質問力と文章力は比例するもの。自分にどんどん質問ができるようになると、悩まず書けるようになります。しかし、いきなり「今から自分に質問して文章を書いて」といわれても、慣れていないと難しいと思います。

そこでおすすめしているのが、「9マス自問自答法」です。いったいどんな方法なのでしょうか?

  • 自分の文章力に悩むことはありますか?(写真:マイナビニュース)

    自分の文章力に悩むことはありますか?

文章力を上げるトレーニング方法

「9マス自問自答法」とは、9個のマス目を使って自分にインタビューし、自分で答える方法です。頭のなかで考えたことを書き出すことで情報が視覚化され、悩まず文章を書けるようになります。

「最低9個は考える」と自分に約束することで、脳の活動力がアップします。そして、マス目の量が決まっているほうが、「書きたい」気持ちも高まります。9マスは、脳の能力を引き出すツールなのです。

では、どんな質問をすれば、魅力的な情報を集められるでしょうか。仮に、「とんこつラーメン」について書くと想定して考えてみましょう。ラーメンの見た目はどんな感じでしょうか。スープをすすったときの感じはどうですか?

イメージを膨らませていきましょう。自問例を次に紹介します。

  • 9マス自問自答法 :提供『「9マス」で悩まず書ける文章術』(総合法令出版)より

    9マス自問自答法 :提供『「9マス」で悩まず書ける文章術』(総合法令出版)より

まずこの9個の質問を考えることが、書く前の大事なステップになります。質問を考えたら答えを考えて、マス目に書いていきます。たとえば、次のようになります(黒字部分)。

  • 質問と答えを考えるトレーニングで脳を鍛える

    質問と答えを考えるトレーニングで脳を鍛える

自答例は、あくまでも一例です。書き方よりも、情報を洗い出す作業そのものが重要です。質問を考え、それに答えることで、書くための情報が手元にそろいます。

実際に9マス自問自答法を使うときは、「質問1を考える→答える」「質問2を考える→答える」という順番で進めていくのが理想です。直前の答え次第で、次にしたい質問が変わるからです。

文章力がアップする2つの質問

伝わる文章を書くには、「質問の立て方」も重要です。質問には大きく分けて「ベーシック質問」と「スコップ質問」の 2種類があります。

ベーシック質問は、文章のテーマに関する基本的な材料(情報)を集めるためのもの。「スコップ質問」は、 より具体的な材料(情報)を集めるための質問です。

まず、ベーシック質問は、文章作成に欠かせない重要な質問です。たとえば、旅のブログなのに旅行先が書かれていないと、読み手は肩透かしをくらいますよね。次のように、旅行先を導き出す自問自答が必要です。

自問1 行き先はどちらですか?
自答1 イタリアのミラノです

一方で、ベーシック質問だけでは物足りない文章になりかねません。ベーシック質問をして出てくる答えは「事実」。単なる情報を書くことにしかつながらないからです。そこで登場するのが「スコップ質問」です。

「ここを掘り下げたら面白そう」というポイントを、スコップで掘り下げるように具体的にしていくと、文章に奥行きが生まれやすくなります。

具体的に答えたくなる質問が大事

では、具体的にはどのような質問をすればいいのでしょうか。ベーシック質問・スコップ質問にそれぞれ該当するものを、直近で紹介した表から選んでみましょう。「基本的な材料(情報)を集めるための質問」を意識すると見えてきます。正解例は、下記になります。

<ベーシック質問>
質問1 今日のお昼に何を食べましたか?
質問2 その昼食はどこで食べましたか?
質問3 誰と食べに行きましたか?
質問6 ラーメンの具材は何でしたか?

<スコップ質問>
質問4 ラーメンの見た目はどうでしたか?
質問5 ラーメンスープの味や舌触りはどうでしたか?
質問7 ほかに何か特徴はありますか?
質問8 今まで食べたなかで何位くらいですか?
質問9 満足度はどのくらいですか?

2つの質問の違いが分かるでしょうか。

大事なことなのでくり返すと、ベーシック質問は「事実」を問うもので、出てくる答えは決まっています。スコップ質問は、答える人の視点などによって答える内容が大きく変わります。回答次第で書きやすさが決まるといっても過言ではないでしょう。「できるだけ具体的に答えたくなる質問」を意識することをおすすめします。

たとえば、次の2つの質問を比べてみましょう。

質問A ラーメンスープの味や舌触りはどうでしたか?
質問B ラーメンはどうでしたか?

質問Aの質問は具体的で、感じたことをストレートに答えることができます。質問Bはあまりにもざっくりすぎて、どう答えればいいかわからない人もいると思います。

仮にこの質問を初対面の人にされたらどうでしょう。「まあおいしかったよ」と、ぼんやりとした回答で終わってしまうかもしれません。これでは話が深まらず、読む人が興味を持つ文章にはなりません。

答えの質は、質問の質に左右されます。伝わる文章を書くなら、まずは「具体的な質問」を心がけましょう。

著者プロフィール: 山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。
出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。23年間で3000件以上の取材・執筆歴がある。講演や研修を通じて「論理的なビジネス文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメールの書き方」「売れるセールス文章&キャッチコピーの作り方」「集客につなげるブログ発信術」など実践的ノウハウを提供。2016年からは中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」も定期開催中。多数のインフルエンサーを輩出している。著書に、『「9マス」で悩まず書ける文章術』(総合法令出版)のほか、15冊以上ある。