次に洗濯機を買うのならタテ型がいい。最近、このような声を耳にすることが増えた。電機メーカーのなかには、洗濯機の2010年度国内出荷台数(見込み)はほぼ横ばいだが、タテ型洗濯乾燥機市場においては若干の伸びを予測している企業もある。洗濯機を買うときに、最初にぶちあたる岐路は「ドラム式がいいのか、それともタテ型か」という悩ましい選択だ。洗濯機を買うのなら、どちらがいいのだろうか。

2003年、ナショナル(現 パナソニック)の「ななめドラム」がヒットし、一気にドラム式洗濯機の人気が高まった。以来、主婦の間では、ドラム式洗濯機は「高価だけれど手に入れたい家電商品」として君臨するようになる。だが、電化製品に限らず、バッグやアクセサリー、住まいなど、自分が欲しいと思っていたものが手に入ると、意外とあっけなく「こんなものか」と思ってしまうときがある(←なんとも自己中心)。

日立 洗濯乾燥機「ビートウォッシュ」2010年モデル 最上位機種「BW-D9LV」

同様の現象が洗濯機でも表れているため、タテ型洗濯機が再び見直されているのではないか。このような見方も一部である。それはそうと、タテ型とドラム式、それぞれの特徴はどこにあるのか。ななめドラムは以前、こちらのコラムで紹介しているので、今回は、タテ型洗濯機のエース、日立の洗濯乾燥機「ビートウォッシュ」の特徴を中心に紹介したい。

「タテ型は節水がダメ」なんてウソ?

「"洗い"にこだわりがある人にこそ、タテ型をおすすめしたい」と話す、日立アプライアンス 家電第一設計部 技師 立山卓也氏

そもそも、タテ型が選ばれる理由は、「使い慣れている」が大きな要因の一つ。くわえ、タテ型は抜群の洗浄力が何といっても魅力だ。他方、ドラム式は、洗濯槽を斜めに傾けた状態で洗濯するため少ない水量で洗えるので、節水能力が高い。裏を返すと、タテ型の弱点は節水、ドラム式の弱点は洗浄力、といったところにあった。だが、最近では、この図式が大きく覆されている。

タテ型の洗濯機というと洗濯槽いっぱいに水をためて、パルセーターという羽根で水をぐるぐる回して洗濯をするのが一般的。これだと、一回の洗濯で120リットル以上の水を使うものがざらである(洗濯容量9.0kgタイプの場合)。ちなみに、パナソニックのドラム式洗濯機「NA-VR5600L」(洗濯容量9.0kg)の標準使用水量は72リットル。これがタテ型は節水に弱いといわれる理由だった。しかし、これはもう古い話。タテ型であるビートウォッシュの洗濯時標準使用水量は73リットル(洗濯容量9.0kgタイプ・BW-D9LVの場合)。ほとんどドラム式と違わないのである。なぜこんなことが可能なのか。

「トリプルビートウィング」の絶妙なうねり形状により、「押し洗い」「たたき洗い」「もみ洗い」の効果を発揮

これは、ビートウォッシュに施されている節水機能のおかげにほかならない。ビートウォッシュには、日立独自の「節水循環ポンプ」なるものが搭載されており、少しの水をポンプで循環させて、衣類の上からシャワーのように水をかけて洗濯する方式なのだ。水をためる必要もないから、少しの水量ですむのである。

日立の独自技術である「節水循環ポンプ」

シャワーは広がったり、狭まったりと動きに変化があり、これでまんべんなく洗剤液を衣類にかけている。しかし、猫パンチのような緩やかなシャワー水を振りかけただけで、汚れが落ちるのかと心配になる人もいるのではないだろうか。大丈夫である。日立が誇る特殊な形状をした羽根「トリプルビートウィング」がおして、たたいて、もんでと洗ってくれる。しかも、新機種には、ステンレス槽にも球状の凸がついて、これが洗濯板のような効果を出してくれるというのである。そんなわけで、節水能力を前面に出しながらも、タテ型の魅力、洗浄力は抜群。ビートウォッシュはあれもこれもトップクラスの実力の持ち主になっている。

高濃度の洗剤液を衣類にまんべんなくふりそそぐ「ワイドシャワー」を搭載する

使い勝手の良さの裏にはコツコツがある

主婦としてうれしいのは、細かいところまで、使いやすいように気遣いがなされている点だ。たとえば、「ほぐし脱水」。これは、脱水終了後に衣類をほぐしてくれる機能なのだが(←名前のまんま)、衣類がからんでいないので、スッと取り出せるのである。派手な機能ではないし、なくても洗濯の性能に大きく影響するものでもない。でも、家事をするうえで、このようなちょっとした便利さがあるのとないのとでは大違いなのである。

小さな気配りが嬉しい「ほぐし脱水」

洗濯物の取り出しやすさはほぐし脱水だけではない。間口が広く、洗濯層が浅く、取り出し口が低いところもすごいんである。こう書いてもさっぱり良さがにじみ出ないのだが、量販店でビートウォッシュを見かけたら、洗濯層の底をタッチしてみると、古いタイプのタテ型洗濯機を使ったことのある人ならば驚くに違いない。要するに、洗濯物が取り出しやすいように高さなどが工夫されているのである。

しかも、そこに行きつくまで、設計者は実験室にこもって、被験者に測定器をつけ、洗濯槽の深さや取り出し口の高さを変え、どうしたら一番負担がかからないのかをいろいろ試しているのである。

条件を変えて、何度も実験を繰り返す作業は決してラクではない。ビートウォッシュを細かく見ていくと、地道な努力を惜しまずに、実現させた機能がたくさん見つけることができるのである。どんな機能が隠されているのか、次回は、ビートウォッシュの隠れた素晴らしさをもっと紹介していこう。

イラスト:YO-CO