独身の女性から良く受ける質問がある。それは、子育てと仕事を両立させるのって大変ですか? というものだ。私の場合、両立がしんどいとは思わないけれど、以前できていたことができなくなった、という感覚はある。みんなに与えられた時間は平等に24時間。子どもの世話と仕事にかける時間だけ、自分の時間の中から何かが少なくなるのは当然だ。例えば、独身の方の楽しみといえば、ショッピングや食事、映画、ライブ、合コン、デートなど、さまざまだ。その中から何かを削る覚悟をしておいたほうが、あとでがっかりしないだろう。

何が独身時代や専業主婦の頃から比べて、短くなったのか。私は料理の時間である。言い訳のように聞こえるかもしれないが、そうではない。調理の中でも煮る時間が少なくなったのは本当なのだ。以前なら、カレーやシチューは水を多めに入れて、レシピに書いてある時間よりも長く煮込んだ。舌でちょっとつぶしただけで、とろけるくらい柔らかなニンジン。スプーンをあてただけで、サクッとほどける肉。旨みがたっぷりと出たスープ。私は煮込み料理が好きだったのだ。

硬くてそのままでは美味しくない安物の輸入牛をワインにつけて1晩寝かせる。それを翌日、コトコト何時間も煮込み、店で食べるのよりも美味しく仕上げるのが楽しみでもあった。しかし、最近はカレーを作るなら、レシピよりも長い時間をかけて煮込むことはなくなった。野菜が硬くて食べられないといったことは起きないが、それでもとろけるような柔らかさからはほど遠くなってしまった。

シチューは高圧モードで2~3分

ナショナル 電気圧力なべ「SR-P32A」。電気炊飯器のようだけど圧力鍋なのだ

短時間で煮込み料理ができる魔法の道具はないのか? そんな私が見つけたのがナショナルの電気圧力なべ「SR-P32A」だ。圧力鍋というのは、鍋内の気圧を高くして、沸点を上昇させて調理する鍋。普通の鍋ならお湯の温度は100℃。この圧力鍋は約120℃まで上がるので、お湯の温度が高くなった分だけ短い時間で調理ができるというのだ。取説によると、普通なら3時間~4時間煮なければならない黒豆が約1時間で柔らかくなるという。シチューはなんと、高圧モードで圧力が上がってから2~3分でOK。まさに、時間が足りない人向けの調理器具だ。

実際にカレーを作ってみた。フライパンで炒めた野菜と肉を電気圧力鍋に移す。後は水を入れて、高圧モードで3分に設定。調理スタートボタンを押して終わりである。なんと簡単なんだ! 3分経つと音が鳴って知らせてくれる。ただし、この状態では鍋の中の気圧は高いまま。この状態ではふたは開けられない。しばらく放置して中の圧力を下げなければならない。およそ20分待つので、出来上がりの時間はいつもの鍋でつくるカレーとそんなに変わらない。でも、火加減を調節する必要はなし。うっかり煮過ぎて、焦げ付くこともない。スタートボタンを押した後に、アイロンがけや洗濯など他の仕事をしても良いのだ。ありがたい鍋だ。

鍋の中の圧力が下がり、元に戻ると圧力ピンが下がる。後は、ルーを入れて、煮込みモードでひと煮立ちさせるだけである。さっそく、いただこうとした。しかし、だ。カレーが出来上がったのはいいが、盛り付けてみるとイヤな予感がしてきた。この圧力鍋はガスで煮込むのとはわけが違う。水が蒸発しないのである。だから、レシピに書いてある通りの分量で水を入れると、味が薄くなってしまう。しかも、カレー特有のとろみが出ない。失敗である。取説を読むと、水は控えめにするように書いてあった……。

茹でる、蒸す、炊くもできる

カレーって一日寝かすととろみが増すし、味わいが深くなるものだ。私が作った失敗カレーも翌日には美味しくいただくことができた。娘も大喜びだ。

とはいえ、どうも失敗したのは納得がいかない。次の日は、成功させたい!ということで骨まで柔らかくした煮魚を作ることにした。丸ごと骨までいただき、カルシウムをたっぷりと摂る。成長期の娘にぴったりのメニューだ。煮魚ならもともと煮汁が少ないので、今度は失敗することはないだろう。などと、自信たっぷりながら、いつも失敗をしてしまうのがぐうたら主婦だ。はたして、カレーの失敗によるマイナスを取り返すことができるのだろうか?

赤い部分が圧力ピン。鍋の中の気圧が下がると赤い部分が下に降りる

煮る以外には、「茹でる、蒸す」もできる。ゆで豚やゆで卵、茶碗蒸しもできる。取説によると、フライドチキンを作るときに、この圧力鍋でチキンを蒸してから粉をつけて揚げ物用の鍋で揚げると、骨離れが良く、食べやすくなるというのだ。そのほか、ジャムやプリンなどの甘いもの、いもがゆやリゾットなどのご飯類もできる。私は玄米炊き込みご飯も作ってみた。煮魚を含め挑戦した料理の数々についての詳細は次回報告する。

価格はマイコミジャーナルの価格情報で、22,798円~36,750円。短時間、しかも放置したままで、手の込んだ料理と同じ満足感が手に入るのだ。人は自分を実物よりも良く見せたいものである。本当は、しょぼいのに大物に見せたがる人っているでしょう? 例えば、ぐうたら主婦がそうだ。本当は20分しかかけていないのに、数時間も料理に時間をかける人のように見せたいのだ。いいのである。そんなものなのである。

それはそうと、この鍋を使えば加熱時間が短くて済むので、電気代の節約にもなる。取説によると、黒豆の場合は普通の鍋だと約23円かかっていたのが、この電気圧力鍋を使うと約6円ですむなど、光熱費が約3分1になるのだという。節約家にはうれしい商品だといえる。

イラスト:YO-CO