ゴルフはおじさんのスポーツ……だったのはもはや遠い昔。石川遼選手や宮里藍選手、上田桃子選手といった若手選手の活躍もめざましいこともあり、ゴルフを楽しむ層が一気に広がりを見せている。女性誌ではオシャレなゴルフウェアが紹介され、一昔前まで、プレー料金は高く敷居の高かったゴルフだが、1万円くらいでまわれる手軽なコースもたくさん出来てきた。ゴルフは今や誰でも気軽に楽しめるスポーツとなったのだ。
しかし、ゴルフは道具を使うスポーツ。マラソンの様に、シューズが一足あればすぐ始められるようなものとは違う。
「初めてゴルフに行くんだけど、どうしたらいいのだろう?」
「練習場に行きたいんだけど、なにを持っていけばいいの?」
いざ始めようとしたときに、そうした疑問がつきまとうのもゴルフの特徴だ。特にゴルフ用具一式を取り揃えるのは簡単なことではない。ひとたび、ゴルフショップに足を踏み入れれば、値段はピンからキリまで。どれが自分にぴったり合うのかなんて初心者にはわからない。かといって知識がないことをいいことに「初心者用」を売りつけられてしまうのもシャクだ。高いお金を出して失敗なんてしたくない。値段は安く、それでいて自分にあったゴルフクラブを手に入れたい。そのためにはどうすればいいのか?
安いからこそ初心者向け!
豊富な品揃えの中から"自分の一本"を探そう
そこで、この連載でお薦めしたいのが中古クラブの専門ショップ(中古ゴルフショップ)での購入だ。中古は「人の使い古し」というイメージがあるかもしれないが、新品クラブと比較して値段はずいぶんに安い。クラブは、だいたい定価の4割引きの値段で購入できる。新品クラブの値引率が2割引と考えるとかなり手ごろな価格になる。いきなり新品クラブを一式揃えるのはかなりの出費だが、中古クラブなら手が届く値段で見つかる可能性も高い。特に、世界的な原料不足も影響して、メーカー各社は出荷数を抑え原価を上げる高級志向に切り替えている。プレーの料金が下がっているのとは対照的に、新品クラブの価格帯は上昇を続けているのだ。
価格だけでなく、中古ゴルフショップの特徴がその在庫数だ。なにしろ新製品の数とは比較にならない数を誇る。これまで製造されたほとんどのクラブを網羅するため、中古クラブの専門ショップにある商品数は新品ショップの10倍と言われる。また、新品クラブは毎年モデルチェンジを繰り返すため、その年の傾向が必ずしも自分に合うかどうかはわからない。豊富な在庫の中から選ぶことが出来るのは中古専門店の大きな利点だ。さらに、どのクラブも人の手を経てショップに並んでいるため、クラブの評価も定まっている。本当によく飛ぶのか、曲がらずに飛ぶのか、そうした評価が出揃ったクラブが並んでいるため、自分に合うものを選びやすい。知り合いや親から譲り受けたクラブセットがある場合も、ドライバーだけ新しいものにしたい、なんていう場合も、中古ゴルフショップの使い方を知っていると選択の幅はずいぶんと広がるわけだ。
確かに"中古"ということで、なかには傷が付いたり古さを感じるものもある。ただ、そうしたものはそれなりの値段がついている。先述した4割引という価格帯は、そうした傷の付いたランクの低いものではなく、綺麗に使用され商品として高いランクがつけられたものの値段だ。なかには未使用だったり、メーカーの在庫処分で流れてきた新品に近いものさえある。「中古=古いもの、劣化したもの」というイメージとはかなり変わってきたのが実状だ。
ここまで聞いて、「そんなに良いことばかりなら中古ゴルフショップに行くしかない!」と思った読者も多いだろう。ただ、中古ゴルフショップにいるお客さんは腕に自信のありそうな人ばかり。お店のスタッフも初心者だと煙たがられて相手をしてくれるかどうか。正直、なかなか入りづらいのが本音。それこそよくわからないままおかしなクラブを売りつけられてしまうのではないか……。
そんな不安な声に「まったく心配ありません」と言うのは、中古ゴルフクラブ専門店の老舗「フェスティバルゴルフ上野本店」副店長・横山宗明さん。
「中古クラブ屋は、お客さんに売りつけるビジネスではなくて、ゴルフのステップアップのサポートを提案していくという商売です。『これ最高だから買っていって下さい』と新製品を売るお店とは全然違うスタンスなんですね」とのこと。
中古ゴルフショップでは、ゴルフクラブを売る相手もお客さんなら、買い取る相手もお客さん。商品を売りつけるだけの商売をしていたら、そんなお店にクラブを買い取りに出してくれるお客さんは来ない。いつしか在庫も増えなければ、商品もさばけなくなってしまう。ユーザーのニーズに対し、どれだけ的確な商品提案ができるかで商売をしている場所。それが中古ゴルフショップ、なのだ。
さて次回は、実際に中古ゴルフショップで役に立つ、クラブのランクの見方、質問の仕方についてじっくりとお伝えしよう。
撮影:中村浩二