前回に引き続き紹介するのは、神奈川県川崎市にある「内藤アカデミー」。学習塾に併設された民間学童だが、勉強に偏らず文武両道。体育館や屋上広場、菜園もあり、さまざまな体験ができる。
英語に体操、盛りだくさんの日替わりカリキュラム
教室長の内藤幸彦さんは、「放課後生活は、将来の自分の夢を探し出すための時間。選択肢はできるだけ広げてあげたい」と話す。実際、カリキュラムはもりだくさんだ。例えば、小学1年生の週間カリキュラムは次の通り。
月曜日は体育館での「サッカー教室」。火曜日は「英語教室」と歌の練習をする「ミュージックボックス」。水曜日は外部から講師を招いて体育館で行う「体育教室」。木曜日は植物観察をしたり、天文について学んだりする「理科教室」。そして金曜日は昔遊びや体を動かす「ポップアップ」といった具合だ。取材日はちょうど2年生の体操教室も行われており、外部のスポーツクラブによる専任指導のもと、マット運動や跳び箱に一生懸命挑戦していた。
そのほか、月々の行事も充実しており、お誕生日会や親子クリスマス会、夏には小学1年生から中学3年生までを対象にしたサマーキャンプもある。サマーキャンプは例年100人以上が参加する大イベントで、子どもたちも大きく成長するそうだ。
教室長の内藤さんはかわさきFMで番組を持っていることもあり、顔が広く、番組で知り合った著名人を施設に呼ぶこともある。「第一線で活躍している人を子どもたちに見てほしい」のだという。また希望すれば、施設内で劇団四季出身者によるミュージカルレッスン、フラダンス、元五輪選手の本田多聞氏のレスリングスクールも受けられる。
ちなみに週間カリキュラムはあくまでベースであり、変更されることもある。例えば、クリスマス会直前なら練習の時間に変えることもあるし、取材日のようにミカンが食べごろになったタイミングで天気がよければ急遽ミカン狩りを楽しむこともある。その季節、その日の天気にあわせたベストな過ごし方をしているため、カリキュラムは盛りだくさんではあるものの、それに追われてせわしないといった印象は一切ない。
迎えにきた保護者の方に話を聞いてみると、「いろいろなことを教えてもらい、本当にいろんな体験をさせてもらえて満足しています」「特に体育館があるのがいいですね。小学校でもドッジボールが得意なのですが、ここのおかげだと思っています」とカリキュラムの多彩さと施設の充実度を評価する声が多かった。
「たくましい子どもを育てたい」教室長の熱い思い
一般的に、カリキュラムが充実している学童では、その分、費用が高額になること多いが、内藤アカデミーの場合は月額3万2,000円(税込)。これには日々の保育料やおやつ代はもちろん、英語教室や体操教室、工作など、さまざまな活動費がすべて含まれる(レスリングスクール、ダンスやミュージカルを学ぶ「ミュージカル・ソウル・キャンプ・アカデミー」、フラダンスといった特別プログラムを除く)。開設時間は月~金は17時30分まで(有料で延長可)、さらに毎週土曜日には焼き芋パーティーやクリスマス会の準備など、おたのしみプログラム(11時~15時30分)が行われ、こちらも追加料金なしで自由に参加できる。首都圏の民間学童としては、破格ともいえる料金である。
理由は、内藤さんの強い信念によるもの。内藤さんが学童を立ち上げたのは今から38年前のこと。きっかけは、1972年から2年間、青年海外協力隊のエチオピア派遣第1期生として現地へ行ったことだった。天然痘撲滅のために山間部の子どもたちに予防接種をしてまわる中で、貧しくても前向きに生きる現地の子どもたちの姿に心を動かされたのだという。ちょうど日本は校内暴力や家庭内暴力が問題になっていた時代。「日本人の子どもたちも、もっとたくましくなってほしい。自分の可能性を追求して夢を実現してほしい」という思いが湧きあがり、内藤アカデミーを立ち上げたそうだ。
民間学童のサービス合戦が加熱する昨今、サービス内容を比較するだけでなく、その裏側にある運営者の思いや考え方に着目してみると、より自分の価値観に合う施設が見つかるかもしれない。