アンチエイジングのためにチョコレートは食べておきたい

アンチエイジングのためにチョコレートは食べておきたい

全日本菓子協会などの調査によれば、2015年の日本人の年間チョコレート消費量は、1人当たり2.01kgでした。ドイツの11.7kg、スイスの10.2kg、ノルウェーの9.4kgと比較すると、日本人が食べているチョコレート量が少ないことがうかがえます。

チョコレートの原料であるカカオ豆は、紀元前2000年マヤ文明の頃から食べられていました。当時は王様や貴族など、限られた人しか口にできない貴重な飲み物で、「不老長寿の薬」として扱われました。チョコレート飲料は現代で言うエナジードリンクのような立ち位置で、一般社会で飲まれるようになってからも薬として扱われ、薬店や薬局で販売されていました。現代からは想像できないほど、かなり苦味の強い味だったようです。

1828年にオランダのバンホーテンがカカオ豆からココアを開発し、1847年に英国で固形チョコレートが製造され、飲むチョコレートから食べるチョコレートに変貌を遂げました。

災害備蓄食にチョコを用いる理由

このように長い歴史を持つチョコレート(カカオ豆)ですが、摂取によってさまざまなメリットが得られることがこれまでに明らかになっています。具体的に紹介していきましょう。

海外のホテルなどで、就寝時の枕元に「安らかな眠りのために」などのメッセージと共にチョコレートが置かれているのを見かけたことはないでしょうか。チョコに含まれるカフェインには眠気を覚ます作用があるため、一見すると矛盾しているように感じます。

実はチョコレートに含まれるテオブロミンや甘みには、「心身にやすらぎを与える」作用があるようです。災害備蓄食や軍隊の携行食(レーション)としてもチョコレートが多用されます。高カロリーでエネルギー補給に優れていることに加え、災害や戦場という緊張状態での「安らぎ効果」も期待されていると考えられます。そのほか、チョコレートには血圧を下げる作用や心臓病を予防する効果があることも近年の研究で解明されてきました。

アンチエイジング向きの成分が多く含有

ただ、女性にとって最もうれしいのはチョコレートのアンチエイジング作用ではないでしょうか。チョコレートにはカカオポリフェノールやビタミンB群、ビタミンE、各種ミネラルなど、さまざまなアンチエイジング成分が含まれています。

特に有名なカカオポリフェノール(ポリフェノール)は、植物の種が熟すまで動物に食べられるのを避けたり、紫外線を防御したりするなど、「植物自身の生体防御」作用を持っています。生物が生活をする際に絶えず曝されている「酸化ストレス(老化の原因)」からの防御や、コレステロールの酸化を防ぐなど、生活習慣病予防にも役立つことが研究で報告されています。

ポリフェノールと聞くと赤ワインをイメージしがちですが、実はチョコにも多く含まれています。各飲食物に含有されるポリフェノール量は、チョコ40gがそれぞれ赤ワイン1杯、お茶2杯、リンゴ4個に相当します。こうやって見ると、チョコが最も手軽に摂取できそうですよね。

また、ビタミンB群は肌の新陳代謝や脂分泌の調整などに関わり、ストレスや疲れ、肌荒れにもよいビタミンです。ビタミンEは強い抗酸化作用を持ち、活性酸素を撃退する代表的な「アンチエイジングビタミン」で、肌の乾燥対策にも欠かせません。

さらにチョコレートに含まれる各種ミネラルは、カルシウム(イライラ防止)やマグネシウム(疲れ・ストレス対策)、鉄(貧血・くすみ・冷え対策)、マンガン(骨の形成、糖質・脂質代謝)、セレン(活性酸素対策<抗酸化ミネラル>)、亜鉛(肌の新陳代謝)などがアンチエイジングに効果を発揮します。このように、チョコはまさに「アンチエイジングに適した食べ物」と言えます。

おやつ時に数個がベター

チョコレートは乳製品が含まれないカカオ40~60%程度のビターチョコレート(ブラックチョコレートやダークチョコレート)、乳製品を含むミルクチョコレートやホワイトチョコレートなど、非常に多くの種類のチョコレートが販売されているうえ、名称が統一されているわけでもありません。

カカオの含有量が高い製品は、身体に有益なカカオポリフェノールが多い一方で、高カロリーでコーヒー1~2杯分のカフェインが含まれていることがあります。食べすぎはカロリー摂取量の増加や不眠の原因ともなり得るケースがあるため、製品それぞれに違いはあっても、10時や15時などのおやつ時に数個を食べる食べ方がよさそうだと考えます。

次回は、「血管とアンチエイジングの関係」を書きたいと思います。

※写真と本文は関係ありません

筆者プロフィール: 倉田大輔(くらた だいすけ)

日本抗加齢医学会 専門医、日本旅行医学会 認定医、日本温泉気候物理学会 温泉療法医。

日本大学医学部卒業後に、形成外科・救急医療などを研鑚。2007年に若返り医療や海外渡航医療を行う池袋さくらクリニックを開設。「お肌やアンチエイジング」や「歴史と健康」などの講演やメディア出演。海上保安庁が行う海の安全推進活動への執筆協力や「医学や健康・美容の視点」から地域資源を紹介する『人生に効く”美・食・宿”』を執筆。東京商工会議所 青年部 理事。