次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた? 」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第47回は「ゴーストレストラン」。
「ゴーストレストラン」って何?
最近増えている「ゴーストレストラン」とは、実際の店舗を持たない飲食店のこと。注文はUberEatsや出前館などフードデリバリーサービスで受け付けている。
以前からあるピザや寿司などの出前専門店は、実店舗があるところが多く、直接店舗に注文できたり、希望すれば店頭受取もできたりする。一方、ゴーストレストランは、キッチンを複数の店舗で共有するシェアキッチンなどで調理をおこなっているため、看板もなく、フードデリバリーサービスを利用した宅配に特化しているのが大きな違いだ。
ゴーストレストランは数年前からアメリカ・ニューヨークでブームとなっていた。通常のレストランとは違い、駅前や路面のような集客しやすい立地にこだわる必要がなく、内装費も抑えられるのが特徴だ。複数のゴーストレストランを並行して運営すれば、家賃や固定費をさらに抑えることもできる。
最近は日本でもゴーストレストラン向けのシェアキッチンが増加中。コロナ禍で外食を控える人も多いことも追い風となり、ゴーストレストランが急増している。
「ゴーストレストラン」はどうやって利用できる?
Uber Eatsや出前館などのアプリをチェックしてみれば、「住所は近所になっているが見たことがない」という店名を目にすることがあるだろう。ホームページをチェックしてみれば、それが実店舗のないゴーストレストランだとわかる可能性も高い。
カフェからホテルレストランまで幅広いジャンルの店舗運営をおこなっているトランジットジェネラルオフィスでは、今年6月に東京・恵比寿エリアにゴーストレストラン「Pacific DRIVE-IN 恵比寿店」と「テリヤキ食堂」をオープンさせた。
「Pacific DRIVE-IN 恵比寿店」はハワイアンプレートランチを提供する人気店「Pacific DRIVE-IN」の第3号店。鎌倉・七里ガ浜と新宿に実店舗があり、ゴーストレストランという形態は今回が初めてだが、実店舗のファンからも「恵比寿エリアで注文ができる」と好評だという。一番人気は「ガーリックシュリンププレート」。プリプリ食感の大ぶりなエビにパンチのきいたガーリックで味付けをしたハワイ気分になれる一品だ。
同じく恵比寿エリアで注文可能な「テリヤキ食堂」は、堀江貴文氏がプロデュースする検索グルメアプリ「テリヤキ」とコラボしたカレー店。「インドでも欧風でもない、ニッポンのカレーの新しいカタチ」を目指し、サバ出汁や煮干し出汁を使った新感覚のカレーを提供している。たとえば「NIBOSHIカレー」は、煮干しと鶏ガラの旨味がきいたカレーだれに、煮干しオイルで香りづけした平打ち麺をからめて食べるもので、トッピングとして和牛のチャーシューとターメリックと魚醤で煮込んだ煮卵がのっている。「中華麺で食べるカレーが新しい」と評判だ。
いずれも恵比寿エリアということもあり、利用者は30代が中心。ゴーストレストランを増やしている理由を聞くと、「新型コロナウィルスの影響で、“実店舗の利用が難しい”、“外出するのは気が引ける”などと考えている方が多くなってきたことが理由の一つです」と同社広報の飯島大輔さん。調理場所には恵比寿にある同社が運営している店舗「THE TEST KITCHEN」を使っているそうだ。
「ゴーストレストラン」を利用してみた
今回は、全国に30店舗(2020年9月末現在)を展開しているゴーストレストラン「究極のブロッコリーと鶏胸肉」を利用した。以前、Uber Eatsアプリにて近所で注文できる店舗を探したとき、ユニークな店名が気になっていたのだ。
店名のとおり、メニューは茹でた鶏胸肉とブロッコリーのセットのみという潔さ! サイズは、お試しの150gから最大1500gまで150g単位で選べる。
今回は1人分の300gを選択。ドレッシングはシンプルな塩コショウ(粉末)にした。通常は温かい状態で届くが、お好みで「常温にする」を選んでオーダーすることもできる。
食べてみて驚いたのが肉の食感だ。鶏胸肉というとパサパサしている印象があるが、驚くほどしっとりやわらか。ブロッコリーは、適度に歯ごたえを残した絶妙な茹で加減。塩コショウをかけると、さらに素材のうまみを感じた。シンプルなメニューだからこそ、自分で調理したときとの違いがよくわかる。300gは1人分の標準サイズだが、かなりボリュームがあり、満腹になった。
同店のコンセプトは「ストイックな低糖質食を、誰もが美味しく食べられるように」。それを実現する方法として、栄養的にすぐれたブロッコリーと鶏胸肉を選び、味を追求した。多くの人に継続して食べてもらうには、2020年現在ではゴーストレストランという形態が最適だと考えたそうだ。
「1回食べて美味しいのではなく、継続して食べられることを重視した味付けにしています。もっと肉々しく仕上げることもできるのですが、薄味で毎日でも食べられるように工夫しました。ドレッシングは8種類用意しており、毎日味を変えて食べられます」と究極のブロッコリーと鶏胸肉代表の塚本洸介さん。
ドレッシングは、塩コショウ・カロリーハーフマヨネーズ・ポン酢・和風おろし・旨しお・七味マヨ・ごま・チリの8種類。リピーターの多くは最終的にはシンプルな塩コショウに落ち着くそうだ。
ちなみに客の50%近くがリピーター。多いのは20~30代だが、10代の学生や60代以上と思われる人まで幅広い層から注文があり、意外にも女性が6割程度を占める。ランチやディナータイムはもちろん、夜食としてのニーズもあるようで、夜中にも一定の注文が入るという。
コロナ禍でも気軽に利用できるゴーストレストラン。テレワーク等で外食機会が減っている人は、ゴーストレストランを利用して平日の自宅ランチに変化をつけるのもいい気分転換になるはず。
※価格は特記がない限り税込、サービス料および配送手数料別