それなりに歳を重ねていくと、聴く音楽って限られてきますよね。若い頃は最新チャートをチェックしていつも新しい音楽や流行りの曲に触れていたけど、いまは仕事や家庭優先であまり時間もとれず、学生時代に夢中になっていたアーティストをたまに聴く程度という方も多いのではないのでしょうか。

もちろん慣れ親しんだアーティストの楽曲に浸って、懐かしいひとときを過ごすのはとても楽しい時間です。ですが、この連載は音楽を趣味としてもっと楽しむことがテーマ。ほんの少し能動的になって、今まで知らなかったアーティストや曲、ジャンルにも触れてみてはいかがでしょうか。今回は「好みの音楽の探し方について 〜音楽フェス編〜」です!

  • 自分好みの音楽は、音楽フェス公式サイトで“予習”することで見つかる、かも?(画像は筆者が今年2023年に訪れたジャズフェス「LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN」のロゴ)

フェスでたまたま観たアーティストに心打たれる

わたし、フジロックやサマソニなんかの洋楽中心の音楽フェスが大好きで、毎年楽しみにしています。仲間と過ごす、音楽とビールまみれの時間……いくつになっても最高です。

もちろんフェスにはお目当てのアーティストのライブを楽しみに行くのですが、知らないアーティストも大勢出演します。せっかくですし、あれもこれもと観たくなるのが人情ってもんですよね。そこでわたしはフェスを目一杯楽しむために、知らない出演アーティストの予習をしていきます。

ひと昔前はCDを借りたり買ったり、楽曲を有償ダウンロードしたりとひと手間もふた手間もかかりましたが、いまはそのフェスの公式サイトに出演アーティストのYouTube動画やストリーミングサービスへのリンクが貼ってあるので、すぐにチェックができます。便利な時代になりました。

まあ、わたしもフェスに行き始めた頃は好きなバンドや、名前を聞いたことがあるアーティストに絞って足を運んでいました。しかし某フェスに参加していたとき、一緒に参加していた仲間から「この人すごいらしいぜ、行こうよ!」と誘われ、あまり聴いてこなかったエレクトロニカ系のアーティストを観に行きました。いま思えば、そのときのライブ体験が音楽の趣味が広がるきっかけとなったと思います。

星空の下、天に召されるような美しいサウンドとライティング、そして重低音の音圧がすごくて、体で感じる低音のビートと心臓の鼓動がごっちゃになって不整脈になったかと思ったあの夜……そのとき、四十も半ばを過ぎておりましたが、ギターロックバンドでは味わえなかった初めてのライブ体験をすることができました。自分が知らなかっただけで、こんなにもカッコいい音楽があったのかと。それ以降は知らないアーティストも予習をしていくようになったというわけです。

提供:Spotify

フェスが新しいサウンドを紹介してくれる!

音楽フェスってそれぞれに個性があって、それぞれのテーマで注目アーティストや新しいムーブメントを紹介してくれます。

個人的な好みだと、フジロックの出演ラインナップは毎年気になっていて、その年は参加できないことがわかっていたとしても必ずチェックしています。知らないアーティストがいたら、フェスの公式サイトに載っている音源を必ず聴くようにして、気に入ればストリーミングやYouTubeなんかで深掘りします。プロフィールにその人が関わるムーブメントについて書いてあれば、その関連アーティストも検索してチェック。その人の音楽性や背景までも把握するようになると、そのアーティストはもう“推し”です。実際のライブが待ち遠しくてたまりません!

そんなことを繰り返しながら、ここ数年夢中になっているのが、カマシワシントン、サンダーキャット、ロバートグラスパーをはじめとする「新世代ジャズ」と呼ばれるアーティスト。ギターロックファンのわたしでしたが、実際にライブを観て感動して関連するアーティストも聴くようになり、今年(2023年)の5月にはDOMI & JD BECKという若手ユニットを目当てに「LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN」というジャズフェスにも行ってきました(学生からシニア世代まで、老若男女幅広い客層に驚きました!)。まさか自分がジャズフェスに行くようになるなんて。

興味を持った音楽を、深掘る行為もいと楽し

若い頃、マイルス・デイビスやジョン・コルトレーンなどのいわゆるジャズ・レジェンドの音楽を知りたくて、その音楽を系統立って教えてくれるジャズの入門書や名盤紹介本を参考にしながら、アルバムを借りたり買ったりしていました。しかし、新世代ジャズを知るためには最新アーティストの情報も重要なので、まずはネット検索です。

前述のアーティスト名や、新世代ジャズといったワードで検索するだけでも、さまざまな情報がでてきます。知らないアーティスト名が連なった記事が数多くヒットしますが、複数の記事に名前が出てくるアーティストを中心に、ストリーミングやYouTubeでそのサウンドをチェックしていきます。その中で近年はUKジャズが注目されていることも知りました。

そもそも発信される情報量が少ない音楽ジャンルは、自分で掘っていくしかありません。最近では、エズラ・コレクティヴというUKジャズバンドの来日公演を逃してしまった(涙)ことをキッカケに、有名ジャズクラブの来日公演情報も定期的にチェックして、知らないアーティストでもプロフィールにその手のことが書いてあれば、すぐ聴いてみるようにしています。そして趣味の中古ショップ巡りでも、ジャズコーナーをチェックするようになったことは言うまでもありません。

フェス公式サイトは、音楽ファンには宝の山!

わたしの体験をつらつらと書かせていただきましたが、こんなふうに音楽フェスって新たな“推し”のアーティストを見つけたり、未知のジャンルに触れたりと、新しい音楽との接点に満ちあふれています。さまざまなフェスがそれぞれのテーマを持って出演アーティストをブッキングしているので、そのフェスの公式サイトは音楽ファンにとっての宝の山なのです。今度フェスに行く機会があったら、単に好きなアーティストを観るだけでなく、こんな“予習”も楽しんでいろんな音楽に触れてみてはいかがでしょう!

読書好きの方が新しいジャンルの本を読んでみるように、アクション映画ファンの方が話題のミュージカル映画を観るように、自分の趣味の範囲を増やしていくことは楽しいものです。次回は「好みの音楽の探し方について〜音楽ストリーミングサービス編〜」です。またお付き合いいただけたら嬉しいです!

今回紹介した楽曲プレイリスト

提供:Spotify