卒業、入学のシーズンである。先日、妹から電話がかかってきた。娘の卒業祝いを何にするかの相談である。その数日前は、母から同じように電話があった。ぐうたら家では、小6の娘が今年卒業を迎えるのである。「何が欲しい?」という母からの問いに、娘は「ゲーム」と答えて叱られていた。私は娘に英語の辞書をプレゼントすることを約束している。

とはいえ、英語の辞書はいくつかある。今の時代、どれがいいのかわからない。そんな中、ふと書店の一角にあるコーナーを思い出した。電子辞書売り場である。紙の辞書は学校が始まってから、学校が指定するものを買えばいいではないか。電子辞書なら、あっても邪魔にならないはずだ。ラインアップをみると、大人用や学生向けのモデル、海外旅行に便利なコンパクトサイズのものなど、さまざま出ている。

申し訳ないのだけれど、今まで、辞書は紙のものが一番いいと私は思っていた。ただ、仕事のとき、時間に余裕もなく、ちょっとした確認でいいときはネットの辞書で済ませている。紙とネット、どちらを使うにしても、電子辞書なんて一生手にすることはないと思っていたし、電子辞書が売れる理由がいまいちわからなかった。しかし、シャープのカラー電子辞書「PW-GC610」には驚かされた。任天堂のDSくらいの小ささなのに、これでもかっ、というくらいいろんなものが詰まっているのである。

シャープのカラー電子辞書「Brain」シリーズの学生向けモデル「PW-GC610」。学生用だけあって、「英検」「漢検」「TOEIC」の学習をサポートする「学習アプリケーション」を搭載するなど至れり尽くせり

辞書というより学習教材機

メインとなる辞書は、広辞苑に国語辞典、ジーニアス英和辞典に和英辞典、この辺はあって当たり前だが、そのほかにも、四字熟語や慣用句辞典。国語の学習教材として、「読めそうで読めない漢字」なんていうものもある。それにくわえること、「もっと読めそうで読めない漢字」や「やっぱり読めそうで読めない漢字」まで、ちょっとくどすぎっ、とつっこみたくなるくらいコンテンツが充実している。教科は国語と英語だけでなく、動画や画像もあり、理科や社会などの6教科14科目に対応している。

手書きパッド。達筆でなくてもしっかり認識

操作はタッチパネルとキーボード入力、手書きパッドと豊富。娘はキーボード入力は遅いが、任天堂DSのおかげでタッチペンの使い方は上手だ。このような子どもにとって使いやすいように工夫されている。

なかでも、「なぞって&タッチ」機能は便利だ。たとえば、英語の辞書で「business」を引くと、いくつか用例が出てくる。その中で、気になったものをタッチペンでなぞると、画面下に、「英語の音声を読み上げる」「マーカーを引く」「語句を別の辞書で調べる」など、いくつかの機能のメニューが出てくる。仮に「have a business deal with…」をなぞって、「読み上げ」機能を選択すると、ネイティブの発音で、音声を再生してくれるのである。しかも、5段階に速度が分かれているので、自分に合った速さを選ぶことができる。

スピーカーからネイティブによる英語読み上げが聞こえる

この電子辞書には「辞書」という名前が付いているが、どちらかというと学習教材といっていい。娘に試しに使ってみてもらったら、楽しみながら操作しているではないか。なんといっても、タッチペンを使うところが、ゲームっぽいのである。これならば、勉強が嫌いな子でも、興味を示すだろう。

紙には紙の良さがある

画面に直接メモを書き込んで保存したり、気になるところにマーカーを引けたりも。マーカーは5色あるので、種類ごとなどに色分けして使うと便利

電子辞書ってこんなに楽しいものだと知らなかったが、親としては紙の辞書の良さも娘に伝えたい。小学生の頃、私は意味もなく国語の辞書を引くのが好きだった。とくに調べたい言葉があるわけではないのに、辞書を無造作に開いて一人で喜んでいた。たとえば、「背骨」という何でもない単語。
「せぼね[背骨] 脊柱を組み立てている骨」
辞書の説明が加わると、どことなくおかしいのである。ついつい時間を忘れて、一人で辞書と遊んでいた。

娘は時間があると、ゲームをするか、本やマンガを読んでいる。電子辞書もお気に入りのようだが、親としては紙の辞書も気に入ってほしいという気持ちもあるので複雑だ。それはそうと、電子辞書に話を戻すなら、次回はもう少し詳しく、機能について触れてみたいと思う。

イラスト:YO-CO