「音枕」に頭を乗せて音楽を聴きながら寝るのが習慣になったぐうたら主婦。となりでは娘が口をあけて寝ている。私が聴いている音は、実は娘には聴こえない。この枕の最大の特徴だ。使っている人にしか、音が聴こえないのだ。秘密は骨伝導技術。鼓膜を使わず、骨伝導スピーカーから内耳にある蝸牛に直接音を伝える。枕の上に頭を乗せるだけ。イヤホンやヘッドセットのようなわずらわしさもない。

この「音枕」は、枕部分と送信機部分に分かれる。仕組みは簡単。聴きたい音楽を送信機につなぐ。電源を入れると、送信機が赤外線で枕に音楽の情報を送る。受信した枕から音が聴こえるわけだ。お手持ちのCDラジオカセットレコーダーのヘッドホン端子から送信機の音声入力端子につなげる。あとはCDプレーヤーのプレイボタンを押すだけだ。CDラジオカセットレコーダー以外にも、テレビ、ラジオ、愛用しているオーディオなど、ヘッドホン端子があれば送信機につなぐことができる。

送信機と枕の間に家具などの赤外線を遮断する障害物があると、音声信号が届かない。また、送信機と枕の距離はスペックとしては水平6メートル以内となっているので、それ以上離すと信号が届かない恐れがある。写真を見てわかる通り、「音枕」自体は薄い。いつも使っている枕に乗せて使うのだ。

価格は2万円でおつり

音質が気になるところだが、結論から言うと期待をしてはいけないレベルだといえる。量販店のオーディオコーナーに行くと、高級スピーカーが置いてあるが、当然ながらそれらは比較対象ではない。

その分、価格は安くてお値ごろだ。「マイコミジャーナル」価格情報では、15,400円~20,880円(7月中旬)となっている。私は秋葉原の量販店にて17,800円で購入した。なので、1本10万円以上もする高級スピーカーと同等の音質を求めるほうに無理があるのだ。価格と照らし合わせて納得いくレベルの音質だといえる。

電源は送信機は送信機用のACアダプタを取り付けて電源コンセントに差し込む。枕は本体用ACアダプタを電源コンセントに差し込んで充電する。充電が完了すると、ランプが赤から緑色に変わるので、ACアダプタを抜いて完了だ。

私は手持ちのiPodを使っている。送信機につながず、直接枕の端子とiPodのヘッドホン端子をつないでいる。もちろん、送信機を使っても聴くことはできるが、直接枕につなげば手元で好きなアルバムを選ぶことができるから便利だ。

iPodを直接枕につなげてもOK! 寝ながら手元で聴きたい曲を選べる

電源スイッチとボリューム。つまみを回すと好みの音量になる

子供の好き嫌いは何で決まるのか

娘は私の持っているものには、なんでも興味を示す。子供は親の持ち物に関心があり、「人のものは欲しくなる」の法則で、私が持っているものを自分も持ちたいと願うのだろう。ときどき、彼女はふざけて私のパンプスをはいて、マンションのポストに手紙を取りにいっている。小学生用のズックよりもパンプスのほうがおしゃれ。だから欲しいのだ。私が音枕を買うと、娘はすぐに気づいた。

「ナニ? ナニ? ナニ? コレ?」 「試してみる?」

私がそう言うと、うれしそうな笑顔を見せる娘。iTunesを立ち上げてPCのヘッドホン端子と音枕の音声入力端子をつなぐ。iTunesに入っている音楽を聴かせようとした。でも、ジャズしか入っていない。

「まあ、いいか」

試しに"クレオパトラの夢"をかけてみた。これは、CMでも使われたことがある、よく知られている曲だ。

「うん、いい曲だね」

意外だった。さらに私はジャズ評では「難解」としている評者もいるセロニアス・モンクの"セロニアス・ヒムセルフ"をかけてみた。

「これもいいね」

彼女は週末、リビングでクラシックを聴いている。義姉の影響なのか、クラシックは嫌いじゃないようだ。でも、ジャズは野菜を嫌がるように、「好きになれない」と言うと思っていた。親の持ち物同様、子供は親が好きになっているものに興味を示すものだ。そのときに、トライしてみて面白かったら「好き」になるだろうし、つまらなかったら「好きじゃない」になるのだろう。

子育ては迷いの連続

子供の頭の中には不可思議なことばかり詰まっている。私は子供を産んだあと、しばらくはどうやって育てたら良いか手探りだった時期がある。社会に適応できる人と、できない人、その差はどこにあるのだろう? 私は不思議でならなかった。世の中では『永遠の仔』(天童 荒太著)とかが話題になっていて、小さい頃受けたトラウマが大きくなってからの人格に影響するというようなことを口にする人もいた。

今の自分の子育ては本当に正しいのか? 不安に思った私は教育関連本から、子供の心理学までたくさんの本を読み漁った。そして、時代によって正しいとされていることは変わるし、今は正しいことでも時代が変わると適合しなくなってしまうものもあることを知った。結局、自分が育てられたようにしか育てられないのだ。

それでも、本を読んでいてひとつ気がついたことがある。親がやるべきことは、子供にとって、環境を整えることなのだろう。「宿題をやりなさい」と命令するのではなく、「こんなことはどう?」とまわりに興味深いことを置いておく。それを手にとって面白いと感じるかどうかは本人次第。音楽、マンガ、絵本。少しずつ、面白いと感じる経験を増やしていくのがいいのだろう。勉強は子供が興味を示すものの中のひとつに過ぎない。もちろん、ひとつのことが気に入ったら、そればかりやっても私は悪くないと思う。

音楽を聴くことは悪いことではない。私が高校のころはフュージョンが流行っていて、ジャズのギターソロにロックのドラムを合わせたような音楽ばかり聴いていた。今はジャズばかり聴いている。

何かに興味を持って、今まで知らなかったことに魅せられていく。それは、大人でも子供でも幸せな気持ちにさせる要素なのだと私は思うのだが、いかがでしょうか。

イラスト:YO-CO