おかげさまで連載101回を迎えることができた。記念の第二弾は省エネ家電の代表格、冷蔵庫である。エアコンと同様、価格が高いものほど、省エネの効果が高くなっている。理由は断熱材などの熱を逃がしにくくする素材にお金をかけられるからのようだ。小型の冷蔵庫にも省エネ効果の高い部品を搭載することはできるが、結局値段が上がってしまうので小型冷蔵庫の「価格が手ごろ」という魅力が半減してしまうというのだ。
ヨドバシカメラ マルチメディア Akibaの"家電コンシェルジェ"下地さん |
今回もエアコン編にひき続き、東京・秋葉原のヨドバシカメラ マルチメディア Akibaの家電コンシェルジェ・下地浩介さんに店内を案内していただいた。
下地さんがまず紹介してくれたのは、500L前後の容量での省エネおすすめモデル、パナソニック トップユニット冷蔵庫「NR-F503TE」(501L)である。真空断熱材を厚くし、断熱能力を高め、年間消費電力量350kWh/年という実績を誇っている。ただし、パナソニック以外のエコ性能が劣るのかというとそうでもない。容量が400L以上のクラスはほとんどがエコポイント対象の基準をクリアしている。どのメーカーの冷蔵庫も一定の省エネに関する機能は完備しているのである。では、家庭でもできる、冷蔵庫の省エネ法はどこにあるのだろうか。
「省エネの効果が高いものを選ぶのなら『年間の電気代の目安』を比較するといいです」と下地さん。エアコンと同様、それぞれの商品には電気代のプレートが貼られている。これを目安に購入するのがよいようだ。さらに、究極の省エネアドバイスとして、下地さんが言うには、「省エネを意識するなら、冷蔵庫の中にモノを詰め込みすぎずに、ゆとりをもって入れることが大切です。物が詰まっていると、庫内の冷気が充分循環できません」。
耳が痛い。要するに、こまめに冷蔵庫の中を掃除してきれいにしておくこと。これが省エネのコツだなんて! 賞味期限が切れた調味料で一杯になっているぐうたら家の冷蔵庫。一番の問題はここにあった。反省である。
省エネの次に大切な機能は冷凍
冷蔵庫の売れ筋は容量が450L、500L前後のものだという。400L以上の冷蔵庫も、「400L未満のものと同じシリーズなら価格に大差はない」と下地さんは言う。その理由は、冷蔵庫に限らず、売れ筋はメーカー間の競争が激しくなる。したがって、売れ筋の450L、500リットル前後の冷蔵庫はワンランク下のクラスと比べて価格が割安でおトク感がにじみ出るように設定されているという。もう一つの理由はエコポイント。401~500Lのエコポイントは9000、対する251~400Lは6000と3000ポイント差がつく。しかも、先に説明した通り、大きいほうが中がゆったりとするから節電にもなるのである。
省エネを意識して冷蔵庫を選ぶなら、結論は「電気代の目安」を見て選ぶが一つ。あとは、モノを詰めすぎないように使い方を注意することが大事なのである。さらには、容量は大きいほうが従来モデル比で省エネ効果が高い。以上が商品を選ぶ大きなポイントだという。省エネという点では、メーカーごとに大きな違いはなさそうだ。むしろ、具体的にどの大きさにするのか、設置場所との相談になっていく。売り場一杯に並んだ冷蔵庫。では、どれをどの基準で選んだらいいのか。
省エネ以外のポイントで選ぶなら、メーカー、機種ごとに力を入れている点を基準に選ぶのが一つだ。ぐうたら家のように家事手抜きに積極的な家は、「冷凍」は重要な機能だ。冷凍は各社とも、力を入れている点の一つだが、白眉は三菱電機の「瞬冷凍」機能だ。「この機能を求めて指名買いをされるお客様もいらっしゃいます」(下地さん)、というくらい人気の機能である。
家で肉を凍らせると、解凍時に水が出ることがよくある。これは従来の冷凍方法が食品の表面に冷気を吹きかけ、表面から凍らせることに原因があるという。三菱電機は赤外線センサーによるコントロールを駆使するなどして、食品を芯から均一に凍らせている。食品の細胞破壊を抑えて、おいしく冷凍させているのである。解凍時にうまみと食感が失われないのは、この「微粒子凍結」という技術のおかげだ。この機能は545Lの「MR-E55P」などのモデルに搭載されている。
野菜室は上か下か
実は、ぐうたら家では、冷蔵庫の庫内をめぐって冷たい戦いが勃発している。主婦の多くは、夕食のメニューを考えるとき、冷蔵庫をのぞく。中にある食材を利用して、夕食のメニューを組み立てる人が珍しくない。ジャガイモとにんじん、しらたきがあったら、肉じゃがにしよう。そこで、肉がないから買い物では肉を買おう、となるのである。冷蔵庫をチェックして、買い物に行くことは珍しくない。調理をこまめにする人はいちいち冷蔵庫の中を見なくても、在庫状況が頭の中に入っているだろう。しかし、ぐうたら主婦の場合、頻繁に野菜室を開けないので、特に野菜については何が残っていたか記憶があやふやなのである。しかも、在庫チェックは、冷蔵室と野菜室の両方を開けなければならない。面倒なのである。
東芝 鮮度名人「GR-A56R」 |
そこで、いつからか、野菜も肉も冷蔵室に入れるようになった。そうすれば、牛乳やバター、おやつなど、通常の用途で冷蔵庫を開けるたびに食材の在庫状況が自然と把握できるようになるのだ。在庫チェックは冷蔵室を開けるだけ、一手間で終わる。さらには、日持ちのしないフルーツも冷蔵室にあれば、目に付くので食べ忘れることもなくなった。自分では良いアイデアだと思っていたのだ。
しかし、ある日、冷蔵室に入れておいた野菜が下段の野菜室に移っていた。で、もう一度、野菜を上段に動かしてみた。が、しばらくするとまた下段に野菜が移動している。こ、これは、「野菜は野菜室に!」という家族の無言の抗議なのか。先日、懲りずにまた冷蔵室に野菜を移してみたら……。そんなわけで、ぐうたら家では、野菜の置き場をめぐる冷ややかな戦いが終わらないのである。
そんなぐうたら主婦がこれはいいと感じたのは、東芝の鮮度名人「GR-A56R」である。なんと、野菜室が冷蔵室の中にあるのである。東芝よ。私の気持ちをわかってくれてありがとう。いい会社だっ。そんな私の気持ちとは裏腹に、恐らく東芝としては、この冷蔵庫は野菜をたくさん調理に使うこまめな主婦を対象として設計しているのだろう。野菜を多く使う人にとって、野菜室が上にあり、しかもほかのものと一緒に取り出せるのはこの上なく便利なんである。決して、ぐうたら主婦のように在庫チェックが面倒な人を想定しているのではないと思う。が、いいのである。ぐうたらな人も、まめな人にとっても、便利な冷蔵庫なのである。
マイコミジャーナル価格情報(2009年6月5日現在)では、パナソニックNR-F503TEは154,345円~206,745円、三菱MR-E55Pは162,981円~214,565円、東芝GR-A56Rは182,397円~230,000円である。各社とも、さほど価格は変わらない。購入の際には、省エネ性能と合わせて、自身の生活スタイルに合ったものを選べばいいのである。ということで、次はいよいよ、地上デジタル放送対応テレビ売り場に行く。
イラスト:YO-CO