挙げられます
では、職場におけるモラハラには、どのような特徴があるのか、事例で紹介していきます。
モラハラの職場事例
無視される
「挨拶しても返事がない」「一人だけ業務連絡が知らされない」など特定の人を標的にして他とは異なる態度により孤立させる行為です。この行為が、職場におけるモラハラで1番多く発生しているといえるのではないでしょうか?
最近では「業務命令に従わない」「上司の判断を仰がない」といった。部下から上司へのモラハラも散見されます。このケースでは、モラハラを受けている上司が管理職としての評価が下がるのを恐れて、一人で抱え込んでしまい、状況が悪化してしまう場合もあるのです。
陰口を言われる
「給湯室やトイレなど、本人がいない場所で悪口を言う」「本人にも聞こえるように『仮病だ、やる気がない』」などの行為を繰り返すのも、モラハラとなります。陰口を言う本人は悪意を持っておらず、相手に精神的苦痛を与えることを自覚していないこともあります。
なお、世間では「お局様」と呼ばれる年配のベテラン女性社員が高圧的な態度で口うるさく小言や嫌味を言うケースもあるようです。
否定される
相手の人格や人間性を繰り返し否定して精神的苦痛を与える行為です。「太っている」「老けている」など容姿に対する否定や、「仕事が遅い」「能力が低い」「ミスが多く仕事を任せられない」といった能力に対しての否定もあります。
このケースで懸念されるのは、被害者が自分の責任だと思い込み、気付かぬうちに精神的ダメージを受けてしまうことです。上述のような、典型的なものだけではなく、次のようなケースもモラハラに発展する可能性があります。
有給休暇取得を妨げられる
有休申請にあたって、休暇の理由を細かく報告させ、取得しづらい雰囲気をつくったり、「みんなは忙しいのにお前は暇なんだな」といった発言や威圧的な態度により取得を妨げたりするような行為もモラハラに当たる可能性が高いでしょう。
なお、4月から年次有給休暇5日の取得義務化がスタートしていますので、このようなモラハラ行為は、取得促進の妨げになるでしょう。
勤務時間外に業務連絡される
休日や勤務時間以外に頻繁にメールや電話をするといった行為もモラハラになる可能性があるでしょう。最近では、SNSの普及により、業務連絡にLINEが利用されるようになりましたが、このLINEによるモラハラが発生することも考えられます。
例えば、昼夜問わずLINEで仕事の指示が飛んでくる。既読にならないあるいは既読スルーすると「無視するな」「すぐ返信しろ」といった催促のメッセージが入るケースもあります。LINEグループを作ってやりとりをしている場合は、要注意です。ちょっとした事務連絡であっても、相手は苦痛に感じているかもしれません。
モラハラをチェックリストで判断
モラハラにあっているかもしれない。あるいは身のまわりでモラハラが起きていると感じた時にまずは誰かに相談してみましょう。その際、以下のようなチェックリストで相手を判断することも有効です。
・プライベートなことを聞くのもコミュニケーションだと思っている
・普段から言葉使いが悪い
・イライラすると態度や言葉に出やすい
・機嫌が悪いと黙り込む
・イライラするとモノにあたる癖がある
・仕事ができると自負心が強く、できない人を見るとイラつく
このチェックリストにあるような考え方や行動のクセがあると、たとえ悪気がなくてもモラハラを発生させやすい人です。
職場でのモラハラの場合、周囲の人がモラハラ発生に気付いていないこともあります。したがって、上司や同僚など周りの人に相談して現状を知ってもらうことが重要になります。
モラハラ当事者が上司や同僚で相談しづらい場合には、会社のハラスメント相談窓口や人事部に相談するといった方法もあります。モラハラが大問題になる前にすべきことは、一人で抱え込まず誰かの助けを借りるということでしょう。
筆者プロフィール: 薄井 崇仁
大槻経営労務管理事務所 人事BPO事業部 執行役員。2007年の入所後、大小様々な規模のクライアントの労務相談およびアウトソーシング業務を担当。その後従業員からの問い合わせに直接対応する「社労士ダイレクト」事業部に配属。現職では、執行役員としてクライアントに対し総合的なアウトソーシングサービスを提供しており、人事BPOサービスの開発にも積極的に取り組んでいる。労働環境に様々な変化が起きている現在、企業にとってベストは何かを考えて課題解決へと導く。丁寧なヒアリングをモットーにクライアントのチャレンジを全力でサポートしている。