次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第8回は「蘭州ラーメン」。
蘭州(らんしゅう)ラーメンって何?
蘭州ラーメンとは中国・北西地方の蘭州という土地で発祥した麺料理。中国は漢民族が大多数を占めるが、蘭州エリアは民族が違ってイスラム教徒が多く、イスラム教では禁忌とされている豚肉を一切使わない、牛骨のスープや牛肉スライスがのった麺料理のこと。
現在では中国全土に蘭州ラーメンの店が5万軒あるとも言われ、蘭州人なら1日1回は必ず食べるようなポピュラーなラーメンだ。蘭州人のソウルフードである蘭州ラーメンだが、中でも100年の歴史を持つ老舗で、中国全土で20店舗前後を展開している名店「馬子禄 牛肉面(マーズルー ぎゅうにくめん)」が、2017年8月に日本初上陸し、大行列ができたことで、日本でも最近、蘭州ラーメンが注目を集めているのだ。
中国の本店で修業した「馬子禄 牛肉面」(東京・神保町)の店長・清野烈氏によると、蘭州ラーメンは以下の5つを満たしたバランスのいい麺料理のことだという。
清……透き通った清湯スープであること
赤……ラー油入りであること
緑……パクチーや葉にんにくなどが入っていること
白……大根入りであること
黄……黄味がかった麺
蘭州ラーメンはどこで食べられる?
「馬子禄 牛肉面」は神保町駅から徒歩3分のところにある。今のところ同ブランドは1店舗のみ。
他には、池袋には「蘭州拉麺店 火焔山」や「極(ごく) 蘭州拉麺」があるようだ。横浜の石川町駅近くには「蘭州牛肉拉麺東珍味小籠包」という店もあるようだ。"蘭州ラーメン"でネット検索をしてみると、関東だけでもいくつか店はあるようだ。
蘭州ラーメンを食べてみた
同店ではメニューは「蘭州牛肉面」(税込880円)1種のみで、麺は3種類(細麺・平麺・三角麺)から選べる。初心者にはスタンダードな細麺がおすすめだという。スープとの絡みがよい麺好き派には三角麺もおすすめ。他にパクチー大盛り(プラス税込120円)や牛肉大盛り(プラス税込200円)、パクチー抜き、ラー油抜きでも注文できる。
まずはスープから。数十種類の漢方系スパイスが使われているらしく、スープの味は滋味深く、香ばしい旨味が広がる。牛骨スープなので、豚骨のような脂っこさはなく、さらりとした軽いおいしさでまったくクドくない。パクチーや自家製のラー油、葉ニンニクをかき混ぜると、より本場の味に変身。ほどよい辛味とパクチーの香りが、牛骨スープにとてもよく合う。
次は注文ごとに手打ちにした麺。客席からはキッチンが見えるので、待っている間も、職人が麺を伸ばしたり、器用に手早く絡めたりするシーンを興味深く楽しめる。今回はスタンダードな細麺を注文してみたが、よく見ると機械製造の麺と違って、麺の太さは画一的でなく、やや太いものや細いものもある。これがまた手打ち感たっぷりで、味わいがあっていい。
麺をすすると、細麺ながらすごいもっちり感! 食感の美味しさにまず驚き。噛んでいくと、じんわりと麺の旨味と牛骨スープの旨味が口いっぱいに広がっていく。口休めで味わう大根も素朴な味わいで癒される。あっという間に1杯を平らげてしまった。おでこがじんわりと汗ばみ、食後の爽快感も◎。エプロンを用意してくれるので、ラー油が洋服に飛び跳ねる心配もなく、存分に麺をすすれる。
蘭州ラーメンの独特の味はクセになる美味しさ。ベトナム料理のフォーにも似た軽さながら、旨味はラーメン並み。漢方入りなので、二日酔いの朝などにもオススメだ。同店の蘭州ラーメンはかなり本場風らしく、中国人客なども多かった。そして基本的にヘルシーなので、年配の方や女性のおひとり様なども多かった。
同店は現在もピーク時は行列ができることもあるらしいが、平日の11時台もしくは13時30分以降などであれば、比較的待たずに入店できるという。週末なら13~15時までが狙い目だそう。筆者にとっては、ご近所にもできて欲しい! と切望する店であった。
話題の蘭州ラーメン、まだ食べてない方も、中国で一度は食べたことがある方も、この機会に試してみてはいかが? まったく新しい麺ワールドに出会えるはず。