名実ともにナンバー1の漫才コンテストとなった『M-1グランプリ』の決勝に進出(2005年)したこともある実力派のコンビ、タイムマシーン3号。「ガンバレ半袖、負けるな短パン」のつかみで冒頭から小気味良い、小奇麗なデブこと関太(せきふとし)のボケと、それを優しく包み込む山本浩司の掛け合いは何ともリズミカル。一見、毒のないキャラクターながら、過去をひも解くうちに見えてきた、ステージでは決して見せない彼らのアンダーグラウンドな一面とは……。
――芸人を志したきっかけは?
山本浩司(以下、山本) : 「よく訊かれるんだけど、いつもうまく答えられなくて。ただ地元の新潟にいた頃から別の相方とすでに漫才をやってましたね」
関太(以下、関) : 「僕は群馬の六合村(くにむら)という2000人くらいしか人口がいない村の出身で、とにかく上京したくて。親への言い訳として専門学校に行くことにしたら、気づけばお笑い専門コースに在籍してました。そこで出会ったのが山本なんです」
山本 : 「クラスの余り者同士でコンビ組んだんだよな」
関 : 「単位を取るだけのために(笑)」
山本 : 「コンビ名も即興で付けました。お笑いでタイムマシーンって言葉を使ってる人が意外にいないなと思って」
関 : 「タイムマシーンまでは山本が付けて、3号は僕の出席番号から」
山本 : 「ご飯3合食べるから、じゃなかったのかよ。今、初めて聞いたわ(笑)」
――何かアルバイトをされていましたか?
山本 : 「2人でコンビニの店員をやってましたね。夜も眠らない新宿歌舞伎町、しかも深夜でした」
関 : 「うちの店に来る客って、3種類なんですよ。日本語がダメな人、お金がなくて暖をとりに来る人、風俗関係。あとイレギュラーで、いわゆる"怖い人"も来る」
山本 : 「いつも脇に雑誌を抱えてレジに来るヤクザがいたよな。その雑誌はこの店で手にしたものなのか、店に入る前から持ってたものなのか、分かりにくい人でしたね」
関 : 「一度、本人に訊いてみたら『店に入る前からちゃんと見とけ!』と怒鳴られましたよ」
山本 : 「だから止めたのに」
関 : 「あと、4本しかない指で『タバコ5つ』って言う人もいた」
山本 : 「笑えねえよ!」
関 : 「バイト仲間で『神様』って呼んでた馴染みのホームレスなんかもいたね」
山本 : 「いたいた。予言ができる人だろ」
関 : 「持ってる小銭をジャラーっと並べてウィスキーを買っていく」 山本 : 「いつもお金足りてないんだけどね」
関 : 「終電の時間を過ぎると、恐ろしいほど混んだよなあ」
山本 : 「レジ待ちの列が店内を1周するくらい」
関 : 「列の中にはバナナだけ持って並んでるスキンヘッドの人がいたりして、もうテンパっちゃって。小銭と稲荷ずしを間違えてレジに入れたこともありました」
山本 : 「10円玉と色が似てるんだよな(笑)」
関 : 「行列ができてるのに山本は裏の倉庫に引っ込んで、全然助けてくれないんですよ」
山本 : 「店内の有線放送のチャンネルひねって、『蛍の光』を流したことはあったけどな。閉店だと思わせたら、もう客は来ないだろうと」
関 : 「店長もいい人だったよなあ」
山本 : 「そうそう。履歴書を持っていった時も『芸人だろ? そんなのいらねえよ』って、すぐに採用してくれて。暴走族あがりの人で、誠実な人でした」
関 : 「その後、ハイウェイカードを大量に盗んで逮捕されたけどね」
山本 : 「全然、誠実じゃねえな(笑)」
関 : 「山本がバイトに遅刻した時は怖かった」
山本 : 「1時間遅刻したんですよ。そしたら代わりに働いてくれてた店長が『おい、オレの時給はいくらだ?』って低い声で訊いてくるんです(笑)。『1000円ですか』『いや(と首を振る)』『2000円ですか』『いや』。最終的に1万円って言われて、その日はタダ働きになりました」
関 : 「バイトの先輩も色んな人がいたね」
山本 : 「いたなあ。24時間7日連続勤務で、店の奥で寝泊りしてた人とか」
関 : 「店内でヤクザを一本背負いした人とか。ガムのコーナーが崩れないように、投げ落とす場所を考えながら投げてたのが面白かった」
山本 : 「あったあった、そんなこと(笑)」
関 : 「バイトは短い期間だったけど、色んな人を見ているうちに観察眼は身についたかも」
山本 : 「オレも他に色々とバイトしてたけど、非合法なアングラ系ばかりで、ここでは言えないです(笑)」
――今後の目標とするところは?
山本 : 「とにかく今は『昨日、テレビに出てたね』と言われないようにしたい。テレビに出るのが当たり前の状態にならなきゃ。もっとトーク番組にも出たい」
関 : 「テレ東の『田舎に泊まろう!』に出たいんですよね。で、群馬の実家に泊まる」
山本 : 「ただの帰省じゃねえか(笑)」
関 : 「あと冠番組を持つなら『ラーメン』『子供』『マグロ』関係で」
山本 : 「やっぱりお笑いじゃない方向に目がいくんだな」
関 : 「高田純次さんのポジションは憧れますね。高木ブーさんの『寝てていい』というポジションも羨ましい。芸人じゃない人の部分につい目がいってしまうんですよ」
タイムマシーン3号 プロフィール
山本浩司
1979年6月22日生まれ。新潟県出身。O型。この6年で引越し7回、居候経験もあり。破天荒な私生活とは打って変わって、ステージでは優しく、キレのいいつっこみを見せる。
関太
1979年8月5日生まれ。群馬県出身。B型。練馬区を脱出して最終的に港区で暮らすのが目標。アニメのネタなどスピーディなボケを展開する傍ら、奇天烈な動きも特徴的。
出演情報
毎週月曜20時~『タイムマシーン3号のRADICAL LEAGUE』(FM-FUJI)、毎週木曜『ASIAN美少女5on5』(有線放送ラジオ)、毎週日曜『まいむまいむ』(KBSラジオ)にそれぞれレギュラー出演中。5月22日、23日には「しもきた空間リバティ」にてケーアップ主催ライブに出演。