前回までの内容を振り返ってみましょう。

1.数字力とは「言いたいことをグラフや表に"翻訳する力"とグラフや表から言いたいことを"解釈する力"」のこと。ビジネスでは実は後者の解釈力以上に、前者の翻訳力が大切。

2.分析の基本的は「比較」

3.「目」は強力な分析ツール。グラフを使って「目で見て」比較することが大切。

ということを一緒に見てきました。

最終回の今回は、「言いたいこと」をグラフに翻訳するためのヒントをまとめたいと思います。

グラフにはみなさんが「言いたいこと」の背後にあるロジック(論理)を織り込む必要があります。ロジックがなければ、「ただの思い込み」や「主観的な意見」と思われてしまいます。だからと言って、難しく考える必要はありません。これからご紹介するステップを踏めば、自然とロジックが生まれてきます。

どのようなステップで考えればいいのか

グラフにするステップはとても簡単。以下の3ステップです。

まず大切なのは、本格的にデータ収集に取りかかる前に、手元にある情報からグラフを使ってそもそも「何を言いたいのか」を最初に考えることです。「言いたいことは何か?」をまずしっかり固めることから始めましょう。その際に大切なことは、後からグラフに翻訳しやすいように言いたいことは、「何を比較対象としているのか?」をあらかじめ明確にしておくことが大切です。分析の基本は「比較」でしたね。

ビジネスシーンでは、日常的に例えば「大きなインパクトがある」や「非常に効果がある」といった表現をよく使います。しかし、分析の視点からみると、いずれも「比較対象」があってこそ、初めて言えることなのです。「言いたいこと」を言葉で表現する際、例えば「~に比べて大きい」「~より効果がある」といった形で「比較対象」を常に意識するようにしましょう。

どのようなグラフを選べば良いのか

「言いたいこと」と「比較対象」が明確になれば、ゴールまであと一歩です。下の表は「比較対象」別によく使われるグラフをまとめたものです。この表を参考に、後はどのグラフを使って「言いたいこと」を表現すればいいかを考えるだけです。日本語を英語に翻訳するには、何千語という単語を覚える必要がありますが、数字の言葉であるグラフはとても単純。下記の表に示すとおり、使う単語は基本的に点、線、横棒、縦棒、パイの5種類のみです。

前回、「グラフの王様」として光をあてた散布図は、2つのデータの比較を「相関」という視点で捉え、「点」で表現したものであることが表からわかりますね。

今日から数字の言葉であるグラフを使って、「言いたいこと」を表現するトレーニングを始めてみましょう。その際には、ご紹介した3ステップを忘れずに。「言いたいことを」明らかにして、「何を比較対象とするのか」を決め、最後に「グラフを選択」する。分析の基本は、「比較」です!


<著者プロフィール>
鈴木健一
グロービス経営大学院教員、グロービス・マネジメント・スクール講師。東京大学工学系修士、シカゴ大学MBA。野村総合研究所を経た後、A.T.カーニー社にてマネージャーとして経営コンサルティング業務に従事。メーカー、通信事業者の新規事業戦略、マーケティング戦略、オペレーション戦略などの分野で幅広いコンサルティング経験を有する。現在はグロービスに加わり、グロービス経営大学院の立ち上げ以来、その運営にたずさわるほか、『ビジネス定量分析』をはじめとする論理思考系科目の講師、カリキュラムの作成を担当する。