個人投資家も金へアクセス

NY金価格が1,300ドルを超え史上最高値を更新してきた。金のことをそれほど詳しく知らなくても、金の上昇ぶりが気に掛かっている人は少なくはないだろう。今年になってアブダビやスペインのホテルなどで、金の自動販売機まで登場し、人気化しているという様子がTVで報道されたときには、これほどまでニーズがあるのかと驚いた。

確かにそれは、一般的な、金に対する興味の高まりと、そのニーズに応じた金へのアクセスの容易さが、金が個人により身近になったことを感じさせられる出来事だと言えよう。

個人的に、金投資に対しては、株や為替と同様の投資商品と考えればよいはずなのに、なぜか先入観が邪魔をしていた。なぜかというと、金は、お金持ちが金の延べ棒を買うというイメージが強過ぎたからかもしれない。自分のような弱小投資家は金投資ってどうやったらいいのよ?と思っていたこともある。

加えて言うなら、世界に「有事」や「経済不安」が勃発したときにだけ「ほら、やっぱり実物資産(株や債券のようなペーパーマネーではない)でしょ」とクローズアップされるのでは、金は投資のメインストリームにはなり得ないと疑心暗鬼していた節もある。そんな私と同様な気持ちで、金の上昇ぶりに未だ指を咥えながら、手をこまねいている個人投資家の方も少なからずともいらっしゃるのではないだろうか。

しかし、近年の金市場の動きは過去におけるそれとは違ってきているような気がする。株も債券も通貨もダメな中で、個人投資家でも、金投資を考えなくてはいけない時代になっているように思えてならない。それほど金は輝いているのである。

金市場は成長している

最近の金の上昇には、2008年9月の世界金融危機、2009年11月のドバイショック、2010年5月のギリシャショックで世界経済に対する不安が原因だと言われている。2001年9月11日の米国同時多発テロ以来、なんと約10年間でドル建ての金価格は4倍以上になっており、他の投資商品と比較して、その収益性は抜きん出ている。金は株や債券とは違った動きをするため、資産の一部に組み入れるとリスク分散の働きをしてくれることもある。そう考えると、やはり、自分のポートフォリオに金は入れておきたい投資商品になる。

金投資は、金地金、 金貨、宝飾品などの現物取引、純金積立、先物取引、CFD取引、投資信託、金ETF、金鉱山株 などを通じて行うことができる。だれでも、金のジュエリーのひとつやふたつは持っているはずだ。投資目的と考えずとも、気に入ったジュエリーを買い求めることは、その永遠の美しさとは別に、永遠の価値があることが分かっているからだろう。

金市場は、過去において、宝飾需要がトップだったが、2009年に投資需要が宝飾需要を初めて上回ることになった。投資需要に大きく寄与したのが、金ETF(金価格に連動する上場投信)だ。つまり金を証券化したもので、私たち個人投資家も、証券会社で普通の株式と同様に売買できるようになった。便利なものが出来たわけだ。

金ETFは、2003年3月に世界で初めてオーストラリアで上場して以来、世界中の証券取引所に上場され継続的に資金が流入している。年金基金などの機関投資家の資金も入ってきており、こういった機関投資家は分散投資と長期安定の運用を目的としている。 金ETFが登場したことで、金融市場と比べてマイナーな存在だった金市場の規模が拡大し、史上最高値更新に一役買ったのである。

ゴールドをより輝かせるには

為替の世界ではドル不安でドルは売られ、さらにはギリシャショックでユーロも売られ、消去法的に円独歩高の状況が続いている。よって、NY金を初めとした、主要国通貨建ての金が史上最高値を更新しているのに比べ、国際的にドル建てで取引される金は、円高になると国内価格は下落することになるのだが、世界中の金価格の上昇に支えられているため、今年5月に27年ぶりに3,728円の高値を付けている。とはいっても、円建ての金価格だけは余り過熱感がない。(国内価格の史上最高値は1980年1月の6,495円)

金は現物取引で長期的な投資をする以外に、先物取引で短期的に利ざやを稼ぐことができる。どの金投資の方法を選択するかは各々の資金力や投資スタンスなどによるが、どの方法を取るにしても、金価格の変動要因や金市場を取り巻く環境などを踏まえて、マーケットのトレンドを捉えることが大事だ。

私は、金初心者として今年6月からトライアル的に純金積立(毎月定額で純金地金を買い付け積み立てていくもの)を始めているが、金投資はまだまだ分からないことばかり、ということで、近々、金地金(金の現物)取引と金先物取引の大手商品会社を訪問させていただくことになった。次回は訪問レポートを掲載する予定だ。ぜひ乞うご期待を!

執筆者紹介 : 香澄ケイト氏

主な略歴 : 為替ジャーナリスト
米国カリフォルニア州の大学に留学後、バヌアツ、バーレーン、ロンドンでの仕事を経て、帰国。外資系証券会社で日本株 / アジア株の金融法人向け営業、英国系投資顧問会社でオルタナティブ投資の金融法人向けマーケティングに従事する。退職後、株の世界から一転してFXに関する活動を開始し、為替情報サイト、マネー雑誌などの執筆、ラジオ番組への出演およびセミナー等の講師を努める。著書に『あなたのお金を10倍にする外貨投資術』(フォレスト出版)、『今すぐ始めるFX5人の投資家が明かす勝利のルール』(すばる舎)がある。