独身時代、ある仕事の縁で某結婚相談所の特性分析を受けたことがある。いくつかの質問に答え、さらに簡単なカウンセリングも受けることで、婚活の専門家が僕の結婚相手に適した女性のタイプを診断してくれるというものだ。

「山田さんの苦手なタイプは物事を自分の思い通りに進めようとする人」

その結果、僕はまず次のように性格分析された。

「山田さんは非常に相手のことを考えて行動し、他人とのコミュニケーションは上手にとります。ただし、相手のことを考えすぎて、恋愛や結婚に踏み切れないこともあるかもしれません。草食か、肉食かでいうならば草食です」

その他、「他人と協調したいという思いが強い」や「自分と異なる意見を受容できる」などといったことを指摘され、あらためて自分を見つめ直した。確かに僕には周りを必要以上に気にかけてしまう傾向があるのだが、それは「他人への思いやり」というより「他人に嫌われたくない」という極めて気の小さい理由からだ。したがって、一見他人に同調していても、腹の中では自分の考えを一切曲げていないということが多いのだ。

だから、その性格分析結果に記されていた「山田さんの苦手なタイプは物事を自分の思い通りに進めようとする人」という文言には、深く納得させられた。僕のようなタイプの人間が「物事を自分の思い通りに進めようとする女性」と結婚したら、その女性にさえも嫌われたくないと思うため、本心とは裏腹に相手にしたがってしまう。しかし、それでも内心は自分の考えがしっかりあるものだから、本意ではない行動を取り続けるストレスが積み重なっていき、やがて精神を壊してしまうというわけだ。

「山田さんに適した女性は、山田さんと同じ特性を持った女性」

そして、そんな性格を踏まえて、お次はいよいよ僕に適した結婚相手の特性分析結果である。当時の資料をあらためて読み返してみると、こう書いてあった。

「山田さんに適した女性は、山田さんと同じ特性を持った女性でしょう。具体的には場の空気や相手の心情変化を敏感に察知し、気遣いができるタイプの女性。基本的には山田さんがリードして、それについてくるような年下の女性が良いでしょう」

当時の僕は、この分析結果を受けても特に感じるものはなく、占いのような一種の遊び感覚で右から左に受け流していた。たまたま仕事の縁で婚活診断を受けただけであり、本気で婚活をしていたわけではなかったからだ。

また、「自分と同じ特性を持った女性が適している」と言われても、あまりピンとこなかった。それは言わば僕と「似た女性」ということであり、そんな女性など世の中にそうそういないと高を括っていたのだ。

驚いたことに、現在の妻の性格が結婚相談所の分析結果と見事に一致

しかし、今になって驚いた。この分析から数年後に、実際に僕が結婚した現在の妻の性格が、ここで書かれている結果と見事に一致しているのだ。

もちろん、僕がこの分析結果を参考にして婚活し、結婚に至ったわけではなく、完全な偶然の産物である。あれからしばらくして出会った女性が、たまたま僕と同じような特性を持つ、言わば「似た者」だっただけである。

いやはや、これにはおおいに感心した。現在の妻が自分にとって最適な女性であるかどうかは、結局のところ自分が決めることでしかないが、少なくとも現段階では彼女に対して特に不満があるわけではなく、結婚生活にも満足している。そう考えると、この特性分析は見事に当たっていたとしか言いようがない。恐るべし、結婚相談所である。

正直、これまでの僕は結婚相談所にあまり良いイメージを持っていなかった。婚活に焦った人に向けた気休め的なものでしかないと思っていたところがあったのだが、これだけ的確に特性分析を当てられると、一気にイメージアップである。男女の幸せな結婚とは、奇跡や運命だけで語られるものではなく、それぞれの特性分析という合理性に基づいて得られるものなのだ。(単純ですいません)

しかも、こういう特性分析を受けて、その結果に即した異性を紹介してくれる相談所もあるという。それなら下手な合コンやお見合いなんかよりも、はるかに効率的な出会いを手に入れることができるだろう。結婚に失敗したくなければ、なおさらである。

結婚相談所の"賛成派"に--その利点と精度に関して強く実感

かくして、僕はすっかり結婚相談所の賛成派となった。だからこそ、まだ独身の我が姉妹にも結婚相談所をおすすめしたいと思っているのだが、もちろん大きなお世話だと煙たがられる可能性もあるため、簡単には言い出せない。

また、結婚相談所というものに潜在するデリケートなイメージ問題にも、できるだけ気を配る必要があるだろう。これは自分に置き換えると、おそらく発毛相談のそれに近いのだと思う。年々、力強さがなくなっていく頭髪の未来を気に病んでいるなら、とりあえず専門家に相談すればいいのだろうが、実際の僕はなかなか実行に移せないでいる。結婚相談所もそれと同じで、興味はあるのだが、なんとなく腰が重いという人も多いはずだ。

だから、今回は自分の経験談を書いた。もっとも、僕の場合は直接的に恩恵を受けたわけではないが、その利点と精度に関しては強く実感することができたのだった。

<作者プロフィール>
山田隆道(やまだ たかみち)
小説家・エッセイスト。1976年大阪府出身。早稲田大学卒業。『神童チェリー』『雑草女に敵なし!』『SimpleHeart』『芸能人に学ぶビジネス力』など著書多数。中でも『雑草女に敵なし!』はコミカライズもされた。また、最新刊の長編小説『虎がにじんだ夕暮れ』(PHP研究所)が、2012年10月25日に発売された。各種番組などのコメンテーター・MCとしても活動しており、私生活では愛妻・チーと愛犬・ポンポン丸と暮らすマイペースで偏屈な亭主。

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