次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第23回は「フラットホワイト」。
「フラットホワイト」って何?
ここ数年、新しいラテの楽しみ方としてじわじわ人気が高まっているのが「フラットホワイト」。エスプレッソにミルクを入れたドリンクで、イメージとしてはカプチーノやカフェラテに近い。
カプチーノもカフェラテもフラットホワイトも、エスプレッソの上にスチームドミルク(温めたミルク)を注ぎ、さらにフォームドミルク(泡立てたミルク)をのせたもの。違いはそれぞれの割合にある。
一般的にカフェラテのほうがカプチーノよりフォームドミルク、すなわち泡の部分が少ない。フラットホワイトはカフェラテよりもさらに泡が少なく、ミルクに対するエスプレッソの割合が高めなのが特徴だ。そのため、スチームドミルクのクリーミーさやエスプレッソのコクをより感じやすいといわれる。ただ、実際にはそこまで厳密な定義があるわけではなく、エスプレッソとミルクの割合などは提供店によって差がある。
もともとフラットホワイトはオーストラリアやニュージーランドでポピュラーな飲み方だったが、近年その人気がヨーロッパやアメリカへ飛び火。最近は日本でも知名度が広がりつつある。ちなみにフラットホワイトという名前の由来については、"ホワイト"はミルクを指し、"フラット"は泡が少なく平らであることから名付けられたというのが一説だ。
「フラットホワイト」はどこで飲める?
日本でもコーヒーショップのメニューにフラットホワイトを見かけることが増えてきた。最近ではタリーズコーヒーやマクドナルドのリッチなマックカフェブランド「マックカフェ バイ バリスタ」(店舗限定)にも「フラットホワイト」がメニューとしてある。
ローソンのマチカフェ展開店舗で2019年5月から発売されている「ダブルエスプレッソラテ」も、名前こそ違うがフラットホワイトをイメージしたものだ。通常のカフェラテよりエスプレッソの量を2倍にしたもので、しっかりとした苦みがある。ミルクの余韻はすっきりと、苦みの余韻が全面に出てくるのが特徴だ。味わいをイメージしやすくするため、フラットホワイトではなく「ダブルエスプレッソラテ」というネーミングを採用したという。
「カフェラテに対するお客様の嗜好調査によると、1位ミルク感、2位コク・余韻、3位クリーミーさ、4位コーヒー感という結果となっており、ミルク感を求める人とコーヒー感を求める人に二分化している傾向にあります。そこで従来のミルク感の強いカフェラテのほかに、コーヒー感を求める方にも満足いただけるようなカフェラテを提供したいと考え、ダブルエスプレッソラテを発売しました。しっかりとコーヒーの味わいを楽しみたいという人から好評です」(ローソン広報室 杉原弥生さん)
自宅で「フラットホワイト」を楽しめる商品も登場している。ネスレ日本では2019年9月から、お湯を注ぐだけで飲めるスティックタイプの「ネスカフェ ゴールドブレンド 濃厚フラットホワイト」を販売している。
同社ではフラットホワイトを「エスプレッソタイプのコーヒーをベースに、なめらかな泡でミルクがたっぷり入ったクリーミーな味わいのコーヒー」と定義しており、カプチーノやカフェラテの特徴である"ミルクの泡"より、なめらかな"ミルク感"を楽しめる商品に仕上げたそうだ。
すでに2018年10月にカプセル式本格カフェシステム「ネスカフェ ドルチェ グスト」用の専用カプセルとして「フラットホワイト」を発売。「クリーミーな味わいが毎日のリラックスタイムにぴったりだと、特に30-40代の女性に好評です。今回発売したスティックタイプの『ネスカフェ ゴールドブレンド 濃厚フラットホワイト』も、ちょっと贅沢なカフェメニューを味わいたい30~40代女性をメインターゲットにしています」(ネスレ日本 飲料事業本部 都間友紀子さん)
ちなみにスティックタイプ製品の市場は年々拡大しているそう。共働き世帯の増加に伴い、忙しく過ごす人が増えたことを背景に、カフェで楽しむようなメニューを自宅やオフィスなどで1杯ずつ楽しめるという簡便性が評価されていると同社ではみている。
「フラットホワイト」を飲んでみた
今回はタリーズコーヒーの「フラットホワイト」を飲んでみた。2018年2月より販売されている同店の「フラットホワイト」は、同じサイズの「カフェラテ」よりもエスプレッソとミルクの量を増量したもの。
同店の場合、従来のカフェラテはエスプレッソショットを1ショット(30cc)使っているが、フラットホワイトはリストレットショットという20ccほどの凝縮したエスプレッソを3ショット使用。牛乳は約1.3倍使われている。
「南半球のカフェで提供されるフラットホワイトは、厳密なルールはありません。それぞれのカフェで、"うちのフラットホワイトはこれ"という色があるので、違いを楽しむのも味わい方のひとつだと思います。『フラットホワイト』は、タリーズコーヒーの素材と手作りへのこだわりを、よりダイレクトに知っていただきたいという思いから開発しました」(タリーズコーヒージャパン広報室 都丸未季さん)
飲んでみると、ひと口目からエスプレッソの苦みとコクがガツンとくる。同時にミルクのなめらかな口当たりやほどよい甘さも感じられ、新感覚の味わいだ。従来のカフェラテはミルクの主張が強いが、タリーズコーヒーのフラットホワイトはエスプレッソが主役という印象。素材の味わいがギュッと濃縮されており、濃厚で飲み応えがある。
商品はもともとカフェラテを好んで飲んでいた人やビジネスパーソンに人気とのこと。ほかにコンデンスミルクでほんのり甘みをつけた「ミルキーフラットホワイト」もある。
日本でも少しずつ、しかし着実にファンを増やしつつある「フラットホワイト」。コーヒーメニューの新たな定番となる日も近そうだ。