このコラムを続けて読んでいる方はお気づきと思うが、このコーナーで紹介する製品のメーカーはかなり偏っている。先日数えてみたら、一番多いのがパナソニックグループ。次が東芝、続いて三菱、三洋、日立になっている。開発する商品点数の多い会社が多くなる傾向にあるのだが、商品数の割に登場回数が少ないのが海外メーカーである。なぜか。そこには理由がある。
このコラムで扱う製品には一定の基準が設けてあって、合致しないメーカーの商品はすぐには紹介しないことにしているからだ。要するに、このコラムでは、読者が紹介した商品を買った場合、買って良かったと思える商品のみ紹介したい。これだけは譲れないのである。いくら話題性があって面白い商品でも、安心して使えないようなら紹介は見送りたいと考える。特番を除くほとんどの原稿が、実際に私が使った物、あるいは開発者などに話を聞いた物のみなのは、このようなこだわりから来ている。
買った人が安心して使えるとなると、品質保証体制やサービス体制がしっかりしている会社に絞られてくる。この見極めは、以前メーカーで勤めていた経験が生きるのだが、海外メーカーの中にはダイソンのようにサービス体制がしっかりしている会社もあるが、中には品質保証体制やサービス体制が日本の消費者の目には、はっきりと見えない企業もある。このような会社を取り除いていくと、結局、掲載するメーカーが限られてくる。これがこのコーナーで、国内大手メーカーやダイソンなどの一部のメーカーの扱いが多くなる理由である。
商品の魅力は抜群
今回紹介する商品は知らせるべきものかどうか、これまでで一番迷った商品だ。私が迷った理由は、開発・製造元が資本金1,000万円という小さな会社だというのが一つ。上場していないため財務状況が見えない、くわえて製品に対する品質保証体制も、確実な生産体制も外からはいいのか悪いのか見えないのである。だが、これらが明らかでないからといって、必ずしもその会社がたとえば品質に対して、いい加減な姿勢で臨んでいるとは限らない。単に、まわりに知らせるノウハウがないだけのこともある。不明瞭な点があるという理由だけで、魅力的な商品を読者に知らせないのもよろしくないことである。
今回、悩ましいと思った一番の原因は、対象の商品が魅力的なことにある。つまらない商品だったら、迷わず紹介はやめようと決めたと思う。迷った挙句、今回の商品については、先方の事務所に行って製品を生で見られる、そして製造元の社長が直接会って話をしてくださるという。ならば…、ということで取材にうかがった。
今回、私が紹介させていただきたいと思った商品は「ゆきり名人」という名前のものだ。揚げ物をこの装置にかけると、余分な油をきってくれるのだ。これだけダイエットブームが続いているなか、ありそうでなかった商品なのである。
串揚げ、唐揚げ、天ぷら、とんかつ。揚げ物の名前は思い出すだけで食べたくなってしまう。だが、その分カロリーが高いのが難点である。とんかつなんて、豚肉100gの平均的なもので、一枚500kcalくらいする。定食にしてデザートまでつけたら、それだけでダイエット中の私は一日分のカロリーを摂ってしまうことになる。なんて恐ろしいんだ。揚げ物。なんとかカロリーを抑えたい。そんな願いを「ゆきり名人」はかなえてくれる。
業務用からスタート、好評を博す
「ゆきり名人」の使い方は簡単。本体のバスケットの中に揚げ物を入れ、スイッチを押すだけ。なかの揚げ物が数秒間高速回転して完了である。まわりのガラスの壁部分に、飛び散った油が付着する。下側に油を受ける皿もある。
油をきった海老フライと、きる前のものを食べ比べてみた。たしかに、油をきっていないものは、口の中に油っぽい感じが残る。油をきることで、さっぱりエビの味が引き立っているのがわかる。
現在、業務用のものを販売しており、家庭用は12月上旬に発売予定だという。業務用のものの回転数は300~1,000回転、回転時間は1~30秒まで設定できる。とれる油の量は、海老フライ4本なら、ペットボトルのふた2杯分、約11gがとれる(参考数値)。これをカロリーに換算すると、約101kcal。海老フライは平均的なものでも1本60~80kcal程度である。つまり、「ゆきり名人」で油を落とせば、あと一本多く海老フライを食べてもよいということである(←これではダイエットになりません!)。参考までに、油2杯分、101kcalというのは、ビールならグラスおよそ1杯分(250ml)よけいに飲めるということなんである(←だから違うっ…)。
「ゆきり名人」がダイエットにいいことは確かだが、裏を返せば普段海老フライを4本食べるたびに、私たちはペットボトルのキャップ2杯分、よぶんな油を飲んでいることになる。そう考えると、こんな油は落とせるものなら落としたいと考えるのも自然なことだ。揚げ物は好きだけどダイエットの敵、あるいは胃もたれするから控えたい。このような人にとって、「ゆきり名人」は魅力的な商品なんである。
ぐうたら家でもたまに揚げ物をするが、私がストレスを感じるのは揚げ終えてから油をきる時間が長いことである。油をきるため待っている時間がもったいないといつも感じていた。できれば、油はよぉ~く、きりたい。でも、なるべく調理時間を短縮したいのである。
そして、ぐうたら主婦の視点でもう一つうれしいのは、この装置、自分で揚げた物だけでなく、お店で買った揚げ物を入れてもいいのである。揚げ物を自宅でするのは、キッチンが油で汚れるし面倒なんである。そんなときスーパーの惣菜は便利であるが、油でベタベタしているのが難点である。そこで買った惣菜をレンジでチン。さらに「ゆきり名人」で油をきれば、さっぱりヘルシー、おいしくいただけるのである。
「こんなものがあったらいいな」 まさに「ゆきり名人」は私が欲しかったものなんである。
この商品の開発期間は約1年、構想は10年以上前からあった。2010年3月から業務用の発売を開始し、現在はレストランやお弁当、惣菜店などを中心に約130個所で導入されているという。
それにしても、これまでなんでこのような製品が生み出されなかったのだろうか。しかも、このような便利な品をつくった人ってどんな人物なのだろう。この辺のことを中心に、次回説明しよう。