競争が人を進化させるというけれど、テレビ、洗濯機、冷蔵庫など、家電製品はどれも著しい進化をとげている。そのなかで、今も昔もデザイン、機能ともに変わらないモノといったら何を思い浮かべるだろうか。のんびりしている家電の代表といえば扇風機である。羽に丸型のガードがついたデザイン、機能は首ふりに、タイマーといった定番ものがずっと変わらずについていた。

ダイソン「エアマルチプライアー」。羽がないのにしっかり風が送られる

ノスタルジーに浸るなら、扇風機が一番……、だと思っていた。ところが、競争とは無縁の楽園だったはずの扇風機の世界に変化が訪れた。先日、近所の家電量販店に行ってみると、扇風機コーナーに、「これが扇風機?」と声をあげたくなる製品が並んでいたのだ。それは、ダイソンの「エアマルチプライアー」といって、扇風機なのに羽がないのである。が、しっかり風は出ている。ダイソンの商品説明によると、羽がないからムラのない、スムーズな風を送ってくれるという。

どうやら、最近、扇風機にも高性能化が進んでいるらしい。たしかに、これまでの扇風機というと、強い風が一気に出てきて、机の上の書類をバラまき散らすイメージがあった。もっとまろやかな風があればいいのに…。そんな、女性の願いをかなえてくれた扇風機が続々と登場しているのである。

扇風機にもエアコン並みの賢さがある

東芝「F-LM100X」。高機能で賢い扇風機

高性能化が進む扇風機であるが、今回は東芝の「F-LM100X」に注目したい。従来の扇風機は、一度風の強さを設定してしまうと、そのままユーザーが設定を変えるまで、風の強さは変わらない。朝、扇風機をまわしたものの、日が昇り、時間が経つにつれて、室温が上がっていく。それでも、扇風機は命じられた通りの強さで風を送り続ける。その点、エアコンはセンサーで室温を検知して、室温が上がれば冷房の強さを変えてくれる。

エアコンは賢いけれど、扇風機はそうでもないなどと、バカにしてはいけない。なぜなら、F-LM100Xは、「センサー運転」モードにすると、温度と湿度によって風の強さを自動で変えてくれるのである。たとえば、「センサー運転」モード、「強め」にした場合、室温が27度、湿度が適湿ならば、風の強さは「ゆっくり」になる。しばらくして、室温が28度、湿度が高湿になると、なんと、風量は「ゆっくり」よりも強い「弱」モードに、さらに温度、湿度が上がっていくにしたがって、「中」「強」と風量が自動で強まっていく。

本当に、こんなに賢いのだろうか。実際に試してみた。スイッチを入れると、操作部の表示板に、室温27度、湿度適湿と表示された。取説に書いてある通り、風量は「ゆっくり」である。

試しにエアコンの暖房をつけてみた。夏だというのに、何をしているんだ、私は…。などと思いながら、うっすらと汗をかきつつ扇風機を眺めていると、しばらくして、表示板が「高湿」に変わる。すると、これまでの風量は「ゆっくり」だったが、より強い「弱」になったのだ。センサーでしっかり室温を検出している。ついでに、今度は冷房で室温を下げてみる。すると、「ゆっくり」モードに戻るではないか! 賢い! エアコン並みの賢さである。

リモコンの収納場所が首の横にあるので、リモコンが行方不明になることもない

リモコンのボタンが大きいところも使い勝手への配慮が感じられる

もちろん、手動で強制的に風量を強くしたり、弱くしたりすることも可能だ。とくに、手動モードで心地よいのは、「リズム」モードである。とかく、同じ風にずっとあたっていると、寒さを覚えることがある。この「リズム」モードは、風量が強くなったり、弱くなったり少しだけ変化するのである。冷やし過ぎの感じがしない上、まろやかな風が心地よいのでとくに女性におすすめである。

サーキュレーターという選択肢も

男性は全般的に暑がりが多い。女性の中には、初夏くらいだったらエアコン不要という人は少なくない。むしろ、冷房の効きすぎたオフィスに対して、不満を口にする人のほうが圧倒的に多い。そういう私も、真夏でもエアコンなしでもかまわない。

ボタンを押すと、首部分を長くすることができる

はっきり言って、私が冷房を入れる目的は、パソコンが壊れるのを防ぐためである。つまり、パソコンのためにエアコンを入れているのである。パソコンがなければ、この世からエアコンの冷房が消えても生きていける自信はある。ただし、真夏になるとさすがに、熱いと感じてしまう。といっても、あくまで、エアコンの冷やし過ぎは避けたい。そんなとき便利なのが、エアコンと扇風機の併用だ。エアコンの設定温度を高めにして、ゆるく扇風機をかけるのである。とくに、F-LM100Xはエアコンと併用の扇風機として使える。

機能の一つに「切/入ツインタイマー」というものがある。扇風機のタイマーは、「切」のみしかついていないものが多いが、こちらは切/入両方、同時に使える。夜はエアコンのタイマーが切れた1時間後くらいに、扇風機のタイマーを切に設定しておけば、エアコンが切れて、一気にじわーっと暑く寝苦しくなるのを防ぐことができる。ついでに、切タイマーの設定と同時に、朝にスイッチが入るように「入」設定をすることができるので、真夏の寝起き、朝から汗だくで不快だという状態を避けることができる。もちろん、エアコンの設定温度は高め。電気代節約にもなるから主婦としてはうれしい。

デュアルセンサー。ここで、部屋の温度と湿度を検出している

文字が大きく表示されていて見やすい

ただ、どうしてもエアコンで室内を冷やすと、冷たい空気が下に行きやすい。エアコンで冷やした空気をより隅々までムダなく循環させたいという場合は、「F-CM18X」などのサーキュレーターがおすすめだ。室内の空気を循環させてエアコン使用時の効率化を促してくれるため、エアコンの温度設定を夏は高め、冬は低めにしても、不自由さは感じない。F-CM18Xにもツインタイマーがついているので、エアコンと併用重視という人はサーキュレーターをおすすめする。

価格はマイコミジャーナルの価格情報で、F-LM100Xが10,681円ででていた。昔ながらの扇風機は、5,000円程度で買えるが、ちょうどよい風を選んで送ってくれるこの「けなげさ」はなんとも価値が高い。サーキュレーターのF-CM18Xは8,180円~8,354円。手ごろで、しかも、エアコンの電気代を節約できる点を考慮すると、F-LM100Xはお買い得品だといえる。

イラスト:YO-CO