連載「Google Earthで世界を巡る」、第3回はバルセロナ(Barcelona)編をお送りします。ガウディのサグラダ・ファミリア、メッシのバルサ(FCバルセロナ)、1992年のオリンピック……。スペイン第2の都市バルセロナは、芸術・文化・スポーツとさまざまな面で日本人にも馴染みが深く、観光客が多い街ですね。いまさら紹介するまでもないほどポピュラーですが、今回はグラナダから夜行寝台列車に乗ってきた延長で、バルセロナの有名スポットをGoogle Earthの画像とともに振り返ってみることにします。

バルセロナは人口約160万、近郊も含めた都市圏人口は400万を超えるという大都市です。地中海に面したスペイン北東部のこの地域は、「カタルーニャ」と呼ばれます。いわゆる「スペイン語」とはもともと首都マドリードを中心とした「カスティーリャ」地方の言葉で、カスティーリャ語と呼ばれることもあります。それに対してここバルセロナでは、そのカスティーリャのスペイン語とはまた異なるカタルーニャ語が使われています。スペイン語の方言というよりは、別の言語と考えたほうがいいかもしれません。街中の標識にもカタルーニャ語とカスティーリャ語の両方の表記が掲げられていて、マドリードやグラナダとはまたちがう街にやって来た実感を強くします。

まずはバルセロナの街全景をGoogle Earthにて。中庭を囲む四角い建物が目立ち、空から見ても美しい街だ

前回、夜行寝台列車でグラナダからバルセロナの鉄道の中心・サンス駅に到着しました。駅前からは市内のスポットを巡る観光客向けの2階建てバスが出ています。これに乗って、まずはモンジュイックの丘へ向かってみましょう。

バルセロナの街並みを一望できるモンジュイックの丘(カタルーニャ語ではムンジュイック)は、1929年にバルセロナ万博の会場となったところで、1992年のバルセロナ五輪でもメイン競技場として使われました。男子マラソンで森下広一さんが、女子マラソンでも有森裕子さんが、この丘を駆け上がってともに銀メダルを獲得しましたね。

標高約150mの丘の上や周囲には、カタルーニャ美術館やミロ美術館、スペイン各地の伝統的な建物を再現したスペイン村、さらには各種競技場などがあります。この丘からの街並みの眺めは実に素晴らしく、サグラダ・ファミリアの姿も遠望することができます。バルセロナを訪れた際は、ぜひ。

モンジュイックの丘は1992年バルセロナ五輪のメイン会場としておなじみ。当時使われたさまざまな競技場のほか、美術館などがあり、散策には最高だ

モンジュイックの丘からの眺め。スペイン広場などの市街地(左)や、遠くにサグラダ・ファミリアも眺めることができる(右)

市内に下りていきましょう。港のほうへ下りると、コロンブスの塔が立っています。ここからバルセロナの繁華街の中心であるカタルーニャ広場まで、南南東から北北西方向に1km以上続いているのがランブラス通り。賑やかな並木道で、レストランやカフェなどが建ち並び、バルセロナ観光のメインストリートといってもいいでしょう。歩いているだけで気持ちがいいものです。訪れた季節はまだ冬でしたが、春になるともっと気持ちがいいのでしょうね。

バルセロナは地中海に面した港町。地中海クルーズの寄港地としても魅力的な街といえる。このあたりも散策ルートにおすすめ

港のそばにはコロンブスが海を指さすコロンブス記念塔が立っている。この塔から北方向にランブラス通りが延びる

レストラン、カフェ、土産物屋などが並ぶランブラス通りはコロンブスの塔からカタルーニャ広場まで続く

途中で左の路地へ入っていくと、カタルーニャが誇る大建築家アントニ・ガウディが設計したグエル邸があります。豪勢な部屋やパイプオルガンがしつらえられた建物内部はもちろん、屋上のユニークな煙突も見ものです。バルセロナ観光ではずせないスポットのひとつでしょう。

ガウディの作品のひとつ、グエル邸はランブラス通りから狭い道へ入ったところにある。いつも多くの観光客たちが歩いている場所だ

1890年に完成したグエル邸。豪華な階段、ステンドグラス、グエル家の住居となった部屋の数々からは、サグラダ・ファミリアやカサ・ミラのイメージとはまた異なったガウディの表情をうかがうことができる。屋上のオブジェ群も注目

ランブラス通りから今度は右手のほうにしばらく歩いていくと、バルセロナが誇るもうひとりの大建築家、ルイス・ドメネク・イ・モンタネルが設計したカタルーニャ音楽堂が威容を放っています。けっして広くはない通り沿いにあるため、相当な広角レンズでないと全体をカメラに収めるのは難しいかもしれませんが、それでも多くの観光客がパシャリパシャリとシャッターを切っています。内部のガイドツアーもあるので、参加してみてはいかがですか?

こちらも狭い道沿いに建つカタルーニャ音楽堂。ガウディと並ぶルイス・ドメネクの傑作である

多くの観光客がカメラを構えるカタルーニャ音楽堂だが、面する通りが細いため全体を捉えるのはなかなか難しい

街の中心地・カタルーニャ広場を左に見て、幅の広いグラシア通りに入ると、通りの周囲にはカサ・ミラ、カサ・バトリョ、カサ・アマトリェールといったガウディの設計によるユニークな建造物がいくつもあります。斬新なデザインの外観は好みが分かれるところでしょうが、いずれも一見の価値ありです。私は、カサ・ミラやカサ・バトリョからは人間の内臓を思い浮かべました。あなたはどう感じるでしょうか。

カサ・ミラは賑やかなグラシア通り沿いに建つ。直線部分がないと言われる建物で、内部には集合住宅や博物館がある。なんでも建設当時は、奇妙な外観から市民に嫌われていたとか

さて、次はいよいよサグラダ・ファミリア(聖家族贖罪教会)です。この未完の教会については、多くを説明する必要はないかもしれませんね。言わずと知れたガウディの代表建築で、カサ・ミラ、カサ・バトリョ、グエル邸などとともに「アントニ・ガウディの作品群」の名で世界遺産にも登録されています。 着工は1882年。いつ完成するのか、いつまでも完成しないのではないかとささやかれていて、現在も工事中です。最近では2026年に完成すると公式発表されていますが、はたしてどうなりますか。

この教会、外観があまりに有名ですが、内部のステンドグラスや、まるで森の中にいるかのような柱の数々も見事です。外から見たからいいや、などといわずに、訪れた際はぜひ中にも入ってみてください。……言われなくても入りますよね(笑)。バルセロナ観光でけっしてはずせないポイントです。

バルセロナのシンボル、サグラダ・ファミリアをGoogle Earthで真上から。こうして見ると、伸びる影も芸術的だ

サグラダ・ファミリアのまわりはいつも大勢の観光客であふれている。入場券をゲットするために並ぶこともしばしば

あまりに有名な外観にくらべて、内部はそれほど知られていないのでは。柱の構造やステンドグラス、そのすべてがあきれるほどに美しい

サグラダ・ファミリアからガウディ通りを北へ一直線に歩いていくと、ルイス・ドメネク・イ・モンタネルのもうひとつの傑作、サン・パウ病院が建っています。このサン・パウ病院と前出のカタルーニャ音楽堂も、「バルセロナのカタルーニャ音楽堂とサン・パウ病院」の名で世界遺産に登録されています。ガウディはもちろんですが、彼の建築物にも注目してみてください。

ルイス・ドメネクのもうひとつの代表作、サン・パウ病院はサグラダ・ファミリアの真北にある。Google Earthで見ても、サグラダ・ファミリア(画面下)からサン・パウ病院(画面上)まではガウディ通りを一直線

サン・パウ病院の正面。先のGoogle Earthの画像からもわかるように、同病院の敷地は広大だ

さて、最後にグエル公園を訪れましょう。こちらもガウディの作品として世界遺産に登録されています。高台にあり、バルセロナの街越しに地中海を望むことができます。ちょっと風変わりな童話の世界に紛れ込んだ気分を味わえるところで、バルセロナの魅力的な建築物巡りの締めくくりにはピッタリでしょう。入り口付近にある有名なトカゲあるいはドラゴンの像をバックに、記念写真を忘れずに。

グエル亭の施主でもあるエウゼビ・グエル氏とガウディのコンビにより、当初は高級分譲住宅地として建設されたグエル公園。ユニークなデザインが緑に溶け込んだ、ある意味メルヘンな世界を楽しめる

グエル公園からのバルセロナの眺めも素晴らしい。奥には地中海、その左手前にはサグラダ・ファミリアの姿も見える

バルセロナでもうひとつ忘れてはならない建築物……といえば、バルサことFCバルセロナの本拠地、カンプ・ノウだろう(カタルーニャ語ではカム・ノウ)。さすがに街中でもバルサのユニフォームを着た人々の姿を数多く見ることができた。もちろんいちばん多いのは、メッシです

さて、実際の旅はこのあと大西洋岸に抜けてポルトガルへと向かったのですが、それはまた機会を改めて。次回からは一気に舞台を変えて、中東はヨルダン編をお送りします。