次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第13回は「オレンジワイン」。
「オレンジワイン」って何?
ワインといえば、赤・白・ロゼが定番だが、近ごろよく耳にするのが"オレンジワイン"。その名のとおり、オレンジ色のワインだ。
オレンジワインとは、白ワイン用のブドウを使って、赤ワインの製法で造るワインのこと。一般的に白ワインは皮や種を取り除いて果汁だけを発酵させるが、オレンジワインは赤ワイン同様に、皮や種も一緒に発酵させる。
東京・清澄白河にあるワイナリー「清澄白河 フジマル醸造所」でもオレンジワインを造っている。併設レストランの店長でソムリエの室谷統さんによれば、「オレンジワインは皮や種も発酵させるので、香りや味わいに複雑味や厚みが生まれ、白ワインにない渋みのような要素も出せるのが特徴です」とのこと。
ブドウの品種は、国や生産者によってさまざま。日本国内のワイナリーが造るオレンジワインにはデラウェアや甲州が使われることも多いそうだ。同ワイナリーのオレンジワインは造ってから比較的早めに飲むタイプが多いが、海外のオレンジワインの中には数年熟成させるものもあり、価格も1万円前後と高価なものもあるという。
なお、オレンジワインは最近生まれた新しい製法というわけではない。ワイン造り発祥の地といわれるジョージアではすでに数千年前から皮や種も一緒に発酵させてブドウを造っていた。赤ワインと白ワインで製法がわかれたのはもっと時代が下ってからだ。そんな伝統的な製法が、なぜ今話題なのか。
「1つ考えられるのが、世界的なオーガニック志向の高まりですね。オレンジワインの作り手にはナチュラルな造り方を好む人が多い傾向があります」(室谷さん)。
同ワイナリーもなるべく人の手を加えない自然な造り方でワインを造っているそうだ。
「オレンジワイン」はどこで飲める?
近ごろは都内のレストランやワインバーなどで、オレンジワインを提供しているところが増えており、飲むチャンスは多い。「清澄白河 フジマル醸造所」でも1階のワイナリーでオレンジワインを造っており、購入も可能。2階のレストランでは自社のものを含め、世界各国のオレンジワインを10種類前後提供。うち1~2種類はグラスでも楽しめる。
オレンジワインを飲める店が近くにない場合は、ネットで酒屋から取り寄せて自宅で楽しんでみてもいいだろう。エチケット(ラベル)のデザインがおしゃれなものも多いので、"ジャケ買い"感覚で選ぶのも楽しそうだ。ホームパーティなどで開ければ、見慣れないオレンジ色のワインに「何これ!?」と盛り上がるかもしれない。
「オレンジワイン」を飲んでみた
今回は「清澄白河フジマル醸造所」の2階のレストランで、同ワイナリーのオレンジワイン「Tabletop橙色」を飲んでみた。まず、白ワインとはまったく違う香りにびっくり! 味わいとしては、複雑な柑橘の風味や穏やかな酸味、自然な苦みなどが感じられ、単純に甘口・辛口などに分類できない複雑さ。ただ全体としてやさしくまとまっているので、飲みやすくスルスル飲めてしまう。
合わせる料理を選ばないのもオレンジワインの魅力だという。「オレンジワインは肉にも魚にも合うし、前菜や煮込みにも合います。和食にも合うと思いますよ。前菜の料理からメインの料理まで1本で通せる万能型ワインです。ぜひ気軽に楽しんでみてください」(室谷さん)。
今回は同店の前菜メニューにあったイタリアエミリアロマーニャ州の伝統的なソーセージ"コテキーノ"と合わせてみた。ケイパーやマスタードを利かせたラビゴットソースが添えてあり、キノコのコンフィや生ハムのチップがのっている。ボリュームや味わいに厚みがあるが、オレンジワインの味も決して負けていないし、逆に主張しすぎてもいない。ほのかなワインの酸味は、ソースの酸味ともよくマッチしている。
オレンジワインは、ワイン自体に味や香りの要素が多いから、幅広い料理に寄り添えるのだろう。ちなみに飲むときはそこまで冷やさずに飲む方が複雑味を感じやすいそうで、まさに今の季節にうってつけ。もちろん、冷やすのがNGということではないので好みの温度で楽しもう。
料理とのペアリングを考えなくてもおいしくのめるオレンジワイン。気軽にワインを楽しむきっかけにもなってくれそうだ。