プレゼン資料をつくっているとついつい「あれも言いたい、これも説明したほうが…」と多くの情報を詰め込んでしまいがちです。

言うべきことを絞り込む

ここで注意が必要なのは、話し手が考えている時間に比べて、聴き手が話を聴いて理解する時間は圧倒的に少ないということです。この落差を意識しないと、聴き手がプレゼンの中で処理できるものを超えた情報を伝えてしまい、「いろいろ説明してもらったけど、結局よくわからなかった」。もしくは、説明時間を大幅に超過し、一番大事なところの説明が駆け足になってしまい、「伝えるべきことが伝えられなかった」といったことになりがちです。

こうした失敗をしないためには、プレゼンで言うことを、「聴き手の知りたいこと、知るべきこと"だけ"に思い切って絞り込む」ことが重要です。

まず、そのプレゼンで1番聴き手に伝えたいこと、理解してもらうべきことは何かを2行程度の短い文章で表現してみましょう。これがそのプレゼンのメインメッセージになります。そして、そのメインメッセージを理解、納得してもらうために、聴き手が「最低限知らなければならないことは何か?」を考えていきます。それらを資料の各ページの一番上にメッセージとして書いてみます。そして、これらのメッセージだけを読んでみて、聴き手にとって必要十分な内容になっているか、わかりやすく表現できているかをチェックするとよいでしょう。そのうえで、各メッセージを理解するために必要なデータ、グラフ、図などを資料に加えていきます。

一目でわかる資料をつくる

1枚のスライドにいくつものグラフや図が描かれていたり、細かな字で説明がたくさん書いてあったりするスライドをよく目にします。話し手としてはそれを使いながら説明するつもりなのでしょうが、大抵の場合、その説明は聴き手にとってわかりにくく、回りくどく、何を言いたいのかわからないものになりがちです。

こうした事態を避けるには、1枚のスライドに入れるものを絞り込む。各資料のメッセージを言うために必要最低限な情報だけを掲載し、極力シンプルにするのがコツです。そして、図表やグラフを見た瞬間に、余計な説明をしなくても、メッセージが頭に浮かぶかチェックすると良いでしょう。

短く話す

たとえば15分の説明時間を与えられたとしましょう。我々はついついその時間目一杯を使って話をしようとしてしまいますが、むしろ2/3くらいの時間、この場合であれば10分で話すことを目標にするとよいでしょう。プレゼンが長くなることで不満、不便を感じる人は多いですが、プレゼンが早く終わって文句を言う人はほとんどいません。むしろ簡潔で言いたいことが明確なプレゼンは、聴き手の好感を得やすく、強いインパクトを与えることができます。

プレゼンにおいて重要な原則はLess is More(より少ないことは、より豊かなこと)。シンプルで明快なメッセージ、一目でわかる資料、短い説明。ぜひこの3つを明日から意識して実践してみてください。きっと「わかった」と言ってもらえることが増えるはずです。


<著者プロフィール>
吉田素文
グロービス経営大学院教員。立教大学教育学修士、ロンドンビジネススクールSEP修了。大手私鉄会社を経てグロービスに参画。論理思考プレゼンテーションファシリテーション等の思考・コミュニケーション系科目の開発を行うほか、経営戦略、アカウンティング、組織運営など幅広い領域での講師、企業の経営課題を扱うアクションラーニングセッションのファシリテーターを多数務め、課題解決、プレゼンテーションの指導を多数行っている。