最近の炊飯器は単にご飯を炊くだけでなく、調理までできるようになっている。サンヨーのマイコン炊飯器(3.5合炊き) ECJ-IS35-SBは「パンコース」を搭載。ヘルシーでおいしい豆料理が手軽に作れる「豆調理コース」も付いている。象印のマイコン炊飯器(3合炊き) NS-VG05-CAはスポンジケーキやチーズケーキといったケーキが作れるのだ。調理機能の充実でいったら、東芝 マイコン炊飯器(5.5合炊き) RC-10NMD-WTは優秀だ。パン、ケーキはもちろん、温泉たまごや手づくり豆腐までできる。付属の専用蒸し器を使えば、シュウマイなどの蒸し料理もできてしまうのだ。

炊飯器でパンを焼くというのはなんだか違和感があるが、まあいい。早速試してみた。以前紹介したパン焼き器、象印マホービン - ホームベーカリー「パンくらぶ」BB-HA10は材料を入れるだけで、「こねる」から発酵、焼きまでを全自動でやってくれるコースがある。こちらのマイコン炊飯器はこねるところはユーザーが行う。確かに、炊飯器にそこまでお願いするのは酷というものだ(本当にそうか?)。

それはそうと、パン生地をこねるのは時間さえあれば楽しい作業だ。人によってやり方は異なるところもあるが、パンをこねる過程には生地をたたきつける工程がある。粘土のように丸くなったパン生地の塊をぺしっと台にたたきつけ、端を伸ばしてたたみ込む。これをくりかえすことで、美味しいパンができるといわれている。

このたたきつけが実に気持ち良いのである。ぺしっとたたきつけるたびに、ストレス解消になるのだ。生きていくうえで、思い通りにならないことは多くある。仕事にプライベート、悶々と考えれば考えるほどたまっていくストレス。考えても仕方のないのはわかっているがイライラしてしまうことは誰にでもあるだろう。誰が悪いのでもない。だからといって、溜め込んでいたら、体に良くない。

パンの「こねる」作業でのぺしっという瞬間は心にたまったおりを吐き出させてくれる力がある。団塊世代のオジサマ方に、そば作りは依然として根強い人気がある。そばを作るほど上の年代ではないが、家族に食べさせてあげられるものを作りたい。そのようなお父様にぜひともパン作りをおすすめしたい。けっこう、ストレス解消になる(と思う)。

発酵、焼きモードもある。焼きたてパンの味はバツグンだ

スポンジケーキは味も形もOK!

白パンが簡単に作れる

生地ができたら、次は発酵。メニューボタンを押して、発酵にモードをあわせる。後は、「分」ボタンで時間を合わせるだけだ。全部で発酵は二回。料理ごとに設定時間は異なるが、取り扱い説明書にその都度の時間は表記されている。書いてある通りに設定すればOKだ。発酵が終わると、「焼き」モードに設定して後は出来上がりを待つだけ。出来上がったパンは写真の通り。釜に当たる下の部分はこんがりきつね色。上の部分は焦げ目が付かない白いパンになる。食パンのようなものを想像していたので、色の白さに面食らったが、食べてみると実に美味しい。炊きたて、もといっ、焼きたてのパンほど魅力的なものはない。食パンよりももちっとした感じが強く、イメージとしてはイタリア料理のフォカッチャとか、ピザ生地を厚くした感じがぴったりくる。そのまま食べても美味。サンドイッチとしてチーズや生ハムを挟んで食べてもいいのではないだろうか。

そして、もうひとつ魅力的なのは、スポンジケーキができるところだ。スポンジケーキの作り方には、たまごの卵黄と白身を分けて、それぞれをあわ立てるやり方と、全卵をあわ立てるやり方のふたつがある。この炊飯器が適しているのは全卵を泡立てる方式。後は通常のケーキ作りと同じように、生地を作るだけだ。

違うのは、オーブンの余熱が不要なところ。生地ができたらすぐに内釜に流し込んで「焼き」ボタンを押すだけ。実に簡単である。しかも、スポンジケーキはオーブンの温度や泡立ての加減を間違えると、間違いなく失敗する料理だ。ぐうたら主婦はスポンジケーキ作りをしょっちゅう失敗している(自慢しなくて良い)。でも、写真の通り、何とか上手くふくらんだ。

「大人になったら、パティシエ(ptissier、菓子製造人)になりたい」と言っている娘は喜んでクリームの泡立てを手伝ってくれる。ケーキのデコレーションって楽しいものだ。でも、パティシエ(ptissier)ってフランス語の男性形ではないだろうか。女性形はパティシエール(ptissire)。「パティシエールになりたい」と言ったほうが正確ナンじゃないのかな…などと思いつつ、まあ細かいことを言って子供の夢を壊すのはやめようと見守るのであった。

このほか、温泉たまごも作ってみたが、こちらも店で食べるのと同じような出来に満足。複合機はどれも機能が中途半端で使えないことがある。でも、こちらのマイコン炊飯器RC-10NMD-WTの調理機能は高いといえる。

気になるお手入れも簡単だ。内ふたがはずせて水でサッと丸洗いできるようになっている。お値段はMYCOMジャーナルの価格情報で、最安値7,980円、平均価格8,695円(送料別、2007年3月中旬)と出ていた。

人の価値観はそれぞれだ。もちろん、10万円の炊飯器の価値を否定しているのではない。今のぐうたら主婦が炊飯器を買うとしたら、マイコン炊飯器RC-10NMD-WTが一番手ごろなのだ。機能の充実もうれしいし、実用的という基準で考えるとベストなのである。

とはいえ、高い炊飯器を買って、毎日魚沼産のコシヒカリを食べられるような身分になりたい気もちょっとだけしているのも事実だ。

イラスト:YO-CO