魔女の集まる街 ヴェルニゲローデに向かう

ハノーファーからRE(Regio Express)とRB (Regional Bahn)を乗り継いで約2時間。旧東ドイツ領の小さな街、ヴェルニゲローデに到着。この街は魔女伝説の街として知られており、毎年4月30日にはヴァルプルギスナハトと呼ばれるお祭りに沢山の人が集まります。非常に小さな街のため、半日もあれば観光できてしまう所ですが、非常に過ごしやすいのどかな街でもあります。

この地方には魔女伝説が伝わる。そのため、土産物店以外でも魔女の人形が売られている。写真の魔女はかわいらしいが、もっと魔女っぽいイメージの人形もある

地図の中央やや上部分にヴェロニゲローデは位置する。今回はブロッケン山にも訪れる

クリスマスシーズンになると、市庁舎前のマルクト広場でクリスマス市が開催されます。大都市のクリスマス市とは比べ物にならないほど小さな市ですが、それでも、大変にぎわっており、充分クリスマスの雰囲気を味わえます。

マルクト広場でのクリスマス市の風景。規模は小さいが内容は充実しており、充分にクリスマスを楽しむことができる

クリスマス市では主にクリスマスの飾りやお菓子類が売られている他、グリューワインと呼ばれる、香料入りのホットワイン等が売られている

ここでのオススメの宿はなんと言っても「ヴァイサー・ヒルシュ」。マルクト広場に隣接し、市庁舎と向かい合って建っており、創業1760年と歴史的なホテルでもあります。特にここのレストランはオススメで、大変美味しい地元料理を堪能することが出来ます。

筆者お気に入りのホテル・ヴァイサー・ヒルシュ。一階にあるレストランの料理は絶品ばかり。宿泊しなくてもぜひ食べに行ってほしい

また大抵の街では、市庁舎の下に「ラーツケラー」と呼ばれるレストランがあり、各地でそれぞれ独自の味が楽しめますが、ヴェルニゲローデのような小さな街の市庁舎にもラーツケラーは存在しており、手軽に食事を楽しめます。

ヴェルニゲローデの市庁舎。この建物の左横にラーツケラーがある。非常にかわいらしい建物で見ていて飽きない

SLに乗って小旅行 ブロッケン山の山頂へ向かう

この街のもう一つの特徴は、ブロッケン現象(霧の山頂で太陽光が差し込む際、光を背にしている人の周りに光の輪ができる現象。日本では御来迎とも言われている)で有名なブロッケン山に向かうためのハルツ狭軌鉄道が走っていることです。しかも、ハルツ狭軌鉄道は電車やディーゼルカーではなく、SLなのです。

実際、ドイツ国内にはSLが走っている場所が各所にありますが、中でも人気なのが、このハルツ狭軌鉄道のSL。ドイツの観光ツアー等に組み込まれていることもあります。

ヴェルニゲローデからブロッケン山までの料金は往復で27ユーロ(2007年7月現在)。片道約2時間の旅となります。車内から見える風景は非常にのどかで、どことなく日本の山間部を思い出させる雰囲気もあり、2時間の旅も飽きることはありません。

動画
少々ゆっくり運転している時にムービー撮影にチャレンジ。こんな感じで山頂へと向かう

車内では、車掌さんが検札と同時に飲食物の販売を行うのですが、これがなんと、その地方で作られている伝統的なお酒(スピリッツ)の小ビンなのです。「なぜお酒が売られているのだろう? 」と思ったのですが、列車が進むに連れてその謎は解けました。そう、山頂に近づくほど、寒くなるのです。もちろん車内は暖房で暖められていますが、秋以降のブロッケン山山頂はかなり温度が低くなるため、「これでも飲んで体を温めておけ」と言うことのようです。なので、冬にブロッケン山を訪れる人は防寒対策をばっちり施してください。

天候のよい春から初秋にかけて訪れるのがベスト

筆者はドイツのクリスマス市を見て歩くのが好きなため、基本的にはそのシーズンに合わせて遊びに行くことが多く、ヴェルニゲローデには秋と冬にしか行ったことがありません。秋のシーズンは紅葉も見られ非常にきれいな風景を堪能できますが、冬ともなるとほとんど雪の中を列車が進むことになります。従って、春から初秋にかけて訪れるのがベストだと言えます。晴れれば、ハルツ地方を一望できる素晴らしい眺めに遭遇できるのですが、筆者は未だにその風景を見たことがありません。これだけは長く通っていればいつか見られるのではないかと思いつつ、毎回楽しみに足を運んでいます。

旧ソ連の電波施設の一部が今でも残っているブロッケン山山頂。秋のシーズンならまだよいのだが……

ちなみに、雪があまりにも多い場合は、ラッセル車(冬季に線路上に積もった雪を除去するための機関車)が走り、線路を確保します。この光景も珍しいそうですが、筆者は何度もそれに遭遇しており、別の意味でブロッケン山の光景を楽しんでいます。

真冬のブロッケン山山頂。雪に覆われており、ラッセル車がスタンバイしている。こうなると体の芯まで冷えてくる

その他、山頂にはハイキングコースの他、旧ソ連の電波施設の跡地、レストラン等があり、充分楽しめるようになっています。また時間に余裕があるなら、行きはSL、帰りはハイキングで途中の駅まで歩いて降りる、というのも楽しいでしょう。

ところで、ドイツのお菓子というと、すぐに頭に浮かぶのはバームクーヘンではないでしょうか? ですが、ドイツ旅行をしていてバームクーヘンにお目にかかることは少なく、クレッペル(揚げドーナツのようなお菓子)やタルト等が目につきます。なので、バームクーヘンを作っている場所を目にするといったことはまずないと言っても差し支えありません。実はドイツでは結構珍しいお菓子でもあるのです。

ヴェルニゲローデには、ドイツでは珍しいバームクーヘンを目の前で焼き、販売しているお店があります。場所はハルツ狭軌鉄道のヴェルニゲローデ・西門駅のすぐ裏手にあり、大変美味しいバームクーヘンが売られています。2時間の列車の旅ですから、小腹も空きますので、乗車前にお店に寄ってバームクーヘンを買ってブロッケン山に向かうのもいいでしょう。

ヴェルニゲローデをベースにしてみる

ヴェルニゲローデは居心地の良い街で、ついつい長居をしてしまうことが多いのですが、市内観光とブロッケン山だけではさすがに飽きてしまいます。そこで、いつものように ちょっと電車に乗って遊びに行ける街を紹介しましょう。

まず一つは、神聖ローマ皇帝の居留地として有名なゴスラーでしょう。ここにはDB(Die Bahn)に乗り、40分ほどで行くことができます。古い中世の街並の面影が残る美しい街ですので、時間があれば是非とも訪れて欲しい所です。もう一つは、急行(IRE)で約一時間、カメラのローライで有名なフランケ・ウント・ハイデッケ社の設立地であるブラウンシュヴァイクです。12世紀にこの地を支配していたハインリッヒ獅子公の居住地として知られており、ライオンがトレードマークとなっている街です。ダンクヴァルデローデ城やアントン・ウルリヒ公博物館といった見所もあり、日帰りで観光するには最適な場所です。

さて、この連載もあと数回となりますが、次回は私がもっとも好きなドイツの街を紹介したいと思います。大都市の近郊にある小さな街の魅力に触れていただけたらと思います。