子どもが小学校にあがる前に考えておきたい学童保育のこと。学童保育と一口に言ってもさまざまな種類があるため、どうやって選べばいいか悩んでしまいますよね。「学童保育のキホン」について、全国学童保育連絡協議会の事務局次長である千葉智生さんと佐藤愛子さんに話を聞くこの連載。2回目となる今回は、学童保育の選び方についてです。
学童保育によって公営か民営かが異なる
――基本的に通う学童保育は、住んでいる校区によって決まるんですか?
佐藤:そうですね。基本的に公立公営の学童保育は、住んでいる場所によっておおむね決まります。学童保育は学校が終わってから歩いて通うので、生活圏にある必要があると考えられているためです。民営の学童保育も、通える校区が指定されていることが多いですね。
――そもそも、学童保育はどのように運営されているのでしょうか?
佐藤:最も多い33.2%は公立公営で、市町村が直接運営している形です。その他は、公立民営で市町村が民間に委託しているもの、そして民立民営のものがあります。運営主体は、社会福祉協議会や地域の運営委員会、NPO法人、民間企業などさまざまです。
千葉:これまで公立公営だった学童保育が、指定管理者制度の導入や民間委託などで民営に変わってきて、公立民営という形が増えてきています。
――学童保育が開かれている場所は、どういったところが多いのですか?
千葉:全体のうち8割以上が公的に設置された施設で、さらに全体のうち55.6%は学校施設の中で行われています。そのほかは民家やアパートなどですね。
佐藤:災害が起きた時などの緊急事態でも、やはり公的な施設の方が柔軟に素早く対応ができると思われます。実際に、大きな地震で普段学童保育で使っていたアパートが被災してしまい、再開するのに苦労したという例もあります。
民立民営の学童保育にはデメリットも
――民間企業による学童運営は増えているのでしょうか?
佐藤:「学習塾」や「習いごと」などの事業者が「学童保育」をしているといっても、「放課後児童健全育成事業」に該当していないので、全国学童保育連絡協議会の調査の数には含めていません。行政の委託や補助を受けて民間企業が運営する学童保育は、2015年から2017年にかけて、約2倍に増えています。
――民営の学童保育や企業が提供する放課後の学童保育サービスを選ぶ時に気を付けたい点はありますか?
千葉:とくに民間企業が運営している場合は、利益にならなければ撤退してしまう可能性があることが懸念ですね。便利である一方、そうしたデメリットがあることも把握しておいてもらいたいです。
佐藤:親の帰りが遅いことが多い家庭などは、夜遅くまで受け入れてくれる民間企業が運営する学童保育はとてもありがたいですよね。ただそれだけに金銭的にも負担は大きくなるのは事実です。
――たしかに、支出はかなり増えますよね。
佐藤:そして一番大切なことは、やはり子どもたちの負担を考えることだと思います。民間の学童保育は習いごとができることも人気の理由ですが、たとえばそれが週に5日続いたら、子どもにとっては毎日課題や評価が続くことになり、しんどくなってしまいますよね。
学童保育は、あくまで「生活の場」なので、本来は信頼できる大人の下で、継続して安定した生活が続くことが重要です。そして、そこで培われる仲間関係や、ひいてはこの世界に対する信頼感のようなものまで育まれていくのが理想ですよね。
――親としてはどういうことに注意するべきなのでしょうか?
佐藤:通い始めたら、子どもの様子をよく見てあげてください。習いごとについてもお試し期間を設けるなど、子どもの表情を見ながらその都度話し合って、軌道修正してもらいたいですね。
学童保育選びのポイントは「人数」と「人」
――これから小学校入学を迎える子どもを持つママたちに、学童保育選びのポイントを教えてください。
佐藤:一番わかりやすいのは、その学童保育に在籍している人数がおおむね40人程度であるかどうかですね。どうしても子どもの人数が増えると、騒音がひどかったり、子どもたち同士がうまく関わり合いにくかったりとさまざまな問題が生じてしまうからです。
千葉:あとは、指導員としてどんな人たちが子どもたちに関わっているのか、注目して見てもらいたいですね。たとえば、毎日常勤している指導員がいない、3~4時間ごとに指導員が変わるなどの環境下だと、子どもたちはなかなか落ち着くことができませんから。
――そうした情報は、学童保育に入る前でも調べられるのでしょうか?
千葉:まずは直接電話をしてから、ぜひ見学に行ってみてください。何回か見に行けば、毎回同じ指導員さんがいるかどうか、また子どもたちの人数もわかってくると思います。
――なんとなく、敷居が高いような気がしてしまいますが、電話や訪問はしてもいいのでしょうか?
千葉:事前に確認を取っていけば、問題ないと思いますよ。ぜひ一度雰囲気を見て、自分の子どもを通わせるか検討してみてください。
学童保育選びがまだという人もいると思いますが、ぜひ足を運んで自分の目で確かめなくてはと考えさせられましたね。次回は、「学童保育の指導員ってどんな人? 」というテーマで、引き続きお二人にお話を聞きます。
プロフィール
千葉智生
全国学童保育連絡協議会事務局次長1983年から自治体職員として、公立公営の学童保育の指導員を32年勤める。市町村・都道府県の連絡協議会で、学童保育をよりよくするための活動を行ってきた。2015年から現職
佐藤愛子
全国学童保育連絡協議会事務局次長自身の娘が通った学童保育で、指導員から子どもたちの話を聞くごとに、働きながらの子育てを支えられていることを実感。2004年から全国学童保育連絡協議会職員となり、2014年から現職。