次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第57回は「非接触飲食店」。
「非接触飲食店」って何?
コロナウィルス感染対策で人との接触を極力減らしたいという人々が増えている中、最近注目を集めているのが入店から退店まで店員と対面せずに外食が楽しめる“非接触飲食店“だ。お料理が回転レーンやロボットによって届けられたり、アプリを活用した非接触のオーダー、無人の会計システムなど、非接触店舗には様々な仕掛けが用意されている。「コロナ禍でも外食を楽しみたい、でもできるだけ安全に!」と望む人々のニーズを掴んでいる。
「非接触飲食店」はどこにある?
最近では大手ファミレスなどでも自分で会計ができる無人会計システムを取り入れるようになってきた。回転すしチェーン「スシロー」では国内580店舗のうち278店舗において、専用アプリから予約ができ、店員と対面せずにスムーズに座席まで到着できる自動案内を導入している。無人のセルフレジは全店舗で導入。また112店舗にて、テイクアウト用の温度管理された専用ロッカーがある。(3月15日時点)
さらに、コロナ禍で打撃を受けている居酒屋業態の1つである「和民」は、昨年10月、既存の居酒屋業態120店舗を焼肉の新業態「焼肉の和民」に業態転換すると発表した。各席に備え付けのタッチパネルで料理をオーダーすると、特急レーンに乗って料理やドリンクが運ばれてくる非接触型システムだ。
1号店となる「焼肉の和民 大鳥居駅前店」(東京・大田区)では、業態転換後に居酒屋業態時と比較して前年売上比283%を記録したと発表して話題にもなった。従来の4人席のテーブル席に加え、半個室の カウンター席も備えており 、気兼ねなく“ひとり焼肉”も楽しめる。非接触の“ソロ活”焼肉も可能だ。
注文した焼肉メニューがまるで回転寿司店のようにレーンに乗って運ばれてくるだけでも新鮮な体験だが、さらに配膳ロボットも導入。(大鳥居店、王子店、名駅4丁目店、南海難波駅前店、明石駅前店、調布南口店、梅田茶屋町店、志村坂上店、池袋西武東口店など13店舗、3月15日時点)。ロボットがスタッフの代わりに客席まで料理を運んでくれる近未来的な風景まで楽しめる(冒頭の写真)。
「非接触飲食店」で味わってみた
さっそく非接触飲食店を訪問!今回は回転寿司チェーン「くら寿司」へ。全国474店舗(2月末時点)を展開している「くら寿司」は、2020年11月より入店から退店まで店員と対面せずにお客様へサービス提供できる「非接触型サービス」をスタート。現在は、既存店も含め国内約150の店舗が非接触対応になっている。2021年の年末までには全店へ「非接触型サービス」を導入予定だ。
まずお店に行く前にスマホに同店の専用アプリをダウンロード。さっそく最寄りの店の空席状況を確認したら、週末の夕刻はすでに満席で予約ができなかった。近所に「くら寿司」があることは知っていたが、実はその店舗にはまだ一度も行ったことがなく、「こんなに人気があったとは!」と驚いた。平日に再トライしてみると、空いている時間がたくさんあってひと安心。
アプリの予約画面では希望店舗と人数、希望時間を選ぶだけで、1分もかからずに予約完了。指定された時間に入店すると、予約時の番号を入力する機械が入り口すぐのところに設置されており、数字を入力すると自動的にテーブル番号が書かれたシートが印刷されて出てきた。
もはや入り口に店員すら出迎えておらず、「いらっしゃいませ!」という声が店内から聞こえるだけ。誰とも接することなく、完全にコンタクトレスで自分のテーブルまで到着できた。コロナ前は頻繁に見られた行列店で待つ風景が、これからは見られないどころか、“行列店”という言葉すら死語になるのかもと感じた。
客席では通常卓上に置いてある醤油やガリ、箸などは全てテーブルの下にコンパクトに収納されていて、見慣れない風景にまた驚いた。確かにこれなら前の人が触ったであろう醤油も、清掃後にしまわれたキレイなものなので安心だ。
オーダーは従来通り客席のタッチパネルでもできるし、自分のスマホのアプリからも注文できた。アプリ注文の場合は店に到着する前から予約オーダーまでできるようになっていた。例えばお腹を空かせたお子さんがいる家族連れなら、着席してすぐに一皿目がレーンで運ばれてくるのでかなり助かるに違いない。お父さんの最初の乾杯ビールも、着席後すぐに提供されるので、夏場などは特に喜ばれるだろう。
レーンを回っている寿司やスイーツには透明のクリアケースがかぶせてあるが、これも非接触。レーンの皿の端を引っぱると自然とクリアケースが上に開き、ケースを一度も触らずに取り出せた。食べ終えた皿は客席に備えつけられた皿専用の返却口に投入。センサーが感知して、自動的に皿の枚数がカウントされ、タッチパネルに表示された。
従来の寿司メニューだけでなく、ラーメンやタピオカミルクティーなどのカフェメニューも充実している「くら寿司」なので、あっという間に満腹に。タッチパネルの会計ボタンを押すと、食べたお皿の枚数を自動でカウント。タッチパネルに合計金額が表示された。受付時に取ったテーブル番号のシートを持って無人のセルフレジコーナーで自分で清算。退店まで一度も店員と対面することなく外食が楽しめ、新しい体験が楽しめた。
もともと外食業界では人材不足に悩む飲食店が多かったが、コロナ感染対策の一環で、無人システムやロボットの導入が加速。コロナ前なら接客の少ない外食を「味気ない」と感じたかもしれないが、今となっては「外食できるだけでも嬉しい!安全なのが良い!」に人々のマインドは変わりつつある。できるだけ感染リスクの少ない非接触の飲食店でwithコロナ時代を楽しく過ごそう。