気になる企業のホームページにあるIR情報をチェックするようになった舞込夫婦。事業内容もしっかりしていて、決算も優良な企業をチェックすることにもだいぶ慣れてきた様子だが、これだけではファンダメンタルズ分析にならないことをマイカブ君に指摘される。そこで今回は、同業他社と比べ、その株が割安か割高かを判断する代表的な指標、「PER」と「PBR」について解説する。

主な登場人物

舞込さとし(32歳)・まゆみ(28歳) 結婚3年目に突入した舞込夫婦。そろそろ子どもも欲しいけれど、お金もかかるし面倒か……と、ついつい会社以外ではぐうたらと過ごしてしまう2人。

マイカブ君(年齢不詳) 舞込夫婦のパソコンから突如として現れたネット株の妖精(?)。ネット株の便利さを伝えるために奔走しているが、お化けと間違えられる日々。

※この物語はフィクションであり、実在の人物、団体とは関係がありません。

気になる銘柄のココをチェック! PERとPBRの見方とは?

スクリーニングを勉強するときに少し触れたPERとPBRは、ファンダメンタルズ分析にも欠かせない指標。それぞれ、その銘柄の株価が割安か割高かを分析する指標であることは、さとしもまゆみも把握していた。しかし、この指標がどのように算出され、どんな見方をすればよいのかがわからない。そんな2人の様子をみて、マイカブ君が救いの手を差し伸べる。

ファンダメンタルズ分析もなかなか奥が深いなぁ……。

有名な企業の事業内容って、おおまかに把握しているつもりだったけど、なんだかいろいろあるのね~。

そうそう。環境問題に取り組んでいる会社もあれば、まったく異なる事業を数多く展開していたりね。

でも、決算書を読んでみると、どの事業がプラスになっていて、どの事業がマイナスなのかもわかるから、ちょっとおもしろいわよね!

でもさ~ちょっと表現が難しいのが問題だよね~。

そうなの! 頭が痛くなってきちゃう。

これだけの情報じゃ、気になる銘柄はピックアップできるけど、お買い得かどうかまでわからないもんね。

そう、一番重要なお買い得度!! いったいどこでチェックすればいいの!?

おっ。ようやくそこに気付いたね?

マイカブ君! やっぱりこの情報の中に、お買い得度を調べる数字があるってことだね?

もっちろんあるカブ。まゆみの大好きな「割安度」を判断する数字がね。

さすがマイカブ君! 教えて、教えて~!

はいはい。じゃ、ちょっと前に戻るけどスクリーニングの時に勉強した「PER」と「PBR」って覚えているかな?

PERってのが、株価収益率だよね。

PBRが株価純資産倍率のことよ。

はい、正解! でも、その数字が何を意味するか、ちゃんと覚えているかな?

どちらも、株価が割安か割高かを比較する指標だってことはわかってるけど……。

ほかの数字に夢中で、指標の見方まで考えてなかったわ……。

やっぱりね~。それじゃ今回は、ファンダメンタルズ分析に欠かせない2つの指標についてお勉強しようか。

お願いしま~す!

まずはPERについてだね。これは「株価」を「1株あたりの利益」で割った数値なんだ。つまり、株価が1株あたりの利益の何倍まで買われているかを示していて、PERが高ければ割高、PERが低ければ割安として判断できるよ。この数値の目安は、日経平均のPERである約20倍とされていて、それを基準に判断するのが初心者向きかな。もちろん、業種によって数値も若干異なるから気をつけようね。

あ、でもこの1株あたりの利益はどうやって算出するのかしら?

いいところに気付いたね~。1株あたりの利益は、決算などに書かれている「当期純利益」を「発行済み株式数」で割ると、求めることができるよ。この数値が高いほど、利益を出している会社ってことになるんだ。

なるほど……。20倍より低ければ低いほど割安なんだね?

簡単に言うと、そうなんだけど。実は、PERがあまりに低すぎてもダメなんだ。この場合、経営状態が悪化している可能性もあるからね。

低いから単純に割安! ってことにはならないのね。

その通り。将来性が期待されることでPERが高くなる銘柄もあるから、PERだけで判断するのもNGだよ。

いろいろな要素から判断しなきゃダメなんだ~。

そうそう。で、次にPBRだけど、これは「株価」を「1株あたりの純資産」で割った数値になるよ。つまり、株価が1株あたりの純資産の何倍かを示すもので、この場合もPBRが高ければ割高、PBRが低ければ割安となるんだ。PBRを見る際は、目安として1倍を基準に判断する場合が多いのだけど、PBRが低いから有望な銘柄ということではないし、高すぎるからダメな銘柄というわけでもないから、やっぱり総合的な判断が必要になるよね。

う~ん、あくまでも指標ってことですか!!

な、なんかまゆみがカッコいい!

その通り! データから算出される数字や指標は、結局判断材料のひとつでしかないからね、最後は自分次第なんだけど。

でも、知らないより知っている方が断然有利よね?

そう、今日のまゆみは冴えてるね!

えぇ~っ、いつもでしょう!?

はいはい。でね、この1株あたりの純資産ってやつなんだけど……。

うん、これは会社の「純資産」を「発行済み株式数」で割ったものなんだけど、純資産は決算書などに書かれていない場合もあるから、「総資産」から「負債など」を引いてみいると、「純資産」を求めることができるよ。

ん……? 純資産って、企業が解散すると株主に分配されるお金よね……?

まゆみ、よく知ってるね。そう、純資産は解散時に株主に還元されるもの。つまり、「解散価値」とも呼ばれているんだよ。

その解散価値が現在の株価に対して割安か割高かを判断できるのがPBRってことか……。

こうやって考えてみると、いろいろなつながりが見えてくるもんだね!

そうね。単に株価の動きだけ追っていたら、企業がどんな状態にあるのかまではわからないもの。

2人とも、どんどん成長しているね。うれしいカブ!






予告

投資家として成長しつつあるさとしとまゆみ。次回は、ボーナス時期を目指して検討したい銘柄について、マイカブ君が解説。テクニカル分析やファンダメンタルズ分析ができない銘柄とは……!?

※「株式用語の基礎知識」では、株式投資に関する疑問や質問などを随時募集しています。こちらから気軽にお送りください。

イラスト : 岩井勝之