目立つモノ、いつもより早いセール、電柱に張って有るマンション売却のチラシ。なんでも大幅ディスカウント。それでもみんなの財布の紐はがっちり固くモノが売れない不況の時代である。しか~し、そんな時代にファーストフードは強いということを日本マクドナルド(2702)の業績が証明してくれた。2008年12月期連結営業利益が前期比17%増の195億円と過去最高益を更新したのだ。
少し前から米国ボストンに住む友人から、マクドナルドはいつも混んでいるよ、という話は聞いていた。本家本元米国のマクドナルドの株価も上昇している。友人はマックを食べないが、マック株は買ったという。問題は健康面。アメリカでは、ファーストフードで肥満になったり、体調を崩したりして病院に通う人が増えるということがちょっとした社会問題として新聞で取り上げられているようだ。
不況になると、安くてボリュームが有るお店が繁盛するのは世界的な傾向なのだろう。香港では、マック以外に「大家楽」という中華のファーストフード店なども大盛況。英国では伝統的ファーストフードと言える「フィッシュ・アンド・チップス」の売り上げは落ちていないという。日本では餃子の王将で有名な、王将フードサービス(9936)も株価は堅調。不況の時代は値段、値段、値段……。みんなコストコンシャス(値段に対する意識が高い)だ。
不況の時代じゃなくたって、コストは常に意識したい、外貨投資の話である。外貨といえばまず一般的に考えられる外貨預金。外貨預金では手数料は為替レートに上乗せされている場合がほとんどで、往復でドル円2円、ユーロ円3円、オージー円4円、ポンド円にいたっては8円という銀行もまだ多い。(8円分の為替差益を取るのは本当に容易ではない! それでようやくコストカバーしてスタート地点に立つのだ。)なぜ、通貨ごとに手数料にバラつきがあるかというと、ニーズが関係する。取引量の少ないポンドやオージーなどは手数料が高い傾向にある。外貨預金の場合、私たちが、買う場合はTTSというレートが、解約(売る)する場合はTTBというレートが適用される。これらのレートは以前ご説明した仲値がベースになっていて、例えばドル円が89円だとするとTTSは90円(仲値+1円)、TTBは88 円(仲値-1円)となる。
しかし、外貨預金の為替手数料も安くなってきている。特にネットバンキングではかなり手数料が安くなっている。中でも、ソニー銀行は通常の4分の1の手数料になっているのは注目に値する。外貨預金での為替手数料を意識するのであれば、ネットバンクを利用することをぜひお勧めしたい。そして、外貨投資における安さバクハツ! と言えば、FXを無視することはできない。FXを始める時、"うわ~っ、やっす~"と誰だって驚くと思う。私もだった。だって、有無を言わされず疑問にも思わされず取られていた銀行での手数料に何銭と言う世界が出現したわけだから、それはびっくりする。この手数料、今では無料のところも多くなっている。なぜこういうことが出来るようになったかと言うと、以前、外貨は銀行でしか取引できなかったのだけれど、1998年4月の外為法(外国為替及び外国貿易法)の改正により、市場参加者(FX会社もそして我々も)は自由な活動ができるようになった、そのおかげで手数料も格段に安くなったのである。
FXに関しては、手数料に加えてもう一つのコストが有る。それは「スプレッド」と言うもの。スプレッドとは広がりを意味して、買値(Bidレート) と売値(Offerレート)の価格差を表す。なお、前述の銀行におけるTTS 、TTBだってスプレッドである。どういうことかというと、USD/JPY(ドル/円)のレートが90.20-90.23と表示されているとしよう。これは私たちが買う場合のレートが90円23銭で、売る場合のレートは時が90円20銭、ということを示している。この3銭の差がスプレッドと呼ばれていて、FX会社の利益になる。一般的には、市場参加者が少なかったり、米雇用統計など重要な経済指標などの発表時には拡大するなど、相場の状況によってスプレッドが拡大したりすることもある。ただ単にスプレッドが小さいだけに捉われるのではなく、相場の大きな変動時などに異常に開いたりしないかなどにも注意したい。
FX会社で提示されるスプレッドはどこも同じではなく各社差異が有り、最近ではスプレッドがゼロの会社まで出現している。手数料無料の会社であっても実はスプレッドから利益を得ていればこういうことも出来るが、最近では手数料無料でスプレッドもゼロという会社さえも出現している。FXの世界ではどこよりもデフレが一層進行しているようだ。そんなで果たしてFX会社はやって行けるのか? 我々にとって不都合はないのか? スプレッドに関してはまだ深く洞察しなくてはいけないので、別の機会で改めて詳しくご説明したいと思う。為替コストも為替変動リスクの一部に考えてもおかしくないくらいの意味を持つと私は思っている。ただし、回避できるリスクだ。為替の予想は難しいし、外れるかもしれないけれど、コスト(手数料)はもう既に分かっていることだからだ。時代の流れも影響し、よりコストコンシャスになるために、どこを利用するかじっくり比較検討してみよう。
執筆者紹介 : 香澄ケイト氏
主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。