文章力を上げるトレーニング法で、かつ情報収集ツールでもある「9マス情報キャッチ法」で「書くための情報」を集めたら、いよいよ文章を書き始めます。
今回は、目的を達成できる文章を「うまい文章」として、メールを使ったうまい文章の書き方をお伝えしていきます。
文章は読み手へのプレゼントと考える
目的を達成する文章を書くためには、どのような点に気を付ければいいのでしょうか。それは書くときの「意識」です。「文章=読む人へのプレゼント」と考えてください。
あなたが誰かにプレゼントを渡すとき、「何をプレゼントすれば喜んでくれるかな?」と考えるのではないでしょうか。「花がいいかな? 食べ物がいいかな? それとも、映画や舞台のチケットのほうが喜ぶかな?」という具合です。
文章もまったく同じです。あなたの文章を読んで誰かが喜んでくれたら、あなたの目的は達成されやすくなります。
文章のなかに織り込むプレゼントとは、読む人にとって「役に立つこと」「利益になること」「喜びになること」「成長につながること」「幸せにつながること」「人生を豊かにすること」などです。
このような内容を文章に盛り込むことができれば、きっと目的達成率の高い、うまい文章になるはずです。
「9マス」でプレゼント要素を洗い出そう
では、いったいどうすれば文章に「プレゼントを盛り込む」ことができるのでしょうか。 それをお伝えする前に、次の文章をご覧ください。営業職に就いている人が、A社の担当者にアポを取る目的で書いたメールです。
文章1
弊社が開発した営業サポートクラウドシステム
「Manemode(マネモード)」をお使いいただきたく、ご連絡いたしました。
弊社の敏腕プログラマーが試行錯誤を重ねて開発したツールです。
非常に高い完成度を実現しました。ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
このなかに、相手へのプレゼント要素はどのくらい含まれているでしょうか。残念ながら文面に書かれているのは自社製品の宣伝のみで、A社にとってのメリット(プレゼント)は書かれていません。
受け取り方によっては、自慢のようにも見えてしまいます。よほど信頼関係ができていない限り、相手は、時間を割いてまでアポを入れようとは思わないでしょう。本当は相手を喜ばせられる商品なのに、その魅力を伝えきれていない事例だといえます。
文章1のようにならないためにも、相手にどんなプレゼントを用意できそうか、9マスを使って書き出してみましょう。
まず、自社の商品が相手(A社やA社の担当者)に与えるメリットを含め、相手が興味・関心を引きそうな事柄・要素を表3−1のように書き出してみます。
9マスで洗い出したこれらのプレゼントを材料に、メールを書いてみましょう。ここでは「お世話になっております」といった前文のあいさつや文末の署名は省きます。
文章2
弊社が開発した営業サポートクラウドシステム
「Manemood (マネモード)」をご案内したく、ご連絡いたしました。
本システムは、クラウド上で営業マンのスケジュールと顧客管理を一元管理します。
以下のメリットを貴社にご提供します。
1:パソコン、スマホ、タブレットと連動させることができる
2:営業マンの業務効率向上(平均20%向上)
3:上司が部下の営業状況を常に把握できる
4:効率の悪い営業会議を短縮、または回避できる
5:担当の引き継ぎが簡単にできる
なお、動作と効果を実感していただくべく、モニターとして1カ月間、無料でお使いになれます。
誠に勝手ながら、一度、ご案内の機会をいただければ幸いです。
○○様のご都合の良い日時に貴社に伺います。
ご検討いただけますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
文章2はメリットがコンパクトにまとめられていて、「相手に届けたいプレゼント」が明確です。しかも、プレゼントがふんだんに盛り込まれているため、相手は読み流すことができません。
「うちの会社にとってうれしいメリットがたくさんあるぞ!」「話を聞かないのは損かも?」「せめて話くらいは聞いてみよう」と思うのではないでしょうか。9マスを使わなかったメール(文章1)との優劣は一目瞭然です。
書く前に相手のメリットを考える
いきなり書こうとすると、ポイントが十分まとめられなかったり、書き方が雑になってしまったりする可能性があります。時間はかかっても、自分が今起こそうとしているアクションは相手にとってどのようなメリットがあるのか、立ち止まって考えてみましょう。最初は時間がかかっても、その努力は必ず報われます。
そして最終的には、あなたの文章を読んで「アポが取れ、商品を買ってもらえる」ようになるでしょう。ほかにも、「SNSのフォロワーが増える」「仕事につながる」といった結果を手にすることができるようになります。ぜひ今日から意識して実践してみてください。
著者プロフィール: 山口拓朗(やまぐち・たくろう)
伝える力【話す・書く】研究所所長。
出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。23年間で3000件以上の取材・執筆歴がある。講演や研修を通じて「論理的なビジネス文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメールの書き方」「売れるセールス文章&キャッチコピーの作り方」「集客につなげるブログ発信術」など実践的ノウハウを提供。2016年からは中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」も定期開催中。多数のインフルエンサーを輩出している。著書に、『「9マス」で悩まず書ける文章術』(総合法令出版)のほか、15冊以上ある。