太陽光発電システムはどれだけ電気がつくれるかが重要である。だからこそ、製品選びには、カタログに載っている出力が大きな決め手になる。ただし、それ以外にも着目しなければならないことがある。一つは雨漏り対策だ。新聞で報じられている通り、最近、雨漏りに関するクレームが発生している。原因はさまざまだが、設置工事の方法も、雨漏りの発生に影響するという。

「三菱電機では、信頼性の高い垂木(たるき)固定方式を採用しています」と三菱電機 営業部 高山博夫氏は語る。この垂木固定方式が雨漏りを防ぐのに貢献しているのだが、この「垂木」というのはなんだ? これは屋根の板(野地板)と瓦を支える木だ。

雨漏りを防ぐという垂木固定方式

建築途中の一戸建ての家の前を通ると、屋根板も瓦もついてなく、骸骨みたいに木だけが家のトップについていることがある。あの、木が垂木である。メーカーによっては、屋根の野地板に直接ネジを打ち込む方式を採用しているところもある。垂木を探すのには時間がかかるため、直接ネジを打ちこむ方式のほうが工事時間は短い。

だが、耐久性に不安が残ってしまう。そこで、垂木にモジュールを固定することで、しっかり固定できるようになる。それだけではない。冬場の温度差によるネジの結露を防止する役割もあり、結露によって水滴がポタリなどといった心配もない。さらに、防水シート、パッキン、ブチルシート、ゴムアスファルト系コーキングによる四重防水処理を施し、これによって雨漏りをしっかり防ぐ構造になっている。

売れることで出てくる悩み

太陽光発電システムの売れ行きは急激に増えている。それにともなって、工事件数も同じだけ多くなるのだ。と、すると、あまり経験がない作業者でも、工事を任されることも出てくる。もちろん、主なメーカーでは各社とも、工事担当者は事前に研修を受け、一定レベルの作業者が工事するよう制度が整っている。とはいえ、件数が増えれば、確率的に工事ミスが起こってしまう可能性も増えてくる。

コネクタ部分。カチッと音がする構造を採用した

そこで、三菱電機では、太陽電池モジュールの裏面にまで気を配った。太陽光発電システムは屋根の上に何枚かモジュールを置いて設置する。それぞれのモジュールはコネクタで繋がれている。三菱電機では、工事の過程でコネクタが繋がったときに「カチッ」と音がするようにしてある。工事担当者が間違いなく繋げるように見えないところに気を配る。カタログを見ただけではわからない良さ。こういう細部にまで気を配っている製品に私は魅力を感じる。

電気をつくると儲かるのか

ここに来て急に太陽光発電システムに注目が集まり始めたのは、「補助金」と「買取制度」の二つが大きい。昨年の1月より国から、太陽光発電システムの設置時に補助金が支給されることになった。金額は「太陽電池モジュールの公称最大出力1kWあたり7万円」。つまり4kWのシステムを設置すれば、7万円×4kW=28万円。意外と大きい。また、各都道府県でも補助金が支給される。こちらは支給額が各自治体によって異なる。いずれにしろ、販売窓口などに相談するといいだろう。

新製品では屋根を有効利用できる台形型タイプも用意した。標準型だけでなく、正方形や台形のモジュールによって設置容量がアップ。見た目もきれいだ

そして、もう一つうれしいのは「買取制度」である。住宅用太陽光発電で余剰電力が出た場合、買取制度として1kWhあたり48円で売れる。電気を自分でつくっても、太陽がたくさん出ている昼間は家にいる人が少ないので、電気は使われずに余ってしまう。いまの太陽光発電システムは蓄電の機能は付いていないので、夜に使おうと貯めておくことができない。結局捨ててしまうのはもったいない話である。余ったら売れる。これはいい。

「ただし、たくさん儲かるといったレベルではありません」。三菱電機の高山氏が語るように、過度の期待は禁物だ。太陽光発電システムを設置したからといって電気を売って副業でウハウハ~ということにはならない。夜は太陽が出ていないので、不足した電気は従来通り、電力会社の電気を使う。したがって、電力会社から請求される電気代は従来よりも安くなることに間違いはないがゼロにはならない。電気をたくさん使ってしまえば売れる電気量も少なくなって、売電収入は減ってしまう。一般的に、自営業で自宅兼店舗の家など、昼間の消費電力が多い家庭では、売電収入が減る傾向が強いようだ。とはいえ、一般的な4人家族で、太陽光発電システムを導入した場合では、支払った金額よりも電気を売って手に入った金額のほうが大きい家も少なくない。

エコロジーとエコノミー、2つの「エコ」を教えてくれた、三菱電機 営業部 高山博夫氏

価格は、モジュールを何枚設置するかで変わってくる。新商品国内住宅用「単結晶無鉛はんだ太陽電池モジュール」の単体での価格は、長方形型の標準タイプが134,400円、標準タイプの半分の大きさである正方形タイプが72,765円、台形型が79,380円である。大きな家でたくさん設置するほど価格は高くなるが、一般的な住宅だとおおむね200万円程度が定価での目安だ。ここから、販売店による値引きがなされる。

このほか、かかる費用は工事費。屋根の形、大きさによって、使用する枚数が異なるので、自身の家に設置したらどのくらいになるかは、一概に言えない。三菱電機では見積り用のソフトも用意しているので、実際取り付けを検討する際には、販売店に相談することをおすすめする。

これから先の時代、自分が作った電気と、電力会社がつくった電気、そして、名も知らない誰かが作った電気、いろんな電気を使用するのが当たり前の時代になるのだろう。料理のように、自分でこしらえた電気を使う。なんだか、「未来」的な香りが漂って、素敵なことのように思える。といっても、補助金や買取制度が太陽光発電システムの魅力を底上げしているという事実は消えないけれど。

イラスト:YO-CO