数字、好きですか? 数字の分析、得意ですか?
皆さん、仕事で数字を使っていますか。頻度の違いこそあれ、多かれ少なかれ数字をどこかで使っているのではないでしょうか。
それでは、数字は好きですか、嫌いですか? 得意ですか、苦手ですか? ビジネススクール(経営大学院)では、以下の図のような2×2マトリックスで物事を整理することがよくあります。さて、自己診断では、みなさんはどこにあてはまるでしょうか?
ビジネススクールでの授業や、数字力をテーマにしたセミナーなどでこの質問をすると、参加者が一番多く選ぶのが「好き×苦手」です。
もちろん皆さんには右上の「好き×得意」に最終的に到達いただきたいのですが、このコラムでは特に、どうすれば『苦手』から『得意』になれるのか、そのために必要な、数字と付き合う上での『ちょっとしたコツ』についてお話ししたいと思います。更に可能であれば『嫌い』な方にも『好き』になっていただけるよう、数字を扱うことの面白さについても是非伝えたいと思います。
数字力とは?
ところで「数字力」って何なのでしょうか。数字力のある人って、どんな人を想像しますか。では、実際に仕事で数字を扱う場面を想像してみましょう。
皆さんの頭の中には、パワーポイントやエクセルを使いながら、上司や取引先に報告するための資料を作成しているシーンが思い浮かんだのではないでしょうか。
こうした場面で頭を悩ませるのは、「説得力を持って自分の考えを伝えるには、どのようなグラフや表を使えばよいのだろうか」。あるいは、「手元にあるグラフや表から何が言えるのだろうか」といった点ではないでしょうか。
こうした状況を想定し、このコラムでは数字力とは「言いたいことをグラフや表に"翻訳する力"」と「グラフや表から言いたいことを"解釈する力"」 だと考えましょう。
このうち後者の「グラフや表を"解釈する力"」は、これまで学校や職場で求められることが多く、意識している方が多いかもしれません。一方で、意外と盲点になっているのが「グラフや表に"翻訳する力"」です。
この翻訳力が磨かれると、資料作成時間が飛躍的に短縮されます。なぜなら、アウトプットイメージが明確になるため、"逆算思考"で仕事を進められるようになるからです。報告のストーリーラインをあらかじめ立てられるようになるので、分析に必要なデータや情報を見極められ、無駄な情報を集めて必要のない分析に時間を費やさなくなるのです。
数字力を形作るもの
それではこうした数字力を身につけるには、何が必要なのでしょうか。私は、数字力は以下の3つのレベルで構成されていると考えています。このうち、エクセルを使った計算方法や多岐にわたる分析手法を押さえることも大事なのですが、最も大切なのは数字を扱う上での基礎力となる「分析の考え方・視点」です。次回以降はこの「分析の考え方・視点」について説明していきます。
愛の値段はいくらでしょうか?
では、ここで次回のコラムまでの宿題を出したいと思います。「愛の値段はいくらでしょうか?」。どのようなデータやグラフを使えば、自分の考えを表現できそうでしょうか。1週間後の次回のコラム掲載までに、是非考えてみてください。
<著者プロフィール>
鈴木健一
グロービス経営大学院教員、グロービス・マネジメント・スクール講師。東京大学工学系修士、シカゴ大学MBA。野村総合研究所を経た後、A.T.カーニー社にてマネージャーとして経営コンサルティング業務に従事。メーカー、通信事業者の新規事業戦略、マーケティング戦略、オペレーション戦略などの分野で幅広いコンサルティング経験を有する。現在はグロービスに加わり、グロービス経営大学院の立ち上げ以来、その運営にたずさわるほか、『ビジネス定量分析』をはじめとする論理思考系科目の講師、カリキュラムの作成を担当する。