こういう仕事をやっていると、親戚の集まりなどに、叔母や従姉たちから「インドファンドってどう」とか「ドル預金しようと思うんだけど、いや豪ドルの方がいいかな、金利良いし」とか、相談されるほど田舎の方でも普通外貨投資が話題になったりする。
でもお葬式の席で、みんなして投資話で盛り上がるのはいかがなもんかなぁ。「ほら叔母さんのご焼香の番だよ」話に夢中になっていた叔母は急いで立ち上がる。「儲かる話ない? 」とか「ちょっとお小遣い稼ぎできない? 」なんて訊かれても、そんなのある位なら、私が知りたい。楽して儲けようなんて持っての他、そんなことよりも振り込め詐欺に引っかからないようにね。今年1月の振り込め詐欺の被害総額は約9億8,400万円(前年同期比12億円減)で、統計を取り始めた2004年7月以降、過去最少だったという。「官民を挙げた取り組みの成果」ということも有るらしいが、これも不況の結果ではないのだろうか……と思ってしまうのは私だけだろうか。
「投資」とは、利益を上げることを目的に売買をすることを言う。みんな儲けたいから投資をする。投資、に参加することは誰でも出来る、何も特別な才能も資格もいらない。だからと言って、誰もが利益が出せるわけではない。オリンピックの標語のように「参加することに意義が有る」のではなく「儲けることに意義がある」のだ。投資にマジック(魔法)はないが、それでも成功するために必要最低限やらなくてはいけないことがある、基本中の基本、それは、「実践すること」だ。自分で実践することによってしか、知識も経験も増えない。他力本願は良くないし、美味しい話なんてないのは、皆さんそこここのニュースで十分ご承知かと思う。
子供の頃、言い訳をすると「人のせいにしてはいけません」と言われたことはないだろうか。ましてや大人になったら、相場のアタリ・ハズレだってもちろん人のせいにしてはいけない。私がFXを始めたばかりの頃は説得性の有る分析や予想だと盲信してしまったり、自分の考え方に近い講師の方を良い講師と思ったりしたこともあった。自分の経験が乏しい時は、誰かの考えを軸にしないととても不安である。だから、正しいとか間違っているとかではなく(それを立証してくれるのは相場だけだ)プロの方の意見だったら、あてにしても良いかなと考えてしまうのも無理からぬことだ。
経験は、自分でマーケットを観測し分析し予想してトレードを実践することでしか身に付かない。要は場数を踏むことでしか積めないのだ。でも相場では多くの優秀なプロの方々の豊富な分析や予想を身近に見たり聞いたり出来るのも、大きなメリットである。こういったプロの方々の考えをどういう風に使わせもらったら、自分の投資に有効かを考えてみた。
1. 鵜呑みにするのではなく基本は参考
プロの方々は、私たちのポジションに基づいて考えを述べてくれるわけではない。ポジションを持つのはあくまでも自分なので、人頼みにするよりもそこの自分の考えを入れる必要が出てくる。だれかの意見や考えだけに従ってトレードして失敗したり、その人に責任転嫁するよりも、まだ自分の考えで損失を出す方がましだ。なぜかというと、たとえ、その時は損失が出たとしても『自分のミス』から学ぶことにより、将来的に利益を出す方法が取得できるからだ。
2. 自分に近い相場観のプロと対極にあるプロを追う
- 例 : 円高論者と円安論者
- 例 : ファンダメンタルズ中心派とテクニカル中心派
人間は大体自分に都合の良いことを優先して聞く傾向にある。思い込みやバイアスを掛け過ぎないために、自分が円高に行くと思ったら、逆の考えを聞く事も参考になる。ファンダメンタルズ中心でも時にはテクニカル中心の人の考えを聞いて見たり、逆にファンダメンタルズ中心の人でもテクニカル派の意見を参考にしてみたりするバランスも大事。それで、自分の考えに対するコンファメーションが取れれば良いのである。
3. 少なくとも半年間はそのプロを追うこと
一定期間を通さないとその人の考え方は分からない。たまたまその時相場の方向性を当てたといっても、それが偶然ということもあるかもしれない。私がちゃんと耳を傾けようと思うのは、中でも実際に相場を張っている人。自分で投資をやるようになると良く分かるが、実際ポジションを持っていると真剣味、真実味、そして説得性が違う。
4. 予想の結果だけでなく、プロセスや考え方が変化した時にも注目する
結果だけでなく考え方の過程も大事。加えて、その人の考え方が方向転換した時の変化も探って行くことも重要だ。
プロの方々の考えはあくまでも参考として捉え、それを応用して自分の戦略を練ることが、自分で実行するための、最良のプロ活用法と言えるだろう。
投資を始める前に、一つご提案。投資を始めるにあたって改めて自分を知ること(自己分析)から始めてみたらいかがだろう。自分で自分にQ&Aしてみる(下図参照)。自分の投資方針をしっかりと決めて目的(新車買うとか、新しいPC買うとかでも良い)を明確にしよう。ただ、なんとなく儲かりそうだからやるのであれば、儲けには近づけない。自己(事故)責任の前に自己分析することをお勧めしたい。
執筆者紹介 : 香澄ケイト氏
主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。