伝わる文章を書きたいなら、何よりもまず、自分への「具体的な質問」が欠かせません。質問することで出てきた答えが、文章を構成する材料となります。

では、具体的な質問とは、いったいどんな質問なのでしょうか? 今回は、鋭い質問がスイスイできるようになる「基本のコツ」をお伝えします。

  • 質問ひとつで文章の質は大幅にアップします

「7W3H」を活用すると質問に困らない

「そもそも質問が苦手」という人は、あらかじめ「質問の引き出し」を増やしておく必要があります。ほとんどの質問は、以下の ツール「7W3H」でまかなうことができます。

◆7W3H Who(誰が/担当・分担・主体)
What(何を/目的・目標・内容)
When(いつ/期限・時期・日程・時間)
Where(どこで/場所・行き先)
Why(なぜ/理由・根拠)
Whom(誰に/対象)
Which(どっちを/選択)
How(どのように/方法・手段)
How many(どのくらい/数・量)
How much(いくら/金額・費用)

質問に詰まったら、これらの「7W3H」を参考に質問を考えましょう。「7W3H」を積極的に使うことで質問の引き出しが増え、書くのに必要な情報が自然と得られるようになります。

Whyは「読ませる文章」づくりに欠かせない

先ほど紹介した7W3Hのなかでとくに使えるのが「Why(なぜ)」です。「Why」は、理由や根拠、動機などに迫る質問です。その質問に答えることで、物事の核心に迫ることができます。「スコップ質問」の代表格といえるでしょう。

スコップ質問とは、「ここを掘り下げたらおもしろそう」というポイントを、スコップで掘り下げるように行う質問のことです。たとえば、次のように使います。

◆質問1 なぜ引っ越そうと思ったの?
◆質問2 なぜSF小説が好きなの?
◆質問3 なぜ秋が好きなの?

さまざまな「なぜ?」に答えることによって、物事の核心が見えてきます。その核心は、多くの場合、読む人にとって興味深いものではないでしょうか。

ではここで、実際に「Why」を使って話を掘り下げていきましょう。あなたは今、転職を考えているとします。その内容をまとめてブログに書くとしたら、どんな質問をして情報を集めるのが効果的でしょうか。少し考えてみてください。

◆自問1 なぜ転職しようと考えたの?
◆自答1 より高い給料を得たいから

◆自問2 なぜ給料が高いほうがいいの?
◆自答2 今付き合っている彼女と結婚後、少しでも余裕のある生活を送りたいから

◆自問3 なぜ余裕のある生活を送りたいの?
◆自答3 二人とも海外旅行が好きで、旅行に行くと心が洗われるから

「転職」をテーマに文章を書こうとするときに、その理由が「高い給料を得たいから」だけでは少々物足りません。理由の核心に迫る情報を加えたいところです。そこで、「なぜ?」を使って深掘りしていきます。すると、海外旅行に行きたいという書き手の考えが見えてきました。

もう1つ、事例をもとに考えてみましょう。

あなたは水族館に行くのが好きだとします。その魅力についてブログで発信する場合、どんな質問をすればいいでしょうか。同様に「Why」を使って質問してみましょう。

◆自問4 好きなことは何ですか?
◆自答4 水族館に行くことです。

◆自問5 なぜ水族館に行くのが好きなんですか?
◆自答5 群れで泳ぐ魚を見るのが大好きだからです。

◆自問6 なぜ群れで泳ぐ魚を見るのが大好きなんですか?
◆自答6 魚たちが、規則正しく編成を組んで優雅に泳ぐ姿がカッコいいからです。感動して時間を忘れることもしばしばあります。

なかには「群れで泳ぐ魚が好きだなんて、ヘンな理由だなあ」と思った人もいるでしょう。しかし、ヘンであれなんであれ、これが書き手にとっての理由です。実はヘンに感じるものほど、文章にしたときの価値は高いといえます。なぜなら、それが書き手のオリジナリティにつながるからです。

実際、文章にしてみるとその傾向は如実に表れます。

◆文章1 水族館に行くのが好きです。
◆文章2 群れで泳ぐ魚を見るのが大好きだからです。なかには「この日のために練習したのでは?」と思うほど、規則正しく編成を組んで泳ぐ魚たちもいます。その姿がカッコよくて大感動! 時間を忘れて見入ってしまうこともしばしばあります。

いかがでしょうか。話を深掘りすると、文章2のように、読んだ人に伝わる文章を書くことができます。また、オリジナリティのある文章であればあるほど、読む人の心をつかみやすくなります。自問自答するときには、「これを言ったらヘンかな?」などと、他人の目を気にする必要はありません。

質問を考えたら、自分の気持ちに正直に答えるようにしましょう。そのくり返しが、オリジナリティのある文章=読む人の心をつかむ文章につながります。

「How」で 読み手を喜ばせる情報を引き出そう

手段や方法を棚卸しする「How(どのように)」も、話を掘り下げるときに有効な質問です。「How」で方法や手段を伝えることで、読む人にとって、より有益な文章になります。

◆質問1 その料理は、どのように作ればいいですか?
◆質問2 起業するには、どのような準備をすればいいですか?

ではここでも、実際に考えてみましょう。

あなたが痩せたいと思って食事を工夫したところ、2週間で2キロのダイエットに成功しました。あなたはうれしい気持ちでいっぱいです。そんな喜びを伝える文章を書く際、どんな質問をすればいいでしょうか。正解例は次の通りです。

◆自問1 最近、うれしかったことはありますか?
◆自答1 2週間で2キロ痩せたことです。

◆自問2 どのような方法で痩せたのですか?
◆自答2 朝昼晩の3食、白米やおかずを控え、キャベツスープを中心とした野菜食を続けました。

「2週間で2キロのダイエットに成功した」というエピソードは、 おそらく、多くの人にとって気になるレベルだと思います。ただ次の文章1のように、単にその事実を伝えるだけでは、読み手は物足りないと感じるでしょう。ダイエットの秘密が知りたいのに、書かれていないからです。しかし、「どのようにして痩せたか」が書かれていれば、きっと(かなり?)満足するはずです。

◆文章1 2週間で2キロのダイエットに成功しました。
◆文章2 2週間で2キロのダイエットに成功しました。キャベツスープを中心とした野菜食のおかげです。この2週間、朝昼晩の3食、白米やおかずを控え、野菜を食べ続けました。

読む人にとってメリットになるのは、具体的なダイエット方法を示した文章2ということが理解してもらえると思います。「ダイエットの方法」や「予約のとり方」、「購入の手順」ーー。読み手がその方法や手段を知りたがる場面では、「How」を活用して、文章作成に必要な情報を棚卸ししましょう。

著者プロフィール: 山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。
出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。23年間で3000件以上の取材・執筆歴がある。講演や研修を通じて「論理的なビジネス文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメールの書き方」「売れるセールス文章&キャッチコピーの作り方」「集客につなげるブログ発信術」など実践的ノウハウを提供。2016年からは中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」も定期開催中。多数のインフルエンサーを輩出している。著書に、『「9マス」で悩まず書ける文章術』(総合法令出版)のほか、15冊以上ある。