共働き家庭の小学生にとっての居場所となる学童保育。小学校高学年になると一人で留守番できるようになるため、学童保育の必要性が低くなるとも言われています。

「学童保育のキホン」について、全国学童保育連絡協議会の事務局次長である千葉智生さんと佐藤愛子さんに話を聞くこの連載。6回目となる今回は、学童保育を卒業するタイミングについて教えてもらいます。

  • 学童保育にはいつまで通える? 卒業時期の見極めも大切

    学童保育を卒業するタイミングとは?

高学年でも学童保育を利用できる?

――小学校高学年になっても、学童保育は利用できるのでしょうか?

千葉:はい。実は、高学年まで学童保育に通えることがはっきりと示されたのは最近のことなんです。2015年に児童福祉法が改定されて、「おおむね10歳未満」とされていた対象児童が「小学6年生まで」に変わりました。それまでは対象児童を「3年生まで」や「4年生まで」としていた市町村も少なからずあり、小学6年生まで通い続けることは必ずしも保障されていなかったのです。

佐藤:この影響によるところも大きいと思われますが、2015年の調査では、4年生の入所児童数が増加しています。また、2016年と2017年の調査でも、高学年の児童数が増えていることがわかっています。

――ニーズはあるということですよね。現在は6年生まで通い続けられる環境が整っているのですか?

千葉:なかなかそうはいかないようで、施設の確保が難しいなどの理由で、6年生までの受け入れを制限している自治体もあります。待機児童問題もあるため、低学年は受け入れても、4年生以上になったら在籍できない可能性もあるのです。

――高学年になっても学童保育に通い続けたい子もいるでしょうし、入りたくても入れないというのはおかしいですよね。

千葉:そうなんです。これまで保護者の要望はあるのに、低学年の子どもたちに比べて高学年の子どもたちは後回しにされがちでした。高学年になっても、自らの拠りどころとして学童保育に通い続けたいと思う親子もいるので、適切な定員人数を守ったうえで学童保育の数を増やすことが課題ですね。

学童保育にできる高学年に対するサポートとは?

――高学年の子たちにとって学童保育はどのような存在になるのでしょうか?

佐藤:学童保育の存在は、子どもにとっても親にとっても、心の安心材料になると言えると思います。高学年になると、勉強が難しくなったり、学校の係活動やクラブ活動があったり、交友関係も複雑になったりと、中には緊張感や疲労感を強く感じて学童保育に帰ってくる子どももいるようです。そうした時に、毎日は通わなくても、いつでも帰れる場所として、学童保育がその役割を担います。

千葉:子どもたちにとって、学童保育が心の拠りどころとなり、指導員と親とが協力して支えてあげられます。指導員には、高学年の子どもの発達や心理についての理解を深め、その年齢に応じた関わり方や活動内容を学び、信頼に基づく関係を作ることが求められますね。

――学童保育に通う時間や日数が減ると、そもそも在籍しても意味がないのかなと思ってしまいますが……

佐藤:確かに、高学年になると下校時間が遅くなり、平日の学童保育での生活時間は短くなりますよね。一人で留守番もできるようになります。ただ、そうなったとしても学童保育の存在はやはり必要だと私は思いますね。

――佐藤さんは娘さんが学童保育に通われていたそうですが、何年生まで通われたんですか?

佐藤:うちの娘は6年生まで学童保育に通いました。学年が上がると、クラスの子と遊んだり家で留守番をしたりと日によってバラバラで、毎日通うわけではありませんでした。ただ、それは子どもにとっても親にとっても、万が一の場合の心の拠りどころでもあったんです。低学年のときのように毎日は行かなくなっても、在籍していること自体をお守りのように感じていまいたね。

  • 学童保育にはいつまで通える? 卒業時期の見極めも大切

    佐藤愛子さんと千葉智生さん

――やはり、高学年でも学童保育を利用してよかったと思われますか?

佐藤:娘はもう成人していますが、今でも「学童保育の存在があったのは、自分にとって安心だった」と話しています。私としてもやはり高学年まで通わせることかできて、よかったと思いますね。

卒業のタイミングはしっかりと見極めよう

――高学年になると、「学童保育がつまらない」などと言って、行きたがらない子も多いそうですね。

千葉:街の環境や家庭環境、親の仕事やその子の性格などによって、高学年になっても学童保育が必要かどうかは個人差があります。また、活動内容が自主性・主体性を重んじて、高学年の子どもが通いつづけたくなるようなものになっていることも、大きなポイントとなってきます。通いたくても通えない場合を除けば、学童保育を卒業するというのも、その親子の選択だと思います。

佐藤:ぜひ親子で話し合って、学童保育を卒業するタイミングを決めてもらいたいです。

――何年生になったら学童保育は卒業してもいいのでしょうか?

佐藤:子どもの歩みは人それぞれ大きく違うので、何年生になったら学童保育を卒業した方がいいかという問いに、答えはありません。重要なのは、子どもがどういったサポートを求めているかどうかですよね。

千葉:子どもたちが高学年になったら、自分自身で学童保育を続けるか、卒業するか、選択の自由を持てるのが理想です。そのためにも、普段から子どもたちとよく話し合い、その子が何を必要としているのか、しっかりと見てもらえたらと思っています。


これまで6回にわたり、「学童保育のキホン」についてお話を聞きました。多くの発見があったと同時に一番考えさせられたのは、学童保育は子どもたちの心の拠りどころであらねばならないということです。

自分の仕事を継続できるようにと、つい預け先を確保することだけに必死になってしまいがちですが、そこで子どもたちがどう過ごすかをしっかり考えてあげる必要がありそうです。新1年生の子どもを持つ親のみなさん、第二の保活ならぬ学童保育活動を共にがんばりましょう!

プロフィール

千葉智生

全国学童保育連絡協議会事務局次長
1983年から自治体職員として、公立公営の学童保育の指導員を32年勤める。市町村・都道府県の連絡協議会で、学童保育をよりよくするための活動を行ってきた。2015年から現職。

佐藤愛子

全国学童保育連絡協議会事務局次長
自身の娘が通った学童保育で、指導員から子どもたちの話を聞くごとに、働きながらの子育てを支えられていることを実感。2004年から全国学童保育連絡協議会職員となり、2014年から現職。