次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた? 」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第38回は「麺なしラーメン」。

  • 「わかめラー まさかの麺なし ごま・しょうゆ」。驚きのわかめの量!

「麺なしラーメン」って何?

ここ数年のヘルシー志向を背景に、「麺なしラーメン」が増えている。麺なしラーメンとは、その名のとおり、麺がないラーメンのこと。麺がなければもはやラーメンではなくスープでは? という人もいるだろう。一般的なスープとの大きな違いは、味のベースがラーメンのスープである点だ。そのため食べたあとの余韻は、「スープを飲んだ」というより「ラーメンを食べた」感じに近い満足感が得られるようになっている。

なお、実際はラーメンのみならず、ちゃんぽんなどの“麺なし”商品も登場している。カップ麺やコンビニ商品のほか、ラーメン専門店のメニューに並ぶこともあり、麺料理が好きだがカロリーや糖質が気になる人、お酒を飲んだあとに罪悪感なくラーメンを食べたい人などから人気を集めている。

「麺なしラーメン」はどこで食べられる?

セブン‐イレブンでは、今年1月から「1/2日分の野菜! 具たっぷり鶏味噌鍋」を販売。商品名として「麺なし」を謳ってはいないが、味噌ラーメンの麺なしバージョンとして位置付けているそうだ。幅広い男性に好まれる商品を開発しようと考える中で、男性に人気が高い味噌ラーメンのスープの味付けに着目したという。

  • セブン‐イレブン「1/2日分の野菜! 具たっぷり鶏味噌鍋」(460円※一部取扱いのないエリア、別規格エリアがあります)

麺がなくても満足感のあるボリュームにするため、肉をたっぷり入れ、さらに野菜も1日に必要な量の1/2が摂れるようになっている。具材は、鶏肉、キャベツ、大根、玉ねぎ、にんじん、ごぼう、こんにゃく、油揚げと盛りだくさん。これで214キロカロリーというのもうれしいポイントだ。

「加熱した味噌を使用し、風味やうまみをより感じられるようにしました。少量のラー油を使用することで、食べ進みが良く、お酒との相性も良い商品にしています」とセブン&アイ・ホールディングス広報センターの北澤晴奈さん。

実際に購入した人からは、「量が多くて低カロリーでうれしい。ダイエットにも使える」などの声が届いているとのこと。ダイエット向けの商品というと薄味のものもあるが、この商品はしっかりした味付けなので満足度も高い様子。また、1食あたりのタンパク質が30gあり、低脂質・低糖質のわりに高タンパクなので、体を鍛えたい人からも好評だとか。

外食店のメニューも紹介しよう。長崎ちゃんぽんの専門店リンガーハットでは、「野菜たっぷり食べるスープ」を2015年から販売している。これは同店の人気商品「野菜たっぷりちゃんぽん」のちゃんぽん麺なしバージョンで、「野菜たっぷりちゃんぽん」と同じく野菜がたっぷり。7種類計480gの国産野菜が使われている。

  • リンガーハット「野菜たっぷり食べるスープ」(700円※店舗により価格が異なる場合があります)

麺なし商品を開発した理由は、「麺よりも国産野菜をおいしくたっぷり食べたい」という客の声に応えるため。開発当時、店頭では「野菜たっぷりちゃんぽん」を注文した客から、「麺半分」や「麺抜き」といった特別な注文が入ることも少なくなかったという。

「麺なしで野菜とスープをおいしく食べていただくために、通常のちゃんぽんのとんこつベースのスープに、生姜ドレッシングの酸味を加えたとろみのあるスープを新たに開発しました。野菜によく絡み、麺なしでもおいしく野菜を召し上がっていただけます」(リンガーハット広報チーム武田麻莉子さん)

同商品はテイクアウトも可能なので、おうち時間のお供にもおすすめだ。

「麺なしラーメン」を食べてみた

今回食べてみたのは、カップ麺の麺なし商品。エースコックから今年4月に発売された「わかめラー まさかの麺なし ごま・しょうゆ」である。

  • エースコック「わかめラー まさかの麺なし ごま・しょうゆ」(193円)

1983年発売のロングセラー商品「わかめラーメン」から麺をなくし、その分わかめをたっぷり(通常商品の4.5倍量)入れたこの商品。商品名のとおり、「まさかの」と思わせる商品だ。

カップを開けてみると、わかめと粉末スープの袋が入っていた。それぞれ袋を開けてラーメンと同じく熱湯を入れて3分待つと、冒頭写真のようにスープが見えないくらいたっぷりのわかめが! 第一印象では容器のわりに中身が少ない気がしたが、水分を吸って乾燥わかめが思いのほか膨らんだ。

食べてみると、おなじみのわかめラーメンの味で、麺こそ入っていないが、まさに「わかめラーメン」を食べている気分。わかめの量はかなり多いが、魚介のうまみがきいたスープとの相性が抜群によいので、最後まで飽きない。わかめのほかに、コーン・メンマ・ゴマも入っていて味や食感のアクセントになっている。驚いたのが、麺なしとは思えない食後の満腹感。それでいて1食わずか59kcal(通常のわかめラーメンは338kcal)とはうれしいかぎり。

それにしても、ずいぶんと思い切った商品を開発したものだと思う。そんな思いをメーカーにぶつけてみると、「今までわかめラーメンを知らなかったお客様にもわかめラーメンの“良さ”や“らしさ”を伝えるにはどうすればいいのかと考えた結果、商品特長の変化でもなく強化でもなく、“わかめラーメンのアイデンティティの究極化”だ! と思い、わかめに特化した商品にしました」(エースコックマーケティング部佐藤芳典さん)とのこと。

開発にあたっては、オリジナルと同じ「味」、麺なしでも満足できる「量」、そして通常商品との買い間違いが起きないことに注意しながらもブランドらしさを出す「デザイン」にこだわったそうだ。パッケージには大きく「麺なし」の文字があり、買い間違いはしづらい。わかめラーメンのロゴから「メン」の文字を取り除いたデザインに合わせて、商品名も「わかめラー」にしたそうだ。

ターゲットは、SNSでの情報発信などに積極的な20~30代の男女。SNSでは発売前から「食べてみたい! 」など反響があり、発売後にも多くのSNS投稿がされている。「カップからあふれんばかりのわかめのボリュームを見た目でも味わいでも楽しんでいただき、SNS等でみんなにシェアして話のネタにしてもらえればと思います」と佐藤さん。

老若男女に愛されるラーメン。食べたいけれどカロリーや糖質が気になる、そんなときは麺なし商品をうまく活用して、「食べたい」欲求と食生活のバランスをうまく図ってみては。

※価格は特記がない限り税別