精米機を使う楽しみはもうひとつある。それは精米によってできる「ぬか」の利用だ。「ぬか」といえば、せいぜい私は「ぬか漬け」くらいしか、使い道を知らなかったが、調べてみるとあまりにもいろんなことに使えるので驚かされる。たとえば、ハンバーグやジュースなどの食材として使うのなら納得だが、掃除のときに木目のツヤだしとして使うとか、釣りのえさといった遊びにまで利用できる。
ところで、「いりぬか」というものをご存じだろうか。私は今回この精米機の取扱説明書を読んで初めて存在を知った。フライパンに「ぬか」を入れ、弱火でから煎りすると「いりぬか」ができあがる。50gの「ぬか」ならば、約10分でできあがる。取扱説明書には、この「いりぬか」を牛乳やトマトジュースに混ぜて飲む方法や、カレーやクッキー、きな粉などに混ぜるといった利用方法が紹介されている。もともと「ぬか」は玄米からできている。栄養豊富だといわれている玄米にある栄養素がたくさん含まれているところが魅力だ。料理に混ぜるというのも納得できる。
ぬかを利用した一品に挑戦
この際だから、ぬか床に挑戦して手づくりの漬物を娘に食べさせてあげようかとも思ったが、なにぶん私はぐうたら主婦なんである。ぬか床をつくるには、手間がかかる。ぬか床をこしらえたら、朝夕1回づつ底から混ぜなければならないし、捨て漬け用の野菜を準備して、あれこれ1週間以上、漬けたり寝かしたりしなければならない。日にちがかかるので取り組んでいたら、この原稿の締め切りに間に合わないではないか! ということで、手順書を見ただけでくじけてしまった。でも、おいしい漬物が食べたい。ということで、短い時間でできる「簡単ぬか漬け」に挑戦することにした。
こちらは、「いりぬか」をつくったら、冷ましてポリ袋に入れる。そこへ塩もみした野菜を入れておしまい。あとは、朝夕一回ずつ、ポリ袋をあけて、中に空気を送り込むようにしながらポリ袋をもむ。野菜を入れた直後の「ぬか」は乾燥した粉の状態だったが、そのうちに野菜から出た水分と混ざって、しっとりとしてくる。最低3時間程度でも漬かるらしいが1日置いて食べてみた。自分でいうのも恐縮だが、かなりおいしい。味見のつもりで一口食べたら、止まらない。あっという間に食べきってしまった。
ここに紹介しただけでなく、まだまだたくさん「ぬか」は使い道がある。タケノコのアクとりのほか、布袋に入れて廊下や机などを拭くとツヤだしにもなるし、水に浸すと速効性肥料ができあがる。初めて、ぬか受けにたまった「ぬか」を目にしたときは、邪魔くさいので捨ててしまおうと思ったけれどもったいないことだった。
難点はお手入れ
お米には白米と玄米の間に位置するものもある。「ぬか層と胚芽」をどれだけ取り除くかでその呼び名は変わってくる。収穫したお米のもみ殻部分だけを取り除いたものが玄米で、そこから「ぬか層と胚芽」を約3割取り除いたものを3分づき、取り除く割合によって、5分づき、7分づきと呼び名が変わっていく。3分づきの米を炊いてみたが、こちらも精米したてだからだろう。ふっくらと炊くことができた。
精米にかかる時間は白米5合で約8分(50Hz)。1合なら、あっという間に終わってしまう。3分づきと5分づきは白米よりも少しだけ時間が短い。米の銘柄によって、時間は前後するようだが、いずれにしろそんなに時間はかからない。
いいことだらけの精米機だが、一つだけ面倒くさいことがあるとするなら、それは「手入れ」である。一日に一回、内部の手入れをしなければならない。本体の前面に取り付けられた点検パネルを外して、中の部品などを引き抜き付着した「ぬか」をブラシで落とす。部品を外すとき、中に残っていた米や「ぬか」があたりに散るのでシートを敷いておくといい。これらの操作が面倒くさいからといって、手入れをしないでいると、夏場に虫がわくこともあるという。
しかたがないので、パネルを外して内部を分解してみた。精米スクリーンセットという部品があるのだが、外すときに両脇のレバーを中に寄せることに気づかず試行錯誤した。もちろん、取扱説明書には細かく書いてあるので、後から思えばよく読めば苦労はしなかったわけだ。一回目はよくわからないまま終わったが、二回目以降は勝手がわかってきて、すんなりいくようになった。付属品のブラシで払えば、手入れは数分で終わる。とことんおいしいご飯にこだわりたい人は、手入れが面倒くさいかもしれないけれど、ご飯を炊くときは毎回精米するのを習慣にするのもいいのではないだろうか。
イラスト:YO-CO